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シンプル

世の中の淵を眺めている
果たして自分に価値があるのかと
淵から飛び降りるようにして
初めから何も存在していないような感覚を得れば
今、鬱屈としたこの気持ちも晴れるのだろうか

かつて大切な人から貰ったバケットハットは
風に舞っていった
自分の一部のように思っていた物でも
連れ添うことができない場所がある
そんなことを暗示するように

人の感情の縫い目に
ライターで火をつける
いとも簡単に燃え尽きた糸は
感情までは連れて行ってくれないみたいだ
では燃えていたのは何だったのだろう

幸せの定義は人それぞれなのに
不幸の定義は皆似通っていて
首を垂れて歩く人々の
なんと多きことか
私も縫い繕われたその人々の感情と繋がって
終末を夢見ている

年端もいかない子供の夢のように
いつも自由でいられたなら
転んでも、改めて立つだけの体力があったなら
別の未来もあったのかもしれない
淵に吸い込まれていったバケットハットは
この惑星の裏側の誰かに届いているだろうか
そうだと良い

明日からは前を向いて歩こう
そう思うことにしても
今更許される道理も無くて
独り涙を流している
その水分が
感情の縫い目に落ちる時
きっと感情は息を吹き返すんだ

単純な世界に産まれた
単純な私の物語

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