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うたの日薔薇短歌まとめ

うたの日のデータ1年分がドロンしてしまったということで、薔薇(首席)をいただいた短歌をこちらにまとめておこうと思います。

Twitterでは10首ごとにまとめた画像を投稿しています。

*上から新しい順に
*随時更新

『嘘』2024.5.31
休日はほぼ寝ているという女子が印刷屋にはやたら詳しい

『翼』2024.5.24
泣く用の映画を選ぶ 下降するための翼があったっていい

『屑』2024.5.15
昨日まであなたであった半券を紙屑にする雨の火曜日

『等』2024.5.13
黒板のかわりに空を見るきみの頬杖がほぼ花に等しい

『自由詠』2024.4.10
そのほうがずっと遠くへ行けそうで綿毛は子らの吹くときを待つ

『もっと』2024.4.9
幸せにまたは不幸にできる手であなたのパンにもっとバターを

『照』2024.3.26
優しそうな人でよかったゆるやかに日照権は奪われてゆく

『近』2024.3.24
春からのかかりつけ医となりそうなアパート近くに見つけたパン屋

『常』2024.3.11
半年で去る新卒にほほえんで常在菌のような俺たち

『自由詠』2024.3.10
パスタにはオリーブオイル キッチンは私を2ミリ正気に戻す

『専』2024.3.8
やわらかな侵略として浴室に君専用のシャンプーがある

『充』2024.3.2
本棚を充実させていくようにあなたと夜の海を歩いた

『広』2024.2.28
いつの日か翼になってしまう手を広げて吾子が駆け寄ってくる

『登』2024.2.20
登板を待つピッチャーの面持ちでクローゼットに並びたる春

『車』2024.2.18
アルバムに名前をつけて閉じるよう父は車をあした手放す

『あの』2024.2.16
泣きつけばただやわらかいあの人と違う素材でできている犬

『圧』2024.2.5
蘇生した布団圧縮袋からまだ君がいた冬がこぼれる

『方』2024.2.3
春からはもう使わないバス停に全方位から夕暮れが来る

『寄』2024.1.31
ぬくもりがほしくて寄ったコンビニのどれもが一人分のさびしさ

『いざ』2024.1.24
いざという時に、と母が言う「いざ」のきっとかなしいたたかいのこと

『盤』2024.1.22
廃盤になった香りでくちづける思い出さない思い出でいい

『ちゃう』2024.1.21
トントンと背中を宥め口ずさむいつかは君が忘れちゃう歌

『流』2024.1.20
流されて生きてきました誰よりも先に海へと辿り着くため

『犬』2024.1.11
陽だまりと認めた順に乗せられる子犬のあごが私にも乗る

『自由詠』2024.1.10
知らぬ間に子の増えているアイコンのあなたをとおい月として見る

『悪』2024.1.4
会うとまた会いたくなってわたしたち燃費の悪い恋をしていた

『動』2024.1.2
あたらしい動詞つぎつぎ手に入れてベビーシューズのかかと軽やか

『歌』2023.12.31
さてはまた歌ったでしょうリビングに無数の花がこぼれています

『聞』2023.12.30
子に聞かす小言が母に似てきたり秘伝のタレを継ぎ足すやうに

『雪』2023.12.26
誰かにはともしびだろう雨よりも冷たいはずの雪を見ていた

『回』2023.12.22
また海へ還るのだろう回文の途中のような雨音を聴く

『オレオ』2023.12.16
ゆっくりとオレオを剥がす知りたいと壊したいとは少し似ている

『知』2023.12.7
ベランダのシャツ揺らめいて私より風を知ってるわたしのかたち

『きつ』2023.12.2
冬晴れに「楽よ」と母は笑いたり前よりきつい薬を飲んで

『組』2023.11.28
つつがなく家具を組み立てまたひとつできないことがなくなっていく

『もし/もしも』2023.11.27
背骨へと触れてしまったそれからはもしもの後が全部かなしい

『惰』2023.11.25
おそらくは惰性で暮れているはずの夕日にちゃんと泣かされている

『録』2023.11.20
記録には咲いた日のこと散らばった花の最後を誰もしらない

『どんぐり』2023.11.19
どんぐりを探して歩く三歳のこんな明るいうつむきがある

『音楽室』2023.11.7
いっせいに譜をめくるとき放課後の音楽室はすこし草原

『火』2023.11.6
たくましき骨ときれいなままの歯をペット火葬のひとは讃えり

『貴』2023.11.4
弊社から貴社へと変わりゆくように敬語で届く退去日のこと

