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新たな旅先で対戦したのは、初対戦の新星か?いつもの強敵か?〜24-25第7週振り返り

第7週の日本チームは、男子2チーム、女子3チーム、ミックスダブルス(MD)1ペアが海外の大会に参加していました。この週の大会についても、日本のチームを中心に振り返ってみたいと思います。

ちなみに、トップ画像は、ある映画に出ていた女優ペネロペ・クルスさんのイラストのようですが、明るい色のテンガロンハットを探していたら、偶然出会いました。もちろん、今週行われたあの大会を意識したものです。

カナダでは出会えない対戦相手:🇪🇪タリンMDインターナショナル

🇯🇵小穴/青木は3勝2敗で予選敗退

🇯🇵小穴/青木の今季初戦は、エストニアで開かれた🇪🇪タリン・ミックスダブルス・インターナショナルでした。今年で9回目のようですが、毎年のように欧州のMD強豪がシーズン序盤に集結している大会で、昨季は欧州で開かれたMDの大会の中でSFM(大会の難易度を表す指標)が最も高かった大会(5.0)でもあります。「なぜエストニアに?」と思う人もいるでしょうが、私に言わせれば、強い相手と対戦できるし、ポイントも稼げるし、旅行先としてもちょっと楽しそうだし…渡航費用はカナダ国内で遠征を済ませるよりも高いでしょうが、世界ランキング4位のペアの大会選びとしては妥当なものだと思っていました。そして、世界ランキング4位でも大会の第3シードにしかならない(世界ランキング1位と2位も参加しているから)あたりに、この大会のレベルの高さの一端が表れています。また、18チーム36名のうち、15名が世界MD選手権の経験者で、7名はそこでメダルも獲得しています。“わざわざエストニアまで行く価値のある大会”と言えるでしょう。

試合は、大会初戦でノルウェーの若手ペア🇳🇴シャーラン/リルボ (Kjærland/Lillebø)との接戦に勝利し、2戦目で対戦したのが🇳🇴ルンニン/ブレンドゥン (Rønning/Brænden)。世界ランキング7位で2023世界MD銅メダルのこのペアが一番の難敵だと思っていましたが、こちらも接戦を制して、2連勝と幸先の良い立ち上がりを切ります。ただ、現地土曜日の3連戦では、ピタッと思い通りに投げるのに苦労しているようでした。大会3試合目では、まだジュニア世代なのに世界MD出場2回の実績を持つ🇨🇿ゼリングロヴァー/ハビチョフスキー (Zelingrová/Chabičovský)に敗れると、昨季この会場の別の大会で優勝したこともある🇩🇪アッベス/ハーシュ (Abbes/Harsch)にも敗戦。最終戦には勝ったものの、3勝2敗のチーム間の順位決定方法で7位に入れず、予選敗退となりました。

優勝は🇨🇿ゼリングロヴァー/ハビチョフスキー

🇯🇵小穴/青木に勝った2組のペアはその勢いのままにプレーオフに進出し、最終的にMD世界ランキングの1位の🇪🇪ペアにも、2位の🇳🇴ペアにも、4位の🇯🇵ペアにも、7位の🇳🇴ペアにも直接対決で勝利して優勝したのは、🇨🇿ゼリングロヴァー/ハビチョフスキー ペアでした。特にV.ハビチョフスキー選手は、長身から低い姿勢で投げるショットで試合を有利に進めていた印象で、素晴らしい活躍だったと思います。🇨🇿チェコ国内でのこの2人は、それぞれ4人制のチームでのジュニア代表で、4人制のチームメイトと共にミックス4の代表にもなっています。一般の男子チェコ選手権、女子チェコ選手権、チェコMD選手権でも、昨季はすべて準優勝で、間違いなく将来を期待されていることでしょう。

将来有望な若手ペアが優勝した一方で、世界ランキング1位の🇪🇪カルドベー/リル (Kaldvee/Lill)は🥉3位、世界2位の🇳🇴スカスリエン/ネドレゴッテン (Skaslien/Nedregotten)は🥈2位と、しっかりと上位を確保していたのも印象的でしたし、同じチェコの五輪出場経験ペア🇨🇿パウロヴァー/パウル (Paulová/Paul)も4位に入っており、彼らが健在なうちは、チェコMD代表の座も簡単には手に入らなさそうです。(奥様のZ.パウロヴァーさんは、今季前半、4人制代表の代理スキップまで務めるようですし…)

