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キナリ読書フェス(期限切れ) ②

ご存知かとは思いますが『銀河鉄道の夜』は未完成かも知れない作品で、「未完の大作」なんて呼ぶ研究家も多いようです。

没後に発見された草稿から編集されていて、初稿から三度も改稿された跡があり、現在読まれているのはいわゆる「第4稿」になるそうです。

「第3稿」から「第4稿」の間には内容に大きな変化が見られ、また賢治がそれを「最終稿」とした訳でもないので、ご存命されていたら改稿が続いた可能性は十分考えられます。読者はもちろん作者にもまだ結末(?)が分かっていないかも知れない作品であるわけです。

逆に言えば、そのおかげで後世の読者や研究家たちに様々な想像や解釈の余地が生まれたわけなので未完で良かったのかも知れません。でも完成形があったとしたら、やはりそちらも読んでみたいものですね。



ここからは私の思いつきです。

「銀河鉄道の夜」はやはりまだ未完であり、作者の脳裏に浮かんだ様々なエピソードを並べていた段階で、病による自分の死期が見えていた賢治の死生感や、亡くなった妹への思いなどが反映されながら、物語としてまとまっていく過程で絶筆となってしまったのではないかと思います。

宮沢賢治には、天才にありがちな作品が天から降りてくるタイプという勝手なイメージを持っています。実際に自然の中から創作エネルギーを得るべく、手帳やペンを首にぶら下げながら戸外をウロウロしていたそうです。知らない人が見たら完全にアレな人です。

また「共感覚」の持ち主であったとも言われています。共感覚とは一つの感覚から複数の感覚を感じる能力で、色から音が聞こえるとか匂いに色が見えるなど、いかにも芸術家と言われる人たちが持っていそうな感性のことです。一般人には理解し難い感覚ですが、実はみんな3歳くらいまでは持っているものらしいので、共感覚から生み出された作品に対し全く理解できないわけではなく、「よく分からんけどなんか凄そうだな…」なんて感じたりするそうです。

(ピカソや岡本太郎さんの作品の凄さがイマイチ分からんけど…でも…これは……、みたいな感じ? 竈門炭治郎の嗅覚もその一種…いや違うか。)

なので、天から降りてきたイメージに共感覚という特殊フィルターがかかった上、農学部特待生であり法華経の熱心な信者でもあった賢治の科学的知識と宗教観がミックスされちゃったりしているので、常人がそのまま読むと「はて……」となるのも当然と思います。

岸田奈美さんでさえ「読んだとき、よくわからなかった」とおっしゃるくらいなので、私のような凡人にはなおさらなわけです。

さて、先にも触れましたが、この創作の動機となったのは大切な妹や友人の死、忍び寄る自身の死ではないかと言われてます。死んでしまった妹たちは何処へ行ったのか?自らも死後に何処へ向かうのか?…という思いから、現世から死後の世界を結ぶ箱として「銀河鉄道」が生み出され、脳内に降りてきたアイデアを文字に残し、自身の中で整理しながら組み立てていく途上であったのではなかろうかと思うのです。

そう考えると、(個人的に)この作品の最大の謎である「鳥捕りのおじさん」なども、なぜ登場したのか全く意味不明のイラッとするおっさんなのではなく、なにか重要な役割があったかも知れないのに、それが具現化される前の試し書きの段階で遺作になってしまったと言う、非常に気の毒なキャラクターだったのではないかと勝手に心配してしまうのです。

ところで現代に生きる我々は、「銀河鉄道」という言葉から、宇宙空間を旅するSL機関車というイメージをなんの違和感もなく受け容れてしまえるわけですが、それは「銀河鉄道999」を知っているからであって、賢治の生きていた大正時代の人々にとっては宇宙はまだまだ未知の世界であり、999も宇宙戦艦ヤマトもガンダムも知らない人には宇宙空間自体ほとんど想像できなかったのではと思います。

厳密に言うと、物語の中で銀河鉄道が走っていたのは宇宙ではないらしいということは措き、当時の人々にとって銀河鉄道という言葉は相当に衝撃的な概念であって、見上げる夜空を旅する列車を想像するだけで、1977年のスターウォーズ第1作公開以上のインパクトだったのではないかと思います。

大正の世、すなわち鬼滅の刃の時代に銀河鉄道という言葉を生み出した時点で大勝利でしょう。作品の中で賢治の伝えたかった思いもあるでしょうが、今ほど宇宙が解明されていない時代のこの物語は、壮大なエンターテイメントとしての意味もあったのではないかと思います。



…と、いろいろ偉そうに語ってしまいましたが、まだ1ページも読めていませんwww

すべてネットの情報から空想で書いております。

これ以上は賢治ファンからお叱りを受けそうですので、次こそはきちんと読了してから感想を書きたいと思います。



(つづく)










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