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社会や組織を変革するには #72

「Presense」(出現する未来)

社会や組織をどのように変革するのかを書いたピーター・センゲの本です。以下はその中に出てくるストーリーです。

ドイツのフランクフルト北部の行政ヘルスケアプロジェクトとして、医師たち有志が、現状の対処療法的な対応に疑問を抱き、町全体の医師と患者間の関係についてインタビューを行いました。そこで浮き彫りになったのは、次の4つのレベルでした。

【レベル1:対処療法】

医師:壊れたところを治す人 ⇔ 患者:治される人

【レベル2:行動を正す】

医師:患者の行動を変える人(煙草を吸うな、など) ⇔ 患者:原因となる行動を直される人

【レベル3:原因やその関係性を探る】

医師:なぜそうなったのか?を問いかける人(コーチ的)⇔ 患者:原因を自分で分析する人

【レベル4:全体性に目を向ける】

医師:自分の役割は、目の前の病気を治すだけなのか?と思う人 ⇔ 患者:医師にかかるのは、病気になった時だけか?医師との関係をもっと緊密に保つためにできることが他にはないのか?と思う人

有志の医師団とインタビューに協力した市民たちにも今回の結果を見てもらい、今、現状で行われているヘルスケアはどのレベルかを投票してもらったところ、レベル1と2がほとんどだったそうです。

そこで、実際にそれぞれが望むレベルは、どのレベルかを投票してもらったところ、レベル3と4が圧倒的に多かったようです。

そこから、どうしたらレベル1からレベル4へシフトできるかの対話が、医師とそれをとりまく行政、市民たちの間で始まりました。

それがきっかけで市民たちによる各地域の救急センター設置や、医師にかかるまでもない病状のときに相談できる窓口の新設など、医師と患者間の枠組みを超えたコミュニティ全体のシステムとしてお互いがお互いにWin-Winとなる新しい関係性を創造することができたそうです。

このレベル1からレベル4までの状況を概念的にまとめると次のようになります。

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現在の世界をとりまく複雑なシステムとその中で起きている対立や問題を考えた時に、自分自身を切り離して、問題の原因は「彼らだ」と他人や他部署、他国、
他宗教などを非難の的とするのは、簡単なことですが、それ自体はお互いがお互いの見える範囲の損得だけを考えて行動してるだけで、根本的なシステム全体の解決には至っていません。

レベル1やレベル2のように出てきた問題と行動パターンに対処しているだけといえます。

そこからさらに、一歩進んでレベル3とレベル4まで到達させていく必要があります。

知る由もない向こう側の問題としてではなく、自分が複雑なシステムに影響を及ぼしている一人として認識することでコントロールできない「問題」が内側にある自分の見えなかったコントロール可能な「問題」として現れてくることがあります。

「問題」の根本原因を組織や特定の人びとのせいにして非難するのではなく、「なぜ」このような「問題」が生じているのかを自分事として捉えていく必要があります。

そうすることで、「問題」の本質を構造的に考えることができ、全体感を持って仕組みとして「問題」の解決に向かうことができると思います。

文化人類学者のマーガレット・ミード曰く、

問題意識をもって深くものごとを考えれば、たとえ少人数でも世界を変えられます。その可能性を疑わないでください。実際、これまで世界を変えたのはこのような人々の力だけです。

冒頭の「ヘルスケアプロジェクト」の事例でも行政、医師、市民が現状の「問題」(お互いにレベル3、4を望みながら、実際はレベル1、2で止まっていること)を相手のせいにすることなく、自分事として捉えて真摯に話し合った結果、それぞれが満足する仕組み(システム全体の仕組み)を構築することができました。

社会や組織を変革するには、このような「マインドセット」をお互いで共有・醸成していくことが必要に思います。

出展:40歳からのMBA留学〜オーストラリアでビジネスを学ぶ〜 http://ojisan-dreams.blogspot.jp/2014_11_01_archive.html

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