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偶像崇拝/散文詩

ロングヘア―の彼女は言った。この髪を伸ばすためにした努力はきっと報われない。最愛の人に届かない想いは浜辺の砂に吸い込まれていった。と、すれば暗雲立ち込める天気も、気候をも誰かが操っている物にしかすぎなくて、自分の一部を成型するブロックの一部分でしかない事を表しているのかもしれない。幼少時代積んだ角張りの形跡は、きっと今も尚海の底に沈んでいるに違いない。好きだとか愛だとか語る前に、自分のことを多く理解しているかが鍵となることはわかっている。折り畳み傘を丁寧にたたみながら星の出てきた暗黒に目を奪われたときに、きっと人は本気の恋に落ちる、それが自身の妄想と疑うこともしないで。サヨナラが上手く言えない彼女は、全てを零か百、または白か黒で考えることを辞められない。一滴のミルクが珈琲に落ちた瞬間のことを知らないからだ。グレーゾーンを知ることで展開することがある物語の名前を呼べない彼女は、水玉模様という表現も知らずに、今宵もブラックコーヒーのようなどす黒い感情を抱えながら。タンパク質の偶像崇拝について考えている。それこそが人の生きる道だと言うように、人々にもそれを強要しながら重い足取りで砂を踏むと、ハイヒールは半分以上砂浜に飲み込まれた。

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