欧州開催の大会の特徴を考える

日本のチームが欧州に遠征することは珍しいですが、欧州には欧州での大会にしか出場しないチームも多くあります。優勝したチェコのペアについても、今季カナダに行く可能性があるのは、MDやジュニアMDで世界選手権(どちらも今年は🇨🇦カナダ開催)に出場した場合だけのようです。🇳🇴ノルウェーの若いチームも今回3チーム出ていましたが、カナダの大会に出ているのは、強化指定されている世界7位のペアだけです。そういうカナダでは対戦できない選手と対戦することもできたことは、1つの収穫なのかもしれません。

そして、欧州の大会では、多くの国からチームが集まります。例えば、EU加盟国の総面積(約400万㎢)は、アラスカとハワイを除いたアメリカの面積(約800万㎢)のおよそ半分しかないものの、EUではその面積が27の国に分かれています。そして、そこから世界選手権に選ばれる代表チームの数は、🇺🇸アメリカからは1チームですが、欧州からは4人制で最大8チーム、前回の世界MD選手権では20ペアのうち9ペアがEU加盟国のペアでした。この大会での世界選手権経験ペアの多さには上で触れましたが、構造的に各国の代表候補が集まって切磋琢磨する場が生まれやすいと言えるでしょう。そして、いろいろな国の代表候補と対戦した経験があることは、日本から参加した🇯🇵小穴/青木にとっても、今後の世界MD選手権などで生きるかもしれません。選手目線の話は、きっとそのうち小穴選手のNote拝見できると思うので、そちらを楽しみにしたいと思います。

高い壁は、超えるまで高いままでいて:🇨🇦ショーティー・ジェンキンス・クラシック

🇯🇵ロコ・ソラーレはベスト4、🇯🇵フォルティウスは2勝3敗で予選敗退

話題をカナダに移すと、この週に特に注目を集めたのは、オンタリオ州コーンウォールで開催された 🇨🇦ショーティー・ジェンキンス・クラシックだと言えるでしょう。女子世界ランキングTop3を含む豪華な出場チームに混ざって、日本からは🇯🇵ロコ・ソラーレと🇯🇵フォルティウスが出場し、🇯🇵ロコ・ソラーレは予選1位通過で最終的にはベスト4でしたが、🇯🇵フォルティウスは2勝3敗で予選敗退となりました。予選で🇨🇭ティリンツォーニとこの2チームが同じ組になった時点で、直接対決もある両チームがともに予選通過するのは簡単ではないと思いましたが、明暗の別れる結果となりました。

グランドスラムの常連である🇯🇵ロコ・ソラーレは、カナダ全土で試合をしているイメージがありますが、私の調べたところによれば、マニトバ州やオンタリオ州を含め、カナダの東半分でグランドスラム以外の一般のツアー大会に出場した経験はほぼないようです(追記:マニトバ州の大会には2018年10月に出場していました)。そうであれば、過去にピンクのカウボーイハットをかぶった選手たちに見覚えがないのも、納得がいきます。また、そのせいで東部を中心に活動する“グランドスラムまでは届かない強豪”とは今までほとんど対戦の機会がなく、今回対戦したノバスコシア州の🇨🇦ブラック、プレーオフに進出したケベック州の🇨🇦サン=ジョルジュなどとは、これまで対戦がありませんでした。今週はオンタリオ州で大会に出場したが、続いて、来週はマニトバ州で大会に参加する予定です。今年からやり方を変えた理由は、“たくさん大会に出場する”ためには移動をいとわないということなのか、他に何か意図があるのか…。ただ、少なくとも去年の同時期に比べれば、はるかにやりたいことができている印象で、観戦する側としても楽しみが多いシーズンになりそうです。

一方で、予選敗退となった🇯🇵フォルティウスも、格下相手に取りこぼした印象の試合はありませんでしたが、このぐらい高いSFMの大会では、当然のようにランキングが自分たちよりも上のチームもありますし、相手が先に失敗してくれることも少ないのでしょう。競技から一時的に離れていた吉村選手を含めたチームからは、まだ多少のブランクがあるようにも感じられてしまいました。それもよく考えれば普通のことですし、チームを仕上げるのに、もう少し時間をかけても良いのかなとは思いますが…グランドスラムの舞台にも戻りたいでしょうし、クラウドファンディングの成否次第では、カナダで好きなだけ大会に出る訳にもいかなくなりそうで、なかなか難しい状況に置かれている感じがしています。

