鯛現者の世界一周 アメリカ編1日目

この記録は、俺が世界一周旅行に行った時の日記を一部編集したものである。

コロナの影響で気楽に旅行ができない今だからこそ、この日記が誰かの笑顔を作ると信じて、このnoteの海へと流す。

さあ、読んでくれ。俺の旅を。

6月7日 第十二寄港地アメリカ(一日目)

「堪能編」

朝六時。俺たちの乗る大型客船はハドソン川に差し掛かっていた。
「うわーい。見えた見えたあ!!」
「おお、どこだどこだあ!?」
すっかり仲良くなった男の子の声に釣られるように甲板に出ると、長大な河川の真ん中に俺たちのよく知る像が姿を現した。
自由の女神である。
長い一週間の船旅の果て、俺たちはポルトガルから遂にアメリカまでやってきたのだった。
大型客船が悠々と女神の横を抜けてハドソン川の奥へと迫る。この先は、ニューヨークの中心地。最高の位置から二日間かけて、俺たちはアメリカンドリームを体験し尽くすのだ。そのためには……
「うし、上陸許可がら降りるまで二度寝すっかな」

体力をしっかりと蓄えてゆっくり身支度を整えると、おれは仲間たちと連れ立って大型客船を出て、入国審査が行われている港側へと歩き出した。
一度に千人もの旅行者を相手にするのだから、遅めに出ても変わらないだろう。という考えからおれたちはかなり時間をずらしたものの、結局一時間は待たされてしまった。
やはり入国管理官の技量によるところが大きいようで、おれはすんなりと審査をパスしたものの、同じタイミングで審査を受けた友人は中々解放されない。
退屈したので、その友人の前で学びたてのダンスを披露してみると、
「あっちいけ!!(意訳)」
と、入国管理官に怒られてしまった。どうも、すいませんでした。
そんなこんなで仲間と合流して港を抜ける。午後十二時。踏み出したそこは、夢にまで見たニューヨークだった。
高層ビルがいくつも立ち並び、その間に敷かれた道をイエローキャブが走り抜けてゆく。今日は、天気がいい。港沿いにランニングをしている人々が見えた。旅行をするにはこれ以上ない天気だ。
今回は前半をタイムズスクエア中心の散策に割いて、後半を野球観戦に当てるスケジュールだ。旅の道連れはルームメイトのイチロー(仮称。顔のパーツ配分がイチローに似てる)だ。
「じゃあ、イチロー。よろしく頼むぜ」
「ああ。まずは腹ごしらえだね」
「そう、まずは……」
「「マクドナルドだ!!」」

港からタイムズスクエアへの最短距離をまっすぐ歩く。最短距離といってもその距離は約一.五キロ。少し遠い。
ニューヨークの街は碁盤のように細かく仕切られていて、横道一本一本に番号が振られている。その通りがどの方角を結んでいて、どこへつながっているかを把握すれば、ニューヨーク探索はぐっと楽になる。
まあ、おれは常時ネット回線をつなげるイチローに丸投げしてるんだけどな。
ニューヨークの景色を楽しみながら十分ほど歩くと、一際大きな通りに出る。数件のビルの上部に大型ディスプレイが設置され、新鮮な情報が繰り返し流されてれている。タイムズスクエアに到着したのだ。
未知の国を訪れるのも悪くないが、メディアの中でしか見たことのない場所を訪れるのも悪くない。やはり、生がいい。実際に赴いてみなければ、分からないことは多いものだ。
イチローに呼ばれて、おれは現実に戻ると、早速マクドナルドで腹ごしらえをした。アメリカのマクドナルドは、圧倒的な品揃えであった。

