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定義

いつ君が来てもいいように
扉は開け放っておくよ
泥棒が入ってきてもわからないかもしれないけれど
盗るものなんて何もないから
ガッカリするだろうね

路上生活している老人が
わしも若ければ君のように
待つ人がいただろうにと
蜻蛉玉みたいな瞳から涙を零した
私は老人に千円札を渡して
これで美味しい物でも食べてくださいと言った

偽善も偽善
それでも私は
誰にでも生きる価値があるのだと言いたかった
素敵なディナーまでは用意できないけれど
ファミリーレストランに入ることぐらいはできるだろう

いつ君が来てもいいように
扉は開け放っておくよ
警察が入ってきてもわからないかもしれないけれど
何かの証拠なんて何もないから
ガッカリするだろうね

路上生活している老人が
わしも若ければ君のように
自由でいられただろうかと
蜻蛉玉みたいな瞳から涙を零した
私は老人の手を握って
温かさを共有した

偽善も偽善
それでも私は
存在自体が罪にはならないと知っているから
あの老人がどんな用途で
お金を使うまでかは追求しない

待ち人来る
君は僕と目が合うと軽く会釈をして
ラブソングを披露した
自分で考えたんだよと言ったけれど
世界のどこにでもある歌みたいに
どこか陳腐な言葉が添えられたその歌が

僕の耳にしか入らないことが嬉しかった

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