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厄介

愛という名の老廃物は
天国に行くまで私の掌を汚し続ける
素晴らしき世界の
素晴らしき物語に
いつも描かれている愛情というのは
そのほとんどが幻であると、
言い切れないのが厄介だ

人と人は
愛の為に生き
愛の為に死んでゆく
いつからだろうか
それが性欲以外のものになったのは
手を繋ぐだけで
心が通じ合ってしまうようになったのは
とても、とても厄介だ

クジラの歌が地上までは届かないように
私達の営みに奇跡なんて起きるわけもなく
今日もベランダで煙草を燻らせている
海を眺めていると、随分遠くまできてしまったと思うこの心も
いつかは変わる日がくるのだろうか
当たり前にならない当たり前が
今日も私の心を侵食していく

私のことを愛していると言った君のその言葉が
どのような感情から放たれたかわからないまま
答えを先延ばしにしている
所詮、最後は無駄な荷物になってしまうものを
美しいと思うその心は
どこから来ているんだろう

ダリアの花が散る季節
肌寒さを感じている私の肩に
コートをかけて、幸せそうに笑った
それだけの理由で
君に人生を捧げてもいいかもしれないと思う私の
思考回路も
やはり、いずれ老廃物に成り果ててしまうのならば
今は
どうか今だけは
この厄介な感情を温めていよう

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