食事を終わらせると、俺たちは行動を起こした。
午後の野球観戦のために、ニューヨークの中央でしなくてはならないこと、そしてやってみたいことがいくつかあった。
「おう、イチロー見ろよ。またマックがあるぜ」
「スターバックスもあるね。もう何件目だろう」
話し合いながら、俺たちはまた別のマクドナルドを発見した。この一日を通してわかったことだが、マクドナルドは二ブロックに一軒。スターバックスに至っては一ブロック一軒の感覚で出店されているのだ。無意識でも看板が視界を遮ってしまう。
そんな街並みを楽しみながら、俺たちは両替所兼チケット売り場にたどり着いた。イチローの軍資金と二人分の観客席確保のため、イチローと列に並ぶ。列はすんなり動いた。
両替手数料は一五パーセント。球場の外野席五九ドルだった。後者に関しては高いなあと感じたが、付き合うと言った以上取り消しは効かない。おれは店員にドル紙幣を渡した。
そうして、最低限の用意を済ませると、空いた三時間をニューヨークでの買い物タイムに当てた。
服屋を見に行く途中でエンパイアステートビルをカメラに収めて、ニューヨーカー達の足並みに合わせてスイスイ歩いて、良さげな服屋を物色した。
本場のスターバックスにも寄った。黒人店員に「鯛吉」(当時の偽名。船の中ではあだ名で呼び合う決まりがある)と自分の名前を伝えると、彼はオーケー、と笑い陽気に歌いながらコーヒーを作り始めた。本場は丁寧さとノリを大事にしているらしい。
そして、おれは出されたキャラメルマキアートを一口含む。……甘アアィい。九割砂糖だよこれ!!おまけに、カップの名前欄には「分からん」と書き込まれていた。客の名前で遊ぶなや!!
コーヒー(激甘)で喉を潤すと、俺たちはコミックストアを訪れた。もちろん、希望したのはおれだ。アメリカといえばアメコミだからな。
店は二階建てで、一階はマーベルやDCの漫画と日本の翻訳された漫画のコーナー。二階は、日本とアメリカのフィギュアのコーナーだった。まさしく、おれの行きたかった場所だ。
記念にアメコミを一冊買うことにした。
スーパーマン、バッドマン、アベンジャーズにxmen。有名どころは全部あって、近々劇場で公開されるダークフェニックスの原作は目立つ場所に多めに置かれていた。
迷う。全部買いたいが、アメコミのストーリーを一気に楽しむには、二十から五十ドルは払わないといけない。つまり、予算的に一冊が限界。
吟味に吟味を重ねて、おれは比較的最近発刊されたウルヴァリンの漫画を買うことにした。ダークフェニックスもいいが、「ローガン」を見た後というのが大きかった。ヒュージャックマンは偉大だ。
イチローと合流すると、俺たちは球場へいくため、地下鉄の入口へと向かった。

地下鉄に乗って揺られること四十分。各駅停車の地下鉄から降りると、おれとイチローの前にどでかい球場が現れた。
ここで行われるメッツとロッキーズの試合をこれから見ようというわけだ。出入り口のスタッフにチケットを見せると俺たちは内部へと入り込んで行った。
球場は日本のものとは違いかなり広かった。球場内に鉄橋はあるわ、各階に売店があるわ、レストラン区画があるわで、自分の席を探すためにかなりの距離を探してしまった。
「おう、遅かったね」
「ああ、球場一周分は歩いたね」
ようやく見つけた席はバッター側の五階席。球場を一望できる中々悪くない席だった。
「うし、頼まれた食いもんだ。すまんが、冷えちまった」
そう、言いながらおれは、コーラの口を開けて……
「あばばばばば!?」
気づかない間にかなりシェイクされていたコーラが吹き出してしまった。となりの外人にもちょっとかかったが、なんか許してもらえた。
気まずいスタートを切ったものの、おれとイチローは試合観戦を楽しんだ。
おれは野球素人ではあるものの、海外の野球はパワフルで見応えがあった。なにより、どの選手もホームランを出しうるパワーを持っているので、乱打戦やホームランが起こる可能性が高いのがいい。分かりやすいから見てて退屈しないのだ。
ただ、ホームグラウンドであるにも関わらず、メッツはひどい試合をしてしまった。特に八回裏、二回ホームランをぶち込まれた投手が精神的に参ってしまい、次のバッターにデッドボールをぶちこんでしまったのだ。
球場は、一気に一触即発ムード。乱闘こそ起きなかったものの、完全に勢いを失ったメッツは五対一の点差で負けてしまったのだった。
「いやー、楽しかったね。お土産いっぱい買えたし」
そう、満足げに頷くイチローに対し、
「ま、まあそうだな」
おれは苦笑いであった。
乱闘寸前の残念な試合に当たり、彼女らしき人物が明らかに退屈そうで、横のイエローモンキーにコーラをひっかけられた隣の外人の兄ちゃんが不憫でしょうがなかった。……幸せになれよ!!

そうして、地下鉄で港付近まで戻り、途中で見つけたセブンイレブンで買い物を済ませてから、今日の探索を切り上げた。
明日は、自然公園付近を巡って、ステーキを食べる予定だぜ!!
アメリカンドリームはまだまだ続くぜ!!


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