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トンビ

トンビが飛んでいる
当り前のように飛んでいる
当り前みたいに羽があって
当り前のように鳥であって
美しい生き物だという自覚も無く
優雅に空を泳いでいる

飛べたらどんなにいいだろう
自由に行きたい場所へ行って
好きな人のところを周るだろうか
そしたら眠れない夜も
楽しい時間になるかもしれない

父と母は相変わらず私のことを愛している
私はそれに報いることができるだろうか
空を自由に飛べたなら
今すぐにお礼をしに向かうのに
メールでは伝えきれない言葉を持って
両親の頭の上に降らせてみよう
困っちゃうかもしれないね
喜ぶかもしれないね
小さな小さな報告で良い
何気ない
トンビの鳴き声のような

夏の熱さに溶け始めた氷菓は
本当に幸せだったのだろうか
嘴では突きにくい氷の塊は
人間であってこそ味わえるのかもしれない
だとしたら私は人間でいいや、とも思う
自由を手に入れたいと幾千年
人間達は右往左往してきたが
どんなにお金に恵まれていても
幸福には届かなかった

今日もトンビが飛んでいる
当り前のように飛んでいる
当り前みたいに羽があって
当り前のように鳥であって
美しい生き物だという自覚も無く
優雅に空を泳いでいる

明日には私に羽が生えて
トンビに生まれ変わっているかもしれない
そうしたら氷菓を味わえないから
甲高い鳴き声を上げるだろう

ぴーひょろ
ぴーひょろろ

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