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GPT搭載・教育用AIフィードバックシステムを無料公開しました

東京学芸大学 教育AI研究プログラム / ㈱カナメプロジェクトの遠藤太一郎です。教育現場でのAI活用に関して、色々な試みをしています。最近、こんな記事も書きました。

さて、話題の生成AIですが、ものすごい勢いで開発が進み、出来ることもどんどんと増えてきています。ChatGPTを授業に活用している先生方も少なくないのではないでしょうか?

一方で、本格的に試そうとするとある程度の「自動化」が必要で、なかなかハードルが高いのではないかとも思います。

そこでGPT-4o等を使い、簡単に、まとめてAIがフィードバックを生成するシステムを作りました。これを、無料で公開します!

以下、公開の経緯も含めて詳しくご説明していきます。

システム無料公開の経緯

東京学芸大学の「教育のためのデータサイエンス」という授業で、毎週上がってくる出席レポートに対し、AIがフィードバックする仕組みを導入しました。

500人ほど履修しているクラスで、教員やTAが一人ずつコメントを付けていくのは現実的ではない量でした。

そこで、AIが自動で『レポートのフィードバックをする』システムを導入することによって学びにどのような影響が出るか、についての検証を進めています。

授業は全7回構成のものが前期に2回行われます(つまり、合計1,000人が履修します)。先日前半の7回が終わったので、AIのフィードバックを受けた感想を集計してみたところ、以下のような結果が得られました。

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1. AIフィードバックの良かった点

  • 自分の理解度や不足している点を客観的に把握できた

  • 学びを深めるためのアドバイスがあり、学習意欲向上につながった

  • 授業内容の復習や振り返りに役立った

  • 自分の意見を肯定的に評価してくれるので、モチベーションが上がった

2. AIフィードバックの改善点

  • 文章が長く、読む気が起きないことがあった

  • 機械的で画一的な印象を受けることがあった

  • 細かいニュアンスの違いを理解してくれないことがあった

  • 具体性を求められすぎて、他のアドバイスが欲しかった

3. AIの可能性と限界

  • 教員の負担軽減や効率化に役立つ可能性がある

  • 大人数の授業でも一人一人にフィードバックできる

  • 感情や文脈の理解、細かなニュアンスの解釈に限界がある

  • 完全に教員の代替にはならないが、補助ツールとしては有用

4. 他の授業での活用への期待

  • 他の授業でもAIフィードバックを活用してほしい

  • レポートの書き方の改善などにも役立ててほしい

  • 小中学校など、対象者に応じた活用方法の検討が必要

  • AIの精度向上により、さらなる活用の可能性がある

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これらの結果を受け、次のステップとしてシステムを無料で公開し、こういったことに興味のある方(社会人向け研修等含む)に試して頂けたらと考えました。

本記事を読んでいただいた皆様へのご相談事項は以下の2点です。

  • まずは無料公開システムを試していただく

  • やってみてどうだったかの感想を送っていただく

こうして得られた示唆を共有いただくことで、教育現場にAIフィードバックの仕組みを導入することによる可能性/限界等が、明るみになってくるのではと考えています。

この例をはじめ、他にも各種AIによるフィードバックの検証は進めていますが、適用の現場は多種多様で、以下の点については検討/模索中です。

  • AIフィードバックはどんなシーンで活用できるのか

  • AIフィードバックによって、どんな影響があるのか

  • AIフィードバックを導入することにより、教え方/授業の構成などにどんな変化が見込めるのか

使っていただいた方の活用シーンを送っていただいたり、座談会などを開催することで、現場へのAI導入に関する知見を高め、多くの方に共有できればと考えております。

※ 本検証は、東京学芸大学先端教育人材育成推進機構の山下雅代先生、中田一朗太さん。東京学芸大学非常勤講師 / 東京学芸大こども未来研究所 / 東京理科大学大学院の中村謙斗先生。東京学芸大学教育AI研究プログラム / ㈱カナメプロジェクトの遠藤太一郎(本記事の筆者)が中心となって進めています。また、東京学芸大学教育インキュベーションセンター長​​の金子嘉宏先生には、多大なるご助力を頂いております。

無料公開するシステムについて

具体的なシステムの内容ですが、端的に表現すると、授業のレポートに関してAIがまとめてフィードバックを生成するというものです。

先述の「教育のためのデータサイエンス」授業のために作ったものをベースにしつつ、扱いやすいように簡易化を行いました。

Googleスプレッドシートを使って作成していますので、Googleアカウントさえあれば、誰でもお使いいただけます。

改造すれば、フィードバック以外の用途にも幅広く使えると思います。

使い方

なるべく簡単に操作いただけることを心がけて開発しました。まずは授業の情報を入力します。

C列の赤枠部分にレポートの内容を入れ、上部の[フィードバック生成]ボタンを押すと、AIによるフィードバックがまとめて自動生成されます。

AIのモデルは、「GPT-4o」と「Command-R+」の2つから選択が可能です。

Command-R+は非商用無料で、GPT4に準じた性能を持つモデルです。月間1,000件までという制約はありますが、非商用であればお金がかからないため、コストをかけずに活用できるようになっています。