『義務』2023.10.24
これもももう義務かもしれず踊る踊る踊るしかないだしパック見る

『抜』2023.10.21
抜糸するようにあなたは消えてゆきうつくしい傷だけが残った

『害』2023.10.19
人体に無害な恋はないらしく今日も酸素がすこし足りない

『側』2023.10.13
乗り込んだきみを見送る白線のここはおそらく外側だった

『逸』2023.10.12
色恋の話を逸らすときにだけ僕と仕事に愛は生まれる

『昔』2023.10.4
もう星にしたのでしょうねあの日々を君はまるごと「昔」と呼んで

『睡』2023.10.3
睡魔とはやさしき魔物 引き換えに陽だまりばかり差し出してくる

『日記』2023.10.2
フィクションと嘘と祈りに満ちている晴れてばっかの僕の絵日記

『眠』2023.9.28
それぞれの記憶が眠る図書館のだれも待たない海のしずけさ

『手』2023.9.26
手のひらに書いた人人人たちと打ち上げしたいプレゼンだった

『物』2023.9.22
下の名を思い出せなくなった日に洗濯物がふんわり乾く

『着』2023.9.18
水面に不時着をするシャボン玉そうかお前も死ねなかったか

『地』2023.9.16
映写機のように朝日が差し込めば無職の日々に解釈の余地

『語』2023.9.13
おかえりもごちそうさまも英語にはないけどたぶんI love youだ

『並』2023.9.12
オリオンにしちゃお、と言って神様が並べたきみの三つのほくろ

『です』2023.9.4
ここはもう海ですからと言うように九月を泳ぎだすうろこ雲

『上』2023.8.30
雲、ひかり、空気 季節が変わるとき僕らはいつも上を見ている

『訴』2023.8.26
無自覚なあなたの罪を書き連ね訴状のようになるラブレター

『武』2023.8.25
したたかに今日を戦い抜くためのコスメポーチはちいさな武器庫

『泡』2023.8.20
まだすこし夏に浸かっていたいからシャンプーの泡でつくる積雲

『血』2023.8.18
イヤホンの線に身体を繋いでは輸血のように聴いた音楽

『超』2023.8.17
この家のほんのちいさな凪としてただそこにある超熟の青

『花火』2023.8.7
あの夏の花火の続きなのでしょうあなたへそっと灯す線香

『題』2023.7.20
あいみょんを主題歌にしてこの恋にむりやり風を吹かせています

『指』2023.7.8
それぞれに海をかかえて僕たちは波紋を指のさきに宿した

『ぼっち』2023.7.6
ひとりからひとりぼっちになるための経由地として君が手を振る

『過』2023.6.30
夏だね、と言うとき君が過去問のようにひろげる夏を知りたい

『違』2023.6.14
色違いだねと笑えばおそろいと言い直されて今からが夏

『徒』2023.6.12
ビー玉がビー玉以上だったころ徒歩圏内にすべてがあった

『自由詠』2023.6.11
カルピスをカラカラ混ぜてこの国の入道雲の原液とする

『いい加減』2023.6.9
いい加減だったレシピを文字にしてあなたはひとつ梯子をのぼる

『三時』2023.6.8
人生のいまはおそらく三時頃 君と川辺を歩いたりして

『事』2023.6.4
事情なら聞いていますという顔で電車はぼくを海へと運ぶ

『次』2023.5.25
もう次の季節を生きることにしたマネキンたちの鮮烈な青

『腿』2023.5.19
ニーハイの食い込むつよさ 不可侵はわたしが作りわたしが守る

『巻』2023.5.18
ままならぬ夜の終わりに「〜の巻」ってつけて全部をフィクションとする

『緑』2023.5.4
緑という仕事があって弁当のブロッコリーが担う重責

『紙』2023.5.3
うつくしい表紙で綴じておくために完結させた恋ばかりある

『相』2023.4.12
黒板の相合傘を消したときかすかに架かる白だけの虹

『注』2023.4.5
クリームの注入口だと言われても納得できるあなたのおへそ

『ます』2023.4.2
ですますにときどき混じるため口が海辺のガラスみたいに光る

『見』2023.3.24
遠ざかる背中に花が降るなんて見開き2ページ使う別れだ

『捕』2023.3.21
捕まえると言うには優しすぎるだろうてんとう虫に差し出す指は

『話』2023.2.28
一話無料みたいな春だ出身地きみに訊かれてそれきりだった

『顔』2023.2.27
「ご自由にお取りください」幸せは意外とそんな顔をしている


2023.1.31〜


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