男子は🇨🇭シュヴァラーの2週連続優勝、女子の優勝は最終エンドでの逆転で🇨🇦ホーマン

女子(SFM6.5)の優勝は🇨🇦ホーマンで、決勝はそろそろ見飽きるほど頻発している…のに、いつも熱戦になる🇨🇦ホーマン(Homan)vs🇨🇭ティリンツォーニ(Tirinzoni)の対戦でした。第2エンドの1点スチールから🇨🇭ティリンツォーニが押し気味で試合を進めていましたが、🇨🇦ホーマンもアングルランバックなどを決めて、離されずについていきます。最終的には、第8エンドを1点リード後攻で迎えた🇨🇭ティリンツォーニの最後のドローが短くなって、🇨🇦2点スチールによる劇的な幕切れでした。この2チームの決勝での対戦で🇨🇭ティリンツォーニが勝ったのは、まだ以前のメンバーで活動していた9年前(2015年)のツアー・チャレンジが最後で、それ以降は🇨🇦ホーマンの6連勝(2019年カナディアン・オープン、2021年チャンピオンズ・カップ、2023年マスターズ、2024年カナディアン・オープン、2024年女子世界選手権、2024年ショーティー・ジェンキンス・クラシック)になっています。次のグランドスラムの決勝でも当たりそうなほど、最近の成績が突出している2チームですが、こんなに一方的とは思っていませんでした。

🇨🇭ティリンツォーニは、予選最終戦から🇯🇵ロコ・ソラーレ(負け)、🇰🇷キム・ウンジ(勝ち)、🇯🇵ロコ・ソラーレ(勝ち)というグランドスラム常連3連戦を経て勝ち上がってきましたが、🇨🇦ホーマンのここまでの対戦相手では、初戦の🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿モリソン以来、最近のグランドスラム(Tier1)出場チームはなし。トップレベルのカーリングに目が慣れているのは🇨🇭ティリンツォーニの方かとも思いましたが、緊張感あふれる試合が続いた後は心身の疲労もあったことでしょう。

男子(SFM7.0)は、🇨🇭Y.シュヴァラー(Y. Schwaller)が予選からの8連勝で2週連続の優勝。女子同様、優勝した🇨🇭Y.シュヴァラーはグランドスラム圏外のチームとの対戦でプレーオフを勝ち上がって来ましたが、決勝の相手となった🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿󠁿󠁴󠁿󠁴マウアットのプレーオフは、🇨🇦ダンストン、🇮🇹レトルナス、🇨🇭Y.シュヴァラーというグランドスラムのプレーオフのような相手との対戦でした。準決勝・決勝と試合の重要な局面でメジャー(肉眼で判断できない距離の差を測るための計測器)が登場しましたが、“力強さと繊細さ”を同時に求められる男子カーリングらしい場面だったようにも思えました。

その他の大会

🇩🇪ドイツ男子は黄金世代の到来か?🇯🇵TM軽井沢がベスト4、🇯🇵ロコ・ドラーゴはベスト8:🇨🇦アルバータ・カーリングシリーズ・メジャー(男子)

今週は男子の大会が行われた🇨🇦アルバータ・カーリングシリーズ・メジャーでは、🇩🇪トツェック (Totzek) が優勝。🇯🇵TM軽井沢と🇯🇵ロコ・ドラーゴは、ともに準優勝だった🇨🇦カルソフ (Kalthoff)に敗れて、それぞれベスト4、ベスト8でした。🇯🇵TM軽井沢の準決勝は後から見ましたが、かなりもどかしい感じの負け方で、ほとんどのエンドでセットアップは優勢に進めつつも、最後の1手がうまく決まらなかった感じに見えました。確かに相手のランバックやダブル/トリプルテイクアウトには見事なショットもありましたが、第2エンドに3点取れなかったのも、第4エンドに2点取られたのも、第5エンドが1点止まりだったのも、あと一歩という感じでしたし、特に最後のエンドは“どうにかならなかったかなぁ”と、モヤモヤしてしてしまいましたし、きっと選手も悔しかったんじゃないかなぁと思いながら、試合後の表情を見ていました。(完敗と僅差での負けは、どちらの方が悔しいものなのでしょうね…)

🇩🇪ドイツと言えば、最近まではD.イェンチ選手率いる女子代表チームの方が目立っていた印象です。男子ドイツ代表は、2007年以降男子世界選手権でのプレーオフ進出ができていませんでしたが、前回🇩🇪ムスカテヴィッツ (Muskatewitz)が5位と躍進。4人制男子代表を争う🇩🇪トツェックとしても負けていられないところですが、🇩🇪K.ハーシュ選手(K.Harsch)は当面MDが中心になりそうで、それぞれの重点種目がハッキリして、良い競争が続いて行きそうな雰囲気を感じます。(S.トツェック選手は、先週🇨🇿プラハで行われたMDの大会で奥様と一緒に優勝してましたけどね…)

