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【大人の読書感想文】悪童日記 アゴダ・クリストフ

みなさんこんにちは
人道支援家のtaichirosato です。

フランスに向かう飛行機の中。
ついつい耐えきれず本を開いてしまったが最後、
終わりまで一気に読み切ってしまったのが
この本「悪童日記」でした。

-注--
本書をまだ読んでおらず、これから読んでみたい方は、読んでからこの読書感想文を読むことをおすすめします(ネタバレが含まれます)。

疎開した双子の物語
物語は、とある田舎町に疎開する双子が祖母である意地悪ばあさんに出会うところから始まります。
はじめは、ただの意地悪く、不潔なばあさん。
それが、読み進めていくうちに双子との奇妙な、でも絶妙な距離感に変わっていきます。とてもいい関係、とは言い難いですが。

この作品は、双子の学習の一つとして始められた作文からストーリーが作られていて、戦時中の不条理や身近にある死、人間模様、歴史など色んな角度から描かれています。

ふたりの作文のルールでも説明されているように、感情は極めて漠然としたものであり、一貫して本書では感情に対する説明が排除されているにも関わらず、人間模様や客観的な情報から触れることのできる物語中の人物の想いがくっきりと浮かび上がるようになっています。

本書で他書にない一番ユニークな点は、徹底して描かれる双子の 僕たち という 個 について。
二人でありながら、それが完全な個として存在をしていて、その個がもつ独自のルールとそれに基づいた自律、そして社会との距離感を常に保っています。
ユニークで、非情で、戦禍で生きる子供のリアルを物語を通して知ることができました。

終始ブレることのない非感傷性。
二人はまるで、肉体と精神は別にあるかのような恐ろしいまでの客観性を持っています。
それは、二人がこれまで求め続けてきた戦禍の中で生き延びるための手段でしかないのかもしれません。
しかし、
それが最後に突如としてやってくる衝撃の結末によって大きく変わります。

ふたつの個の決別。

これから彼らはどう「生」を継続していくのか。
これもまた、今までのように彼らが自らに繰り返し課してきた試練なのか。
戻ることのない それぞれ の個への挑戦と過去との決別。僕はこの結末をこれっぽっちも予想していなかったし、続編である「ふたりの証拠」「第三の嘘」を読まずにはいられない、と思った本でした。

主人公たちと僕を照らし合わせる
物語の主人公である双子と僕。
いま飛行機の中でこれを書いていますが、人道支援という活動をするに当たり、紛争や身近に起こる死、ふたりがもつ恐ろしいまでの客観性というのは、活動中の自分の客観性という感性にも当てはまるところがあるのかもしれません。
感染症も暴力も、いずの理由であれ、たくさんの死を目の当たりにするこの人道支援というジャンルで止まることなく自分自身を突き動かしていくことは決して簡単ではありません。
ダイヤモンドプリンセスやイラク、その他の活動の時でも、僕は自分を客観視することを体得しました。いやそれよりは、そうしないと自分が保てなかったという方が正しいのかもしれません。自分を10メートルくらい上から見た状態で俯瞰すること、自分という人形をまるで上から操っているような感覚が仕事中の僕にはなんとなくあるのです。そうすることで、自分が潰れることなく極限の中での精神コントロールがきくようになり、どこか冷徹でありながらも継続していくことができたのだと思います。
自分自身を極限まで客観視すること、それは僕の中での一つの防衛反応なのかもしれない、とも思いました。
作中の主人公たちも生きるための客観性、戦禍での自分たちを守る同じ反応なのだと思います。

人道支援支援家にはいろいろなタイプいますが、活動中は僕はどちらかというと感情をフラットにするタイプです。何が起こっても動じない、冷静に全体を必要な方向に導いていくことが多いです(もちろんその限りでないこともありますが)。
過去に冷静と情熱の間という映画がありましたが、ミッション中の僕の頭の中は冷静が7割、情熱が3割。情熱だけでは、理不尽に疲れてしまうし、自分が持たないので、とにかく落ち着いて、意識的にスピードを落とし、周りのペースに合わせることなく、マイペースに自分のなすべき仕事をデザインしていくようにしています。もちろん溢れんばかりの情熱をもっていますが、あくまで自分のコントロール術として、です。

焦らず、早く。

人の命が関わる医療の緊急支援はとても繊細ですが、客観性を保ちつつ、心は熱く。自分の中のバランスを上手に保ちながらパフォーマンスを上げていけたらいいですね。

これからも、一つ一つ仲間たちと困難を乗り越えて行こうと思います。

Best,
Tai




いつも記事を読んでいただきありがとうございます!!記事にできる内容に限りはありますが、見えない世界を少しでも身近に感じてもらえるように、自分を通して見える世界をこれからも発信していきます☺これからも応援よろしくお願いします🙌