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コロニー

肌が触れ合うくらい近くにいるのに
心は一ミリも接近していないこと
それは、誰が悪いとか
誰が原因とかではなく
僕と君との距離が適正であるという証しみたいなものだ

蛙の声を聴きながら
川べりに座って口笛を吹いている
不思議と涙が流れてくるけれど
それは悲しみとは少し違う
人と人の間にある距離をしっかりと見極めて
二人の近づけない原因を探ってみる

口笛は宇宙に吸い込まれて
光と共に消えた
空にある星の数を数えれば
世界を掴むような感覚を得ることができると
どこかの本で読んだことがあった

涼しい風に風鈴の音がする
音と音が重なって蛙の輪唱と重なった時に
本来の自分を知ることになるんだろう
僕は君のヒーローにはなれない
君は僕のヒロインには成り得ない
それでも今、僕が君のことを愛しているのは明確な事実だ
近づくことができないのに不思議だね

月の裏側に見えないコロニーがあるという考えの下
夜道で三日月を見上げている
あんなに遠いところに命が芽吹いていることも
人類が到達したということも
僕にとっては嘘のような出来事だ
本当と嘘の境界線はいったいどこなんだろう

焦らないで、今はまだ、この距離で良い
心に負担が掛かってしまうのは
無理やりにでも接着しないといけないという
僕自身のエゴでしかないから

一ミリも縮まらないこの心地よい関係を
壊さないように
そっと、そっと
今は見守ろう

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