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【2022総括 秋田編】ブラウブリッツ秋田に愛をこめて〜縁もゆかりもない私がこのクラブにどっぷりハマった話〜

お久しぶりです。

仕事が忙しかったりで、更新していませんでしたが、久々に更新してみます。
観戦はやめていませんが、やはりマッチレビューを毎試合書くのがなかなかきついことがわかったので、もうちょいスパンを開けて書いてみたりしようかな、と模索しているところです。

さて、今回のテーマは総括も込めて、今年から私が応援し始めたブラウブリッツ秋田について。
なぜハマった?今季の結果、そして彼らの戦う姿勢やサッカー以外の数奇な出会いまで、シーズン終了タイミングでちょっと書いていこうかなと思います。
監督のインタビューなど、気になっている他サポさんも多いイメージがあるので。

きっかけ〜2020年の圧倒的成績と熱き監督の「言魂」

きっかけはシンプルに言えば、いつもいろんなクラブの応援に行ってくれる友人が気にしていたからであるが、ただそれ以外にも目を引くところがあった。

コロナ禍に揺れた2020年。J3を圧倒的な成績(個人的には史上最高のJ3チームなのでは?と思っている)で駆け抜け、優勝したのが秋田。開幕9連勝、開幕28戦無敗の戦いぶりの衝撃は忘れられない。予算規模も少なく、助っ人外国人に頼るわけでもなく、雪などの困難な状況もさぞ多かろう秋田の地で見せたこの成績に凄みを感じた。

さらに私を引きつけたのは、一人の監督のインタビュー映像であった。

吉田謙。

ちょうどこの2020年から秋田にやってきた監督である。選手としての実績はほぼないが、2017年、J3に昇格したばかりのアスルクラロ沼津をいきなり三位に導いた。
指導力はもちろんのこと、この人の魅力は試合前後のインタビューにある。独特の間から発せられる真面目故、熱血漢故に発せられる深い言葉の数々は「吉田語録」や「言魂」と言われる。秋田のサッカーに詳しくない人でも、このインタビューの光景が好きというサッカーファンは多い。

「筋金入りの徹底」
「熱意あるところに道あり」
「日常力」
「魂際(たまぎわ)」
「河原の小石は崩れるけれど、僕らが築き上げた努力の石は絶対に崩れない」

などなど…

書籍化や日めくりカレンダーにしたら確実に売れるような言葉の数々。個人的には、練習中の風景なども見学したいと思うことがある。

今年の吉田語録で一番印象的だった一言。
あのやべっちにも「もっと見たい」と言わしめた

掴みとった2年連続の「余裕を持った」残留
~決して当たり前ではない「純国産地方クラブ」のこの成績の価値~

ここからは今年の成績について、軽く昨年の成績とも比較しながら触れていこうと思う。

2021年のJ2の成績は勝ち点47、41得点53失点の13位。4試合を残して残留し、初のJ2のシーズンを終えた。当然、J3を席巻したようにはいかないが、それでも最大の目標である残留を達成したことに価値があった。

迎えた2022年。開幕連敗スタートになったものの、連勝ですぐに五分に戻した。それでも負傷者や例外なくやってくるコロナ禍の波にも巻き込まれ、夏場には苦しい時期も味わった。

それでもアウェーの金沢戦。0-3と快勝し、残留争いへ片足を突っ込みかけていたチームは持ちこたえ、それから二節後の東北対決となった岩手戦は監督がコロナで不在の中、半田の劇的な一発で勝利。ベテラン加賀の大怪我からの復活も大きなニュースとなった。

ホームではなかなか勝利と得点を上げられず苦しんだが、町田戦で無得点記録を止め、勝ち点3を掴んだことで今年も4節を残して2年連続の残留を掴みとった。

町田戦で残留を決めてからの10月の残り4節。
昨シーズンを振り返ると、残留を決めてからは全敗と、勝点を伸ばすことはできなかった。しかし昨年とは違い、ここからの秋田の奮闘ぶりは凄まじかった。
熊本→千葉→岡山→仙台と、全て昇格PO争いに絡む相手との対決となったが、熊本をアウェーで倒し、3位の可能性を消すと、ホームの千葉戦では69分からの8分間で3ゴールを奪取し勝利。千葉の自力PO進出の芽を積んだ。
さらには他力の僅かな可能性ではあるが、自動昇格の可能性を残していた岡山との一戦。先制されるもATの劇的ゴールで逆転勝利し、12000人超えの完全アウェーの地で自動昇格の可能性を消した。
この勝利によりJ2でのクラブ最高記録となる4連勝も達成。さらにはアウェーゲームでは前述の金沢戦から岩手→琉球→東京V→熊本→岡山となんと6連勝でフィニッシュ。大きな収穫と成長であった。

最終節は同じ東北地方の雄、ベガルタ仙台。POに望みをつなぐために黄色く染まったアウェーゴール裏と1点を取りに来る仙台攻撃陣の迫力は最後まで途切れなかったがスコアレスドローに持ち込み、こちらも相手のPO進出の可能性を摘み取った。

昨年とは違い、残留確定後に積み上げた勝ち点は「10」。降格の怖さも昇格の可能性もない中でもらしさを貫いた終盤戦のブラウブリッツ秋田。さながら「ドリームクラッシャー」として君臨し続け、PO争いを大いにかき回したのである。