画面越しでも感じた熱量の差:🇸🇪欧州選手権スウェーデン女子代表決定戦

女子カーリングの世界では、最も高いレベルでの代表争いが行われる国の1つである🇸🇪スウェーデンですが、今回の欧州選手権女子代表決定戦は🇸🇪ハッセルボリ(Hasselborg)の4勝0敗であっさり決まってしまいました。🇸🇪ヴラノー(Wranå)としては、初戦(5-10)を最終エンド同点後攻から落とし、2戦目(3-4)はチームをいつも救って来たフォースの1投がスルーになる場面が散見され、3戦目(6-8)は前半5-1から逆転を許し、最終戦(2-7)の時点では、かなり精神的にキツそうに見えました。

個人的に気になったのは、🇸🇪A.ハッセルボリ選手がいつものように、ときにお行儀が悪いと言われるぐらい(ブラシ叩きつけたり…)に熱量を全面に出して戦っていたのに比べ、自分の投げたドローを追いかけながら、目を見開いて後ろからスイーパーに大声でコールする🇸🇪I.ヴラノー選手の姿は、ほとんど見られなかったことです。そういう行為の良し悪しは別にしても、遠くから首をかしげたり、天を見上げたり、しゃがみ込んだり、あんまり“らしくない”感じでした。4連敗したとはいえ、🇸🇪ハッセルボリ相手にこれだけの接戦を繰り返し演じられるチームは世界を見ても決して多くありません。一度切り替えて、復調した姿をぜひ見せてほしいと思います。(世界選手権代表争いは来週も続きますし…)

🇯🇵札幌国際大(三浦)は“ジュニアでは向かうところ敵なし?”:🇨🇦MJCT モリス・フォール・クラシック

マニトバ州モリスで行われたジュニアの大会「MJCT モリス・フォール・クラシック」では、🇯🇵札幌国際大チーム三浦が去年に続いて優勝(写真は2枚目)。出場チームの中には、前回のカナダジュニア選手権マニトバ州代表2チームの後継チームがあり、決勝でそのうちの1つである🇨🇦ダンダス(Dundas)とのしびれる接戦を勝ち切って、見事優勝を手にしました。前々回の世界ジュニアの準優勝チームだと思えば、そんなに驚くことではないのかもしれませんが、マニトバ州にはあと2週間滞在するそうなので、来週行われる一般の大会でどのぐらい活躍できるのか、楽しみにしています。

第7週終了時点でのグランドスラム第2戦出場権争い

女子:とりあえず一度🇰🇷ハ・スンヨンの上に行きたい

第7週終了時点でのカナディアン・オープン出場権争い(女子)

独自で計算しているグランドスラム第2戦「カナディアン・オープン」の出場権争いですが、今週女子でランキングを上げたのは🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿モリソン(Morrison)でした。ただし、アルバータ州での開催であることを考えると、地元チームである🇨🇦スカーリク(Skrlik)がここまでランキングを上げたことで、スポンサー枠で出場する可能性が高まったと言えそうで、他のチームは15位以上を目指すことになりそうです。日本の各チームには、今週の大会と「ツアー・チャレンジ Tier 2」が残っている状況です。SFMを計算してみた感じだと、🇯🇵フォルティウスは今週の大会で決勝進出すれば、暫定15位まで順位を上げられそうです。また、ポイントを上乗せするには、🇯🇵フォルティウスと🇯🇵北海道銀行はベスト4以上、🇯🇵中部電力は決勝進出以上の成績が必要になりそうです。

ただ、第10週の「ツアー・チャレンジ Tier 2」(現時点では、優勝で45p、ベスト4でも25.5p)で上位進出すれば、最後の週で割とどうにでもなる差とも言えます。Tier 1出場の🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿モリソンやアメリカ勢よりも、Tier 2の方がポイントを獲得しやすいでしょうし。

男子:近そうで遠い世界ランキング15位

第7週終了時点でのカナディアン・オープン出場権争い(男子)

男子の方は、🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿ワデル(Waddell)が16位まで順位を上げていますが、こちらも地元アルバータ州の🇨🇦スルチンスキー(Sluchinski)が22位にいる状態では、15位以上を目指したいところです。ただ、その場合にボーダーとなりそうなのは、やはり🇩🇪ムスカテヴィッツでしょう。あとは、女子と同様に、第10週の「ツアー・チャレンジ Tier 2」(現時点では、優勝で41.25p、ベスト4でも23.375p)次第な部分が大きいとは思います。🇯🇵TM軽井沢は、残り2大会で両方ベスト4以上に入るぐらいの成績が必要で、決して簡単ではありませんが、前回のTier 2では準優勝している訳ですし、可能性は十分にあると思います。

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