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ここで死にたいと思えるか

かねて、考えていたことがある。
理想の街とは何か。永住したい街とは何だろう。今思うに、その街で死にたいと思えるかどうかなのではないだろうか。


修羅の地に越して来て一年が経とうとしている。
住み始めてだいぶ序盤の方で、ここはもう嫌だと思った。だって基本臭いんだもの。特に夜。
排気ガスの匂いはまだ分かるのだけれど、何をどうしたら夜に髪が焼き焦げたような匂いや、生ゴミの腐臭や湿った土埃の嫌な匂いが町を満たすのだろうか。臭くて散歩すらできない。夜も霞んだ色してる。灰をまぶしたような空。歩いてて楽しくない。

あと、治安が悪いと聞いてワクワクしてたのに、人の性格とか意地が悪いだけなのも感心できない。殴り合いとか、発砲事件とか、不発手榴弾発見!とか、そういうのを求めていたの。
それは私の意地も悪いか。

絶対道を譲らない車とか、バスの座席を平気で2席占領するとか、財布落として戻ってきたら札全部いかれてるとか、夜歩いてたらカメラ持ってる男に粘着されるとか、駅前で座ってたら宗教の勧誘受けるとか。しょーもないのばっかり。

故にどんなに辛い思いをしてもここで自殺を考えたことはない。そもそも過去の時点で希死念慮を克服したというのもあったが、死に場所くらい選ばせての気持ちが強いので死にたくない。

多分ここで死んだら身ぐるみ引き剥がされた上で身体にスプレーアート描かれて爆竹投げつけられると思う。そういう恐怖がある。


前住んでたところは素敵でした。
朝は太陽が力強く起こしてくれた。夜は月が優しく眠りを見守ってくれた。
毎朝ラジオ体操をしていたじいさんは元気だろうか。公園でコーヒーを飲んでいると、同好の士だといって缶コーヒーを奢ってくれたおっちゃんも元気だろうか。バイクで転んだ私に絆創膏をくれたガキどもは中学生になる頃だろうか。
お孫さんとボール遊びをしていたおばあちゃん、
昼下がりに心配になるほどの軽装でランニングをしていたヨボヨボのじいさん、近所の猫好きのおばちゃん。夜にでっけえ黒犬の散歩をする夫婦。スーパーでお利口さんにしてたゴォルデンレトリヴァァ
みんな変わりないだろうか。

透き通った夜風、深い夜の青、避難階段から見えた景色はあのままだろうか?

あそここそ、私の死に場所なのかもしれない。

やることやったらあの街に帰ろうか。



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