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キツツキ

暫しの別れださようなら
それを悠久のように思うこと無かれ
私がまた私に回帰するように
貴方との別れもまた
再会の為にあるだけなのだ

縁のある人と人は
再び会うことが決まっているように思う
それが良いことなのか悪い事なのかは
誰にも分らないけれど
それでも再会とは
美しい物とされることが多いように思う

啄木鳥が空けた空っぽの木脈に手を伸ばして
温かさを感じたのは
貴方の心が暖かいから
生きることと空虚はよく似ているけれど
決してその二つが平行線上で交わることがないのと同じで
不幸が延々と続くことも無いのだと
教えてくれた恩師はもういない
それが今は哀しくてならないのだ

しかして、その心も続くことは無く
自身が生きる為に時間を使うことになる
今日の飯は美味かったかい
今日の風は冷たかったかい
今日の涙は恐ろしさ故かい
そう自身に問うてみる時間ばかりが過ぎていくのも
また人生というものなのだろう

だからこそ大事な人との時間を大事にしようと決めた今日
私はシンクに置かれた包丁を見つめている
これを使えば貴方は私の永遠となるけれど
そんな思考は間違っていると
自身に言い聞かせる
私の触れた木脈は確かに温かかったのだから

コツコツコツ
啄木鳥の挙動が激しくなった頃
私は帰宅した貴方に対して
誠意をもって
おかえりを言うのだろ

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