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rWAR(Wins Above Replacement)で見る大谷翔平

※2021/07/27時点での記事であることに留意してください。

今季の大谷翔平(以下大谷)は投打ともに一流の成績を残していて、特に「打」では35本塁打とMLBトップを誇る数字を記録しています。
「投」はよく蔑ろに見られがちですが、エンゼルスの先発陣では防御率・WHIP・奪三振率がいずれもトップと無視できない数字を記録。

これだけでも大谷の今季の二刀流は成功しているように見えますが、詳細にBaseball-Reference(MLBの野球統計サイトの一つ)を使って優れている部分と劣っている部分それぞれ確認してみましょう。

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打の部門

まず打の部門を見ていきます。
MLB一位の部門は、WAR(投+打)・長打率・本塁打・長打数・Power-Speed #・1本塁打にかかる打数・WPAとなります。
特筆したいものとしては、単打32で本塁打35と単打の数が本塁打より少ないことです。
比較として同僚のJared Walshを挙げてみます。

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今季22本塁打・長打率.516を誇る長距離砲ですが、51単打も記録しています。長打数46はAL8位と健闘を見せています。しかし、本塁打数はおろか長打数も単打より下回っています。これがいかに大谷の異常さを示すかには十分だと思います。
また、エンゼルスにはOPS8割を超えている打者は前述したWalshと大谷だけです。(Walsh: .836,大谷: 1.040)
MLB全体で見るとOPS10割を超えている打者はVladimir Guerrero Jr.Fernando Tatis Jr.と大谷だけであるため強打者と言えます。

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打撃系の指標(主に長打を含む物)TOP3にはいずれもGuerrero Jr.Tatis Jr.と大谷で独占をしていてこの3人がMLBの現在を担っていると言っても過言ではないです。(oWARに関しては大谷が少し劣っています)

走の部門

走塁面でいうと盗塁14はチームトップの数字です。ALで見ると7位に位置するため十分速い選手と見ていいでしょう。ただ、1チームに一人走れる選手がいたら十分というレベルで、MLBでは盗塁を試みる選手がそこまで多くないことも気をつけたいです。また、三塁打4はMLB6位であることも足が速いことを示しています。盗塁成功率は74%です。

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投の部門

まず15先発防御率3.04は優秀すぎます。またFIP3.40なのでこれは誇張されたものではないというのも同時に理解できると思います。WHIP1.125もMLBレベルで優秀と言えるでしょう。
奪三振率11.3は2018年の大谷の11.0を上回っています。単年では14を超える選手もいますが、キャリアでは11を記録する選手はChris Saleダルビッシュ有だけでこの奪三振率を維持することができればキャリアでもトップになる可能性があります。
WAR2.8はエース級の数字で例えばツインズにはこれを超える投手はいません。というかエンゼルスの投手陣でも1位です。(次点でRaisel Iglesiasの1.5)
試合のログを見ても7失点をした試合が1試合、4失点をした試合が1試合で他は2回を除いて5回を投げて3失点以上の投球が毎回できています。エースというには投球回が足りないように見えますが直近では6回7回を投げきることが増えてきており着実にスタミナも増えているように見えます。QS率は53%でMAX投球数は105です。

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懸念点

ただ一応大谷にも懸念点はあります。一つは数字に見えにくい部分である怪我です。NPB在籍時から決して丈夫とは言いづらい選手で、捻挫や骨折をして離脱していたのは記憶にあります。MLB移籍後は主に投手としての怪我が目立ち、特に靭帯を損傷したためトミージョン手術を受けたことは印象にあります。投打ともに健康に終えたのはNPB時代の2016年のみで、打のみだとMLB時代の2018年だけです。投ではNPB時代の2014年から2016年だがそれ以降はないです。つまり二刀流でフルシーズンを過ごす事自体が難易度が高いということです。

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他には盗塁時の怪我が心配されます。大谷はMLBでもどちらかといえば盗塁を試みるタイプでプレー間の怪我の可能性とは離れることは難しいでしょう。
打の懸念点では四球数が平均的なことでしょうか。しかし、優秀ではないだけで大谷がフリースインガーであるというわけではないです。三振数が多いのは仕方ないと思うので懸念点ではありません。
投の懸念点はイニングが稼げないことではなく、その原因となる四球率4.1だと考えます。これはエンゼルス先発陣で最も悪い数字です。四球が増えることで投球数が嵩んでいると見ることも出来ます。ただ、荒れ球という観点もあるのでこれに関しては断言まではしづらいです。(ちなみに主力中継ぎのSteve Cishek5.7です)
あとこれは完全に見栄えの問題ですがこの先発機会で5勝は悲しいです。これについては野手陣よりも中継ぎ陣に問題があるのですが・・・

終わりに

ここまでのシーズンでオールスターに投手としても打者としても選出されました。6月の月間MVPにも選出されました。週間MVPにはすでに二回選出されています。ホームランダービーにも出場し1回戦敗退でしたが、Juan Sotoとの延長戦までもつれ込む激戦を繰り広げました。そのダービー後にオールスター先発として投げ100マイルを記録するので正直現実に起こっていることと思えません。ここで彼の前に偶然にも似ている選手がいます。

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Babe Ruthです。Ruthは偉大なホームランバッターとして名を馳せるどころか歴史上の人物となりました。そんなRuthですが二刀流を続けていたのは2年だけでした(十分すごいのですが)。本塁打王を取りながら投手では防御率2点代を記録する。これを出来るのは現段階では大谷だけと言えます。そもそも1世紀並に離れた選手と比べられる時点で私達は新たな時代を見ているということがわかると思います。

これからどこまで成績を伸ばし、そしてどれだけ二刀流を見られるかわからないのでこれからも怪我をしないことを祈りながら応援する日々を続けていきます。

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