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ハート

本当に必要な物はもう揃っているという
では、今の置いてきぼりな気持ちはどこから来ているんだろう
孤独を愛する人もいるけれど
僕はそんなに強くはない
涙を流しながら
辛い辛いと悲しんで
いったい何を得たというのか

蜻蛉が飛ぶ季節になった
どうしようもない心を
ゴミ捨て場に捨てた
そうしたら思ったよりも身体が軽くなり
行きたくも無い場所に行っても
何も感じなくなった

なんだ、最初から備わっていなければいいのに
そう思った
躓いて転ぶと
一人の女性が寄ってきて
大丈夫ですかと僕に聞いた
心を失っているから。ああ、全然問題ありませんと言いながら
女声の心配をよそに
歩き続ける
あの人はきっと
まだ心を捨ててはいないのだなと思って
引き返し
あの、さっさと捨てたほうが良いですよ
心の事です
誰にも心配されず
誰にも心配をかけずにいる
唯一の方法だと思うんです

女声はきょとんとして
そんなことをしたら、貴方を大切に想っている人の気持ちは
どうなりますか
そういうと、手を引いて
どこに捨てたか教えてください、と
二人走ってゴミ捨て場に向かう

沢山あるから見つけられないと思いますよ
素手で心の山から僕の心を見つけようと必死になる女性
微かに心臓の音が鳴るのが聴こえた
心の中から鼓動と共鳴して光っている心を取り出し
女性は僕の胸に還した

大丈夫、きっと大丈夫
僕を抱きしめる彼女の身体は温かかった
涙が頬を伝う

大丈夫なんて
言われたのは何年ぶりだろう

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