2022年の成績は
順位(13 → 12)
勝ち点(47 → 56)
勝利数(11 → 15)
引き分け数(14 → 11)
負け数(17 → 16)
失点数(53 → 46)
の項目で昨シーズンより上回った。

個人的に価値があると考えるのは、ただ残留したわけではなく、「余裕を持って」残留したことである。
お世辞にも、お金があるクラブではないし、外国人助っ人もいない純国産チームである。事実、昨年は鈴木準弥(→FC東京)、今年は輪笠祐士(→岡山)とチームに欠かせない高い技術を持った選手をシーズン途中の移籍で失った。さらに、秋田県という雪の多い地域特有の困難にも直面する。

そんな簡単ではないチーム状況は、これからもこのクラブにはついて回るだろう。それでもギリギリではなく4節を残しての残留は快挙であり、簡単じゃないぞ!ということを私は声を大にして伝えたいのである。ましてや、今シーズンは輪笠の移籍後、逆にチーム力が上がった気さえするのである。
他クラブの例では、昨シーズン終盤で絶好調だった岡山はオフの補強も成功し、勢いそのままに今シーズンはPOに進出した。秋田はこれに続けるだろうか。シーズン終盤の進撃ぶりをそのままつなげていければ最高である。

岡山戦の試合後の風景。
完全アウェーで掴みとった勝ち点3は
大きな自信になるはずだ

秋田サッカーに欠かせないセンターライン〜個人的に核となった3名〜

ここでは、現地で今季見てきた秋田のサッカーにおいて、全選手だときりがないので、特に印象に残った3名の選手について書いていきたい。
紹介する選手は秋田のサッカーを体現する上で欠かせない「センターライン」の選手である。

田中雄大(GK㉑)

秀麗無比なる秋田の守護神。世界のサッカーのトレンドである「攻撃的な守護神」でもあり、裏を狙ってきたボールには積極的にエリア外に飛び出し飛距離の大きなヘディングでクリアすることも。さらには今シーズン、相手GKのファインセーブに阻まれ決まらなかったが、ビハインドのATに攻め上がり、オーバーヘッドシュートが枠に飛んだ場面もあるサッカーセンスの塊のような選手でもある。

一番の強みは至近距離からのシュートの反応の良さである。今シーズンも絶体絶命のピンチに驚異的な伸びのある反射神経でゴールに鍵をかけた。近ければ近いほど、特にペナルティエリア内から放たれたシュートを何度もストップしていた印象がある。
今シーズン達成したクリーンシート(無失点)は13。ボール支配率が高くない秋田サッカーにおいて、最後尾に立ちはだかる彼の存在なくして堅守は築かれなかった。

ちなみに秋田の前に所属していた相模原ではあの川口能活とレギュラー争いをし、川口の引退したシーズンでは彼からポジションを奪ったことで、秋田のことを知る前から彼のことはよく知っていた。その頃よりなお進化した印象だ。

クリーンシートを達成したときの秋田公式Twitterの彼の表情が好きです

池田樹雷人(DF④)

愛媛FCを契約満了になったところを今季獲得。滞空時間の長いヘディングと当たり負けしないフィジカルで屈強なポストプレーヤーにも強い左利きのCB。
守りだけではなく時折見せる攻撃センスも魅力で、得点こそ2得点だったが、私が現地観戦したアウェーの千葉戦では吉田伊吹のゴールをアシストし、岡山戦では彼のクリアから9秒の高速カウンターでゴールにつなげた。
昨シーズン主力だった増田繁人が怪我で全休した中、この男がCBで固定されたことが守備構築には大きかった。相棒も千田海人、小柳達司ら代わったなかでも安定した活躍。契約満了で獲得したことを考えると相当な「掘り出し物」だったと言える。

勝った試合後の「ないすぅ👊」をいつも楽しみにしています

稲葉修土(MF㉓)

秋田サッカーの心臓部かつキャプテン。大きい身体でなくても、高いボール奪取能力はまるでカンテ(フランス代表・チェルシー)のよう。クリーンにボールを刈り取り、豊富な運動量でピッチ内の縦横無尽に顔を出す。今シーズン私が秋田だけではなくすべてのチームで見ても一番印象に残った選手と言っても過言ではない、なくてはならない存在だ。

主将として発する言葉も常に高い目標を見据えているところも好感が持てる。終盤戦が好調だった今シーズンの終了後のインタビューでも満足は口にせず、POを狙う発言を真っ先にしてくれた男。来季も彼が率先して、吉田監督のサッカーらしい走るのをやめないサッカーを体現してくれるはずだ。

↓今シーズン一番印象に残ったプレーと解説の田村直也さんの一言が秀逸。

現地観戦で得られた光景〜こうして私はブラウブリッツ秋田にハマった〜

ブラウブリッツ秋田の現地観戦は5試合+α。αについてはこの項で説明していく。


群馬戦、千葉戦
群馬戦と千葉戦に関しては、以前マッチレビューで書かせて頂いたのでここでは割愛させてもらう。

この二戦で得た事実は「全員が足を止めず全力で走る」サッカーに私はのめり込んでいった、ということである。

大宮戦、そしてマスコットが繋いでくれた数奇な出会い

アウェーでの大宮戦も、群馬、千葉戦同様にボールを握られる展開。はっきり言えば、ボールを握られても少ないチャンスを