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若手とベテランの融合がもたらすものとは:🇳🇴ノルウェー(チーム ルルヴィク)

今回は、2023年世界選手権で銀メダルに輝いたノルウェー代表🇳🇴チーム ルルヴィクについて、ここまでの経緯を中心にまとめてみました。

偉大な先輩の後を継いだルルヴィク

このチームのサード/スキップであるマリアンヌ・ルルヴィク選手(Marianne Rørvik)は、若い頃から期待されていた選手だったようです。何しろ13歳の頃から世界ジュニア選手権に出場しています。初めて出場したのが1997年の軽井沢大会。その時はリードでしたが、翌年はスキップを務めています。その後は主にサードとして、2005年まで9年連続で世界ジュニア選手権に出場しました。

当時の🇳🇴ノルウェーには、D. ノルドビー選手(Dordi Nordby)という実力のあるスキップがいました。1989年に2回目の世界選手権出場を果たすと、2006年までの18回の大会のうち17回にスキップとして出場。その間、優勝🥇2回、準優勝🥈3回、3位🥉6回と、11枚のメダルを獲得しています。2019年には世界カーリング殿堂入りも果たした選手です。ルルヴィク選手は2002年にオルタネイトとしてこのチームに加入します。

ルルヴィク選手の選手キャリアで、最も成果が出たのがこの時期です。ジュニアの選手としては、2003年冬季ユニバーシアードで🥉3位、2004年には世界ジュニア選手権で🥇優勝。2005年にはセカンドとしてトリノ五輪にも出場(4位)。その後、2006年にはサードとなります。

🇳🇴ノルウェーが2006年欧州選手権でBディビジョンに降格すると、2008年にはノルドビー選手が引退。スキップを引き継いだルルヴィク選手が2008年にBディビジョン優勝に導き、2009年からAディビジョンに復帰し、世界選手権の舞台にも戻ってきます。

その後、パートナーであり、チーム ウルスル(Team Thomas Ulsurd)のサードを長く務めたネルゴル選手(Toger Nergård)との間に2人の子ども(2010年、2013年)を授かり、代表チームから一時離れることになります。


辛い時期を支えたスカスリエン

ルルヴィク選手がスキップを引き継いだ頃から代表に定着し始めたのが、今大会フォースを務めるクリスティン・スカスリエン選手(Kristin Skaslien)です。ジュニア世代の頃は、スキップとしても3回の世界ジュニア選手権に出場していたスカスリエン選手ですが、ノルウェー代表では2008年から主にリードとして出場しました。

ただ、この時期以降、🇳🇴ノルウェー代表女子4人制は、欧州選手権でも世界選手権でも良い結果が残せていません。欧州選手権では、2011年、2013年、2016年、2019年にBディビジョン降格を経験しています。ルルヴィク選手は2013年のスキップ、スカスリエン選手は2014〜2017年のスキップとして欧州選手権に出場しますが、成績は上向きませんでした。欧州選手権での不振が響き、2010年代でノルウェー代表が世界選手権に出場できたのは、2010年と2011年と2015年の3回だけです。

スカスリエン選手は、夫であるネドレゴッテン選手(Magnus Nedregotten)とのミックスダブルスでもよく知られています。2013年から世界ミックスダブルス選手権に出場するようになり、現在まで出場した7大会すべて1桁順位で、準優勝🥈(2021年)と3位🥉(2015年)が1回ずつあります。また、オリンピックでも平昌🥉(2018年)と北京🥈(2022年)でメダルを獲得しています。ただ、この成功は、すぐには4人制の成績につながらなかったようです。


若手チームの台頭、ベテランの共闘

そんなノルウェーの女子4人制カーリングの勢力図が少し変わってきたのは、2018年頃だったようです。2009年から2017年までに開催された🇳🇴女子ノルウェー選手権では、ルルヴィク選手がスキップを務めるチームと、スカスリエン選手がスキップを務めるチームの、どちらかが優勝していました。

2018年に、これに終止符を打つチームが現れます。それが今大会リードを務めるマルティン・ルンニン選手(Martine Rønning)セカンドを務めるミル・ハスレヴ・ノルドビー選手(Mille Haslev Nordbye)を擁するジュニア代表チームで、今大会オルタネイトに登録されているマイア・ラムスフィエル選手(Maia Ramsfjell)がスキップでした。

2017年から世界ジュニアB選手権のノルウェー代表に選ばれるようになり、2018年に昇格させ、2020年まで世界ジュニア選手権で3年間戦いました(最高4位)。そして、それと並行するように、2018年から3年間、女子ノルウェー選手権を3連覇しました。ノルウェー選手権で優勝したため、国内の世界ジュニア選手権代表決定戦は行われず、翌年のジュニア代表に選ばれたそうです。

一方で、2018年には、ルルヴィク選手がサード/スキップとしてノルウェー代表に復帰し、フォースのスカスリエン選手と代表チームで組むことになりました。基本的に、どちらか片方が選ばれることが多かったからか、一緒に代表のユニフォームを着るのは、2009-10シーズン以来でした。2020年のノルウェー選手権では、国内の大会にも同じチームで参戦し、準優勝となっています。

最終的には、2020年にジュニアの年齢制限を超えた選手が出てきた段階で、ジュニア代表チームは解体。ルンニン選手とノルドビー選手は、スキップとしてルルヴィク選手を、フォースとしてスカスリエン選手を迎え、現在の4人のチームになりました。

このように若い選手が出てきたことでチームの再編が起こり、今までは対戦相手だったベテラン選手が同じチームで戦うようになりました。

一緒に戦うか、競い合うか

ただ、すぐに結果が出た訳ではありません。今回の2023年世界選手権も、2021年に欧州選手権Bディビジョン優勝したことで2022年をAディビジョンで迎え、そこを残留ギリギリの8位で耐えたことで出場権を得たものです。それでも、2023年入ってから出場した一般の大会は、準優勝、優勝と結果が出ており、良い状態で世界選手権に臨めていそうです。

ノルウェー国内には、良い若手選手がそろい始めているように見えます。2022年のノルウェー選手権を制したのは、チームラムスフィエルの次の世代のジュニア代表チームであるエリン・メスロー選手(Erin Mesloe)のチームで、2022年世界ジュニアでは4位、年齢制限を超えたメスロー選手以外の選手で臨んだ2023年も3位と好成績をあげています。2023年ノルウェー選手権2位に入ったスカガ選手(Ingvild Skaga)のチームもあります。

ミックスダブルスでも、マイア・ラムスフィエル選手は、兄とのミックスダブルスで世界ミックスダブルス選手権4位など、好成績を残しています。さらに、ルンニン/ブレンドン ペアは、スカスリエン/ネドレゴッテン ペアやラムスフィエル/ラムスフィエル ペアとのポイント獲得争いを制して、2023年世界ミックスダブルス選手権の出場権を獲得したばかりです。 

今季上位3大会の合計ポイントで争われた世界MDノルウェー代表争い

D.ノルドビーのような絶対的エースがいない今、こういう選手たちを同じチームで一緒に戦わせるのか、ライバルとして別のチームで切磋琢磨させるのか、どちらが良いのでしょうか。ルルヴィク選手とスカスリエン選手の場合は、若手を含めて1チームにまとまることを選びました。今後、若い選手がどう育つのか、そこにどう代表の座を受け渡していくのか、はたまたベテランが代表の座を譲らないのか。今後の選手構成にも注目の女子4人制ノルウェー代表チームです。


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