開会式の怪

オリンピック開会式でどうも気になることがあるので書きます。裏付け資料も無しに書く、単なる妄想だとお笑ひください。

陛下が開会宣言をなさる途中で都知事および首相が起立する様子が画面に映つた。途中まで着席であつたとは不敬ではないかと騒がれた。大会組織委員会から「バッハ会長のスピーチ末尾に、シナリオにない日本語の文言が入つたため、起立を促すアナウンスができなかつた」と説明があつた。

本当かなあ。

まづは起立の件。東京、札幌の昭和帝、長野の上皇、いづれも開会宣言の際はただひとりお立ちになつたやうに記憶する。つまり開会宣言のあひだ、会場の衆庶は別に立たなくて良いのではないか。否むしろ、陛下のお勤めを妨げないやう、低く控へてあるべきではないのか。

それからスピーチのこと。ブランデージ会長は東京でも札幌でもスピーチの末尾に「天皇陛下ニ開会宣言ヲオ願ヒ申シ上ゲマス」といつた文言を述べたはずである。長野のサマランチ会長がどうであつたかといふことについては記憶がないのだが、前例に鑑みると、今回のバッハ会長について、末尾が予定外であつたとの説明は、なんだか疑はしい。

あの場面、先に都知事が起立し、次いで首相が起立したといふ順序に見える。本来、起立する必要も無いのに、都知事が余計な気を回して起立してしまひ、それにつられて首相も立つてしまつたのではあるまいか。後になつて首相が「都知事のせゐで間違つて立つちやつた」と言ふわけにもゆかず、組織委員会が泥を被る形で「わたしどもの不手際でした」と説明したといふことなのではないだらうか。更に味付けすると、タヌキのやうで寝技ばかりする、いけ好かない都知事が失敗したのに、朴訥な首相は、開催都市の首長に泥を塗つてはいけない、俺も諸共にとばかり敢て起立し、驚いた橋本会長が引受けて自分たちの責任にした、などといふ図は如何か。

始めに書いたとほり、全くの妄想です。根拠はありません。ただ、陛下がお一人で起立され満場の、ひいては全世界の注目を浴びるべき場面では、首相以下だれも起立しないのがむしろ適当なのだといふ考へ方もあり得ることは申し上げておきたいと思ひます。