Research22〜等々力の加藤さん〜

調査時間:2019.1.13(日) 14:00〜17:00
場所:多摩川河川敷(等々力)
天気:晴れ(7〜10°C)

昨夜は雨が降ったことと、今日は河川敷でどんど焼きをやっているため、狛江の家を一旦確認する。その後久しぶりに加藤さんに会いに行き、今の家の現状を報告し、アドバイスをもらおうと思う。

雨が溜まる屋根

昨日垂木のようなものをかけてみたが、その効果は完璧とは言えず、中央に雨水が溜まってしまっていた。このように雨水が溜まらないようにするには、ちゃんとした板を屋根全体にかける必要がありそうだ。
一方でどんど焼きの影響は全くなく、人は多かったが特に気にならなかった。

側面のシートが開閉式になったため、日中は前よりも暖かい太陽の日差しを浴びることができる。昼寝が気持ちよさそうな陽気だった。
側面はやはりこのまま何も置かずに、茂み越しの川のビューを見ていたいし、太陽の光も差し込んで欲しいので、これから作るものはその邪魔にならない場所を想定して作っていきたい。

1ヶ月ぶりの加藤さん

最後に加藤さんにあったのは12/2に行ったResearch9の時のことだ。もう1ヶ月以上前の話だ。

今日の加藤さんはアウトドアチェアを出して、友人とふたりで飲み会をしていた。カップラーメンやスナック菓子を食べた痕跡が残っている。
加藤さんは鋭く、遠くからでもぼくの顔をわかってくれた。
「寒いから酒でも飲もう(笑)」
と加藤さんはぼくに酒を勧めてくれた。加藤さんが飲んでいたのはいいちこだ。新しいのか古いのかわからない紙コップに注がれる。
「酒強いか?何かで割る?」
と聞かれたので、割ってくださいと返した。あまり安酒を飲まないので、ストレートは嫌だった。すると地面に置いてあった十六茶が少し残ったペットボトルを取り出し、お茶割りを作ってくれた。

半分以上がいいちこの濃いお茶割りは確かに体を温めてくれた。どんどん沈んでいく太陽の光を受けながら、ぼくは加藤さんと加藤さんの友人に混ぜてもらって飲み会をした。

加藤さんのエスキス

加藤さんをお手本に家を建ていることを伝え、今現在の家の写真を見せた。

加藤さんはめちゃめちゃ褒めてくれた。すごいすごい!と。
そして今前回の側面に扉をつけるのはどうか?と提案してくれた。ぼく個人としてはここは川の景色が綺麗だから閉じたくないのだけど、とりあえず加藤さんのアドバイスを聞いてみることにした。

加藤さんのドローイングだ。まずは角を45°にカットした角材を4本用意してそれぞれを釘でつなぎ、木枠を作るとのこと。そこに板を貼って扉にしろと言ってくれた。いたって普通の話だが、こうやって紙とペンを使って熱心に説明してくれたことは嬉しい。

扉の重要性をここまでいうのは、おそらく大事なものを盗まれないようにしろということだろう。入り口は自分が入れればいいんだから、と言っていた。そしてまた今度来た時に蝶番探しておくから、とまで言ってくれた。加藤さんにかかればどんなものでも街に落ちているらしい。そしてちゃんと鍵をかけろと言ってきた。そしてぼくはどこかで拾った自転車のチェーンをもらった。

お金の話

その後話はどんどん路上生活の方法について進展していった。そこでお金の話を初めて聞くことができた。

アルミ缶は1kgで120円
真鍮は1kgで370円

これらが金属売りの今の相場らしい。真鍮は水道管のパイプとかで使われているらしく、アスファルトとかに擦り付けてみて、金色になったら真鍮だとわかると教えてくれた。もえないごみの日に真鍮を見つけることができたらラッキーらしい。

ただ、もえないごみを漁るときは注意が必要だ。私有地に入らないように作業をすることだ。必ず公道に出て作業をしないと警察に捕まる可能性があると言っていた。また、収集車はどこに置いてあっても地区内だったらゴミ回収してくれるようなので、最悪同じ場所に返さなくてもいいと言っていた。怖そうな住民の人の家の前でゴミ袋を開けるのは流石の加藤さんでも嫌だと言っていた。

またこれに付随して、自転車の手に入れ方も学んだ。
使ってなさそうな自転車が置いてある家の住人に声をかけ、自分の状況を素直に伝えて譲ってもらえないか聞いてみるようだ。そしてもし譲ってくれるようだったら、それを譲渡することがわかるような紙を書いてもらうことが重要だという。こうすることで警察に職務質問されても問題は起こらない。

食事の話

そして次第に話は食生活の話になっていった。加藤さんは路上生活者の中ではリッチな方かもしれないが、そんなにお金を持っているわけではない。

やはり廃棄になる食べ物を狙うらしい。
例えば町の八百屋さんとかなら、朝一で行くとゴミ箱に時間がたった野菜が入っていたりするようだ。腐る野菜もあるが、この時期なら長持ちするものも結構あるという。
そのほかにもスーパーも狙えるという。スーパーは専門の業者がやってきて処分するらしいが、朝の4時くらいに行けばその業者もいないんじゃないかと言っていた。

加藤さんは野菜の大切さを訴えていたが、野菜は高くて買えたもんじゃないから、廃棄を狙うしかないと言っていた。確かに健康的な食事は過酷な生活には大事な要素になるだろう。

多摩川にも春にはのびるが育つので、そういうのを収穫して生活すると言っていた。そしてそう言ったものを近所の人たちにおすそ分けして、そのお返しに色々なものをもらって生きていると言っていた。そのように贈与のサイクルで加藤さんは生きていることを改めて思い知らされた。
ちなみに野草の勉強も、ゴミに出ていた図鑑でしたそうだ。すごい

お土産のいいちこ

日が沈み、寒さが増したので、僕たちは解散することにした。加藤さんは
「帰り道で飲みなよ」
とぼくにいいちこをくれようとする。ありがたくいただくことにすると、転がっていた先ほどの十六茶のペットボトルにいいちこを詰めて持たせてくれた。

等々力駅までの20分くらいの徒歩の帰り道に、いいちこを飲んだ。
ペットボトルで飲むいいちこなんて経験したことがない。でも、安酒でもこんなにも美味いもんなんだな、と気づくことができたリサーチだった。


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