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【プラットフォーム連携】作品は単体ではなく「世界観」で勝つ

「映画」は完成作品だけではなく、プラットフォームを駆使したその“世界観”で表現する時代へ。このトピックでは、「映画本編のために必要な“その他”の創作活動」を、知ることができる。自分の作品だけを創って完成したと想いこんでいるアーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 王道は覆されていく 』

至って一般的な話である。
舞台芸術は映画に地位を譲り、映画はテレビに、テレビはネットへと。その要因はいつも“テクノロジー”そして、進化するのは「プラットフォーム」だった。

世界のインフラと常識が覆されたいまアーティストは、“完成作品”を核とした「作品世界観」を表現する必要がある。SNSを初めとするプラットフォームを駆使して、作品を取り巻くテーマを具現化する時代だ。

ただ、
ひとことに“プラットフォーム”といってもそれぞれには機能と特徴がありまた、万能なツールは存在せず、増殖を続けながらなお“統合”されていないことから混迷は深まるばかり。毎週出現する新たなツールとプラットフォームを理解するための情報アップデートを続けていてもしかし、手に入るのは“技術”ばかりで、アーティストがたどり着けるのは極論、器用な無能領域に過ぎない。

より大きな視点で“全体”を把握し、総体としてのプラットフォームを掌握しなければ、永久に追いつけない状況にあることは明白なのだ。より大きな視点で全体を把握することができる場所が、ある。「過去」だ。基本的にアップデートは行われず、一般的な持続的価値を有していながら、奪い合いは無い。

「歴史」を飲み込め。
アーティストの作品には、街を、国を、文化を、歴史を包括する力がある。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:“イタリア文化のNETFLIX”と呼ばれる新しいストリーミング プラットフォームが欧州全域で始動、来年には米国で展開へ

イタリアのアート&ミュージック・イベント・ストリーマー「ITsArt」が欧米での展開を開始、来年には米国で展開されることになった。

文化省の委託を受け、イタリア文化へのアクセスを提供するこの広告付きトランザクション型VODサービスは、イタリアの文化機関がそれぞれバラバラな形態のデジタル配信で対応しようとしていたパンデミック期に考案された。

このサービスでは、映画だけでなく、バーチャルモニュメントやミュージアムツアー、ライブオペラ、ポップミュージック、ダンス、演劇などのコンテンツを提供している。NETFLIXとは異なり、「ITsArt」への登録は無料。

このプラットフォームは、Stage(舞台)、Places(場所)、Story(物語)という3つのセクションからなる。「デジタル配信技術とイタリアの豊富な文化コンテンツを組み合わせて、芸術、文化の最高の財産を提供するという、ユニークなモデルです。現在、約100のイタリアの文化団体を構成する素晴らしいブランドすべてとの契約作業に忙しくしています。」“ブランド”には、多数の国際的に著名なアーティストも含まれているという。

「 ITsArtは現在1,000以上のイベントやショーを提供していますが、独占ライセンスはすべてレベニューシェア方式です。」 ITsArtはプラットフォームの視聴者データの提供を拒否したうえで、2022年には米国での展開を始動すると宣言した。- AUGUST 19, 2021 VARIETY -

『 ニュースのよみかた: 』

ストリーミング戦国時代に、“イタリア文化省”支援の欧州製プラットフォームが北米を照準、という記事。

あまり代わり映えしなくなり始めているコンテンツ合戦はそれぞれの「オリジナル作品」で価値に差をつける方針が定着したかと想いきや、「芸術文化」という、原価無しの“枯れない人気IP(intellectual property:知的財産)”を総取りした化け物ストリーミングが始動したわけだ。

本事業においてブランドやIP.、著名なアーティストとの契約は“レベニューシェア方式(成功報酬型)”であり、初期費用を抑えつつ企画開発を、コントロールしやすい。つまり“実行力”が高まることで、実現率が上がる。文化省の後ろ盾も機能し、成功へのシナジーが自在に好転しているといえる。

事業モデルからシステムまでまるごと、日本にも有効である。さて。

『 完成作品はいま「作品世界」の核となる 』

アーティストが完成作品だけを創っている時代は、終わった。「過去」や「歴史」を後ろ盾として、自らの世界観を構築していこう。SNSを初めとするプラットフォームそれぞれの特性を駆使することで、創造しうる限りのいかなる表現もが可能になっている現代なのだ。

完成作品を核としたアーティストのイマジネーション限定解除な創作活動はあらゆるプラットフォームを介して文字通りの、「作品世界」となる。アーティストはとうとう作品だけではなく、作品世界の創造者になるべき時代に立った。臆することはない。気付いたなら、学べばいい。あなたの周りには必ず、そのプラットフォームのスペシャリストが存在している。

地球では、たった3人を介して全人類が繋がっている。

『 作品-世界-地図 』

ハリウッドを脅かしていたシリコンバレーは巨大化の弊害による“大回り”に足を引かれて、時代のカーブを曲がり損ねた。ストリーミングの出現はコンテンツ産業の常識を刷新し映画は、「完成作品以上の役割」を担うこととなった。アーティストたちはそれまでの活動範囲を越えて、明確な近未来へと向かう。

映画の「創る過程」を露出し、その変化を「SNS」でテーマ共有し、「コミュニティ」を形成しながらその規模を拡大する必要がある。「スピンオフ短編」や「メイキング系ドキュメンタリー番組」あり派生する「NFT作品」ありそれらすべてを網羅する、「作品世界観」を形成することが求められる。その中央にある、極めて高密度で強烈な重力をもつ質量こそが、「映画」でありそのクラスタを、「作品世界」という。

“企画開発”という創作活動の始動はその前段階に、「作品世界地図」を作成するプロセスが必要になったわけだ。あなたの“完成作品”を核とした地図は、描けているだろうか。

『 編集後記:』

「ミケランジェロは、センスがある。」
という記述をみつけた。学生時代に使っていた自分のMOLESKINEを処分しようとした時のことだ。書いた記憶が無いが、実は今でもそう想っている。世界の名だたる巨匠たちの新作を鑑賞していても気付けば、「(上手くなったな。)」などと想っている。

やはり今のうちに、過去の“物理”を徹底的に処分しておいた方が善いと想った。書き残した覚えがないのが、実にやばい。

過去と比して今を計り現在を積んで未来を描く、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記