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VTuberの哲学で卒業論文を書きたい人のための文献案内

こんにちは、慶應義塾大学の篠崎大河です。

この記事では、VTuberの哲学で卒業論文を書きたい方におすすめの文献を紹介します。


VTuberの哲学の文献

まずは、VTuberについて哲学者が論じた文献を紹介します。


難波優輝(2018)「バーチャルYouTuberの三つの身体——パーソン、ペルソナ、キャラクタ」『ユリイカ』50巻9号

難波優輝さんは分析美学の研究者です。この論文では分析美学の視点からVTuberを詳細に論じています。同誌に掲載されている他の記事にも注目です。


篠崎大河(2023)「バーチャルYouTuberの形而上学——配信者説を擁護する」『フィルカル』vol. 8 no. 3

手前味噌で恐縮ですが、拙論を紹介します。この論文では分析形而上学の視点からVTuberの哲学の理論を解説するとともに、配信者説(VTuberは実在の配信者と同一であるという説)を擁護しました。配信者説を支持/批判したい方におすすめです。

Amazon.co.jp: フィルカル: 分析哲学と文化をつなぐ (Vol. 8, No. 3) : 長田 怜、佐藤 暁、稲岡大志、朱喜哲、長門裕介、森功次, 青田 麻未、河合 大介、木下 頌子、酒井 泰斗、高崎 将平、高田 敦史、筒井 晴香、野上 志学、古田 徹也、松本 大輝、八重樫 徹、吉川 孝、三木那由他、神戸 和佳子、谷田 雄毅、三浦 隼暉、飯塚舜, 上野修、島薗進、十川治江、酒井 潔、鈴木英仁、和辻龍、西山渓、大谷弘、井頭昌彦、清水雄也、岡本慎平、尾崎健太郎、小西卓三、赤江達也、酒井泰斗、木島泰三、, 林智行、藤木 篤、坂本慎一、大澤絢子、渡辺一樹、立花達也、玉田龍太朗、筒井一穂、篠崎大河、鈴木英仁: 本 Amazon.co.jp: フィルカル: 分析哲学と文化をつなぐ (Vol. 8, No. 3) : 長田 怜、佐藤 暁、 www.amazon.co.jp

山野弘樹(2024)『VTuberの哲学』春秋社

山野弘樹さんはフランス哲学者ポール・リクールの研究者ですが、最近はVTuberの研究者としても有名かもしれません。本書では、非還元主義(VTuberを配信者ともフィクショナル・キャラクターとも同一視しない立場)を擁護しています。

本書に関しては私の書評が近日中に書評紙に掲載されます。その際はXにてお知らせするので、ぜひ参照してみてください。


岡本健・山野弘樹・吉川慧(編)(forthcoming)『VTuber学』岩波書店

本書は研究者やライターなどが企画したVTuberに関する入門的な学術書です。第三部「理論編」が哲学的議論に当てられており、VTuberの哲学の主要な理論を通覧できます。山野さんと私も執筆者として参加しています。今夏に刊行予定です。

まだamazonのページがないので、同じく執筆者のバーチャル美少女ねむさんによる紹介ページのリンクを貼っておきました。


哲学の教科書

VTuberの哲学で卒業論文を書く場合、哲学的な議論を理解し、自ら組み立てる必要があります。以下は、そのような基礎的な哲学的技能を身につけるためにおすすめの文献です。


鈴木生郎ほか(2014)『ワードマップ現代形而上学——分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』新曜社

分析形而上学の入門的な教科書です。分析形而上学の目的や方法、そして主要な議論について学ぶことができます。


T. ウィリアムソン, 廣瀬覚(訳)(2020/2023)『哲学の方法』岩波書店

哲学方法論の入門的な教科書です。哲学の議論を組み立てるために知っておくべき手法を通覧できます。


山田俊行(2018)『はじめての数理論理学』森北出版

論理学の入門的な教科書です。ただし、あなたの所属する大学で論理学の講義が開講されていれば、独学よりもそれを受講することをおすすめします。


VTuberのエッセイ

以下は個人的なおすすめになります。私の推しVTuberが執筆した文献です。


月ノ美兎(2021)『月ノさんのノート』KADOKAWA

にじさんじの月ノ美兎さんのエッセイです。上述の拙論(2023)で引用しています。


剣持刀也(2023)『虚空教典』KADOKAWA

にじさんじの剣持刀也さんのエッセイです。実の父親との対談なども掲載されており、見どころ満載です。


論文執筆の教科書

最後に、そもそも論文をどう書けばいいか分からないという方には、以下の文献をおすすめします。


河野哲也(2018)『レポート・論文の書き方入門 第4版』慶應義塾大学出版会

卒業論文の書き方まで丁寧に書いてあります。ちなみに、著者の河野哲也さんは哲学者です。


以上です。参考になれば幸いです。

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