※ 使用するモデルのAPIキーは取得をお願いします(ガイドを別途ご用意しています)
※ プロンプトも公開し、簡単にカスタマイズできるようにしてあります

「教育のためのデータサイエンス」の授業で使用する際は、AIリテラシー教育もセットで行いました。​​AIを授業で活用する際は、文部科学省の生成AIガイドラインや各自治体のガイドラインをご確認ください。また、OpenAIの規約では、直接の利用は13歳以上となっており、18歳未満は保護者の同意が必要となっています。フィードバックは児童・生徒に直接するのではなく、教員が参考のためにフィードバックに手を加えて活用するなど、ぜひ工夫してご利用ください。

AIからのフィードバック例

以下は、「教育のためのデータサイエンス」授業で実際に生成されたAIフィードバックの例になります。

GPT-4oからのフィードバック例

<学生の記述>
今回の授業は初めて習うことが多くて少し難しく感じましたが、なんとなく理解をすることができました。大数の法則・中心極限定理や区間推定の考え方などについて学ぶことで、平均のばらつきや不確定さについて学ぶことができました。エクセルと具体的な資料を使っていたのでわかりやすかったです。また、分散は数学で学んでいましたが不偏分散を学ぶのは初めてでとても興味深かったです。また、検定の考え方は統計学以外にも使えそうで非常にためになりました。

<AIフィードバック>
レポートを読んで、授業内容にしっかりと取り組んでいることが伝わってきました。特に、初めて学ぶ内容が多かったにもかかわらず、理解を深めようとする姿勢が素晴らしいです。エクセルや具体的な資料を活用して学びを進めた点も、実践的なアプローチで非常に良いと思います。

さらに具体的に学んだことを記述すると、理解がより深まるかもしれません。例えば、大数の法則や中心極限定理について、具体的にどのような内容を学んだのか、またそれがどのように役立つのかをもう少し詳しく書いてみると良いでしょう。大数の法則が「試行回数が増えると、平均値が真の値に近づく」という考え方であることや、中心極限定理が「標本平均の分布が正規分布に近づく」という内容であることを具体的に説明すると、理解が深まります。

また、点推定と不偏分散についても、具体的な例を挙げて説明すると良いでしょう。不偏分散が「母集団の分散を推定するために、標本分散を修正したもの」であることを具体的に書くと、他の人にもわかりやすくなります。

検定の考え方についても、どのような場面で使えるのか、具体的な例を挙げて説明すると、実際の応用がイメージしやすくなります。例えば、「新しい薬の効果を検証するために使える」といった具体例を挙げると、統計学の実用性がより明確になります。

次回の学習に向けて、授業資料をもう一度見直し、具体的な内容を再確認することをお勧めします。これにより、理解がさらに深まり、次のステップに進む準備が整うでしょう。引き続き、学びを楽しみながら進めていってください。あなたの努力が必ず成果に繋がると信じています。

<学生の記述>
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<AIフィードバック>
 レポートの提出お疲れ様でした。まず、授業に参加し、レポートを提出するという行動自体が素晴らしいです。学びを深めるための第一歩をしっかりと踏み出していますね。

今回のレポートでは、具体的な内容が記載されていないようです。授業で学んだことを具体的に書くことで、自分の理解を深めることができます。例えば、「グラフの目的・注意点について」学んだことを具体的に書くと、どのようなグラフがどのようなデータに適しているのか、またどのような点に注意すべきかが明確になります。

外れ値の扱いについても、具体的な例を挙げて説明すると理解が深まります。例えば、どのような状況で外れ値を無視するべきか、またどのような場合に外れ値が重要な情報を含んでいるのかを考えてみてください。

相関分析の注意点についても、擬似相関や外れ値の影響について具体的に書くことで、データの解釈がより正確になります。擬似相関の例や、外れ値が相関にどのような影響を与えるかを考えてみると良いでしょう。

周辺情報の重要性についても、データだけでなく、その背景や関連情報をどのように集め、解釈するかを具体的に書くと、データ分析の深みが増します。

次回は、授業で学んだ具体的な内容をレポートに反映させることで、さらに理解を深めることができるでしょう。授業資料を見直し、具体的なポイントを整理してみてください。これからも学びを深めていくことを楽しんでくださいね。応援しています!

Command R+からのフィードバック例

<学生の記述>
グラフは周りの人とのコミュニケーションツールになるが、そのうえで詐欺グラフのようにグラフのを使い方によって他の人に間違った考え方をさせることができてしまうので気を付けなくてはならない。目的にあったグラフを選ぶことが大切である。外れ値も計測ミスやデータの入力ミスは使用できないが、ほかの点での外れ値は問題解決の着眼点にもなりうる。相関分析の際には、必要となるデータの二つだけではなくほかにも分析に影響を及ぼすデータがないかをしっかりと確認するべきである。

<AIフィードバック>
あなたが提出してくれたレポートからは、データサイエンスにおけるグラフの役割と注意点について、しっかりと理解ができていることが伝わってきました。グラフがコミュニケーションのツールであるという捉え方は非常に重要です。グラフを効果的に使用することで、データをわかりやすく伝え、相手を説得することができます。そして、同時に、グラフが使い方を間違えると、人を誤った方向に導いてしまうという点にも気づいていますね。

そして、外れ値の扱い方についても理解ができていますね。外れ値をただ排除するのではなく、問題解決のヒントとして捉えることができるという点に言及している点は素晴らしいです。相関分析の注意点についても、他の変数の影響を考慮する必要があると理解できています。

そして、ここからがさらなる学びの提案です。今回のレポートでは、「周辺情報の重要性」について触れられていないようです。周辺情報とは、データそのものではなく、データを取り巻く情報や文脈のことを指します。データを解釈する際には、グラフの使い方や分析結果だけでなく、これらの周辺情報も考慮する必要があります。例えば、データの出典や収集方法、データが収集された時期や場所、データの定義や測定方法など、データそのものだけでなく、これらの情報も考慮して解釈する必要があります。これらの周辺情報を考慮せずにデータを解釈すると、誤った結論を導いてしまう可能性があります。

周辺情報の重要性について、さらに理解を深めるために、次のステップとして、さまざまなデータセットを探索し、グラフを作成しながら、そのデータセットに関する周辺情報を同時に収集してみましょう。データセットの出典や収集方法、データの定義などを調べながら、グラフを作成し、データを解釈してみると、周辺情報がどのようにデータの解釈に影響を与えるかを実感できるでしょう。

また、今回のレポートでは、グラフの種類や注意点について理解ができていることが伝わってきましたが、より具体的なグラフの例や、注意点をどのように実践で適用できるかなどの言及があると、より具体的な学びが伝わってくるでしょう。

データサイエンスの分野は非常に奥が深く、学べば学ぶほど新しい発見や気づきがあると思います。今回のレポートをきっかけに、さらにデータサイエンスのスキルを磨き、データから価値を引き出すことができるよう、一緒に学びを深めていきましょう!

使用方法

ここまで読んでいただき「使ってみたい!」と思われた方。ぜひ、以下のフォームからお申し込みください。メールでスプレッドシートとマニュアルのURLが送信されます。

https://kaname-prj.co.jp/event/questionnaire/2024/mailform/

スプレッドシートにアンケート用のリンクも入っております。
実際に試された方は、やってみてどうだったかに関して、ぜひご回答いただけますと幸です。

今後の展開

まだ未確定の要素は多いですが、概ね以下のようなことができたらいいなと考えています。

  • 本note等での状況報告

  • 実際に試された方などを含めた、オンライン座談会等のイベント実施

  • 一定の知見が溜まったら、レポート/論文等にして公開

  • AIフィードバック以外のテーマでの検証

フォームを送信いただいた方には、これらの情報を随時共有していく予定です。

実際にシステムを使うのは難しく、「情報だけ欲しい」という方もWelcomeですので、気軽にフォームを送信ください。

情報は登録頂いたメールアドレス宛に展開予定ですが、専用のLINEアカウントも作成しました。こちらでは、検証の情報共有に加え、教育AIに関する情報も(可能な範囲で)提供していきますので、ぜひこちらにもご参加ください。

スマホの方は、以下のリンクをクリックするとLINEが開きます。
https://lin.ee/Fc5cY28

PCの方は、以下のQRコードからご参加頂けます。

多くの方のご使用をお待ちしています!

また、できるだけ多くの方に使っていただくためにも、ぜひ拡散頂けたらありがたく思います。

フォームURL(再掲):
https://kaname-prj.co.jp/event/questionnaire/2024/mailform/

↑ GPT搭載 教育用AIフィードバックシステム(ツール名:教育用AIフィードバック with KanameEngine)を使って頂ける方は、こちらのフォームを送信お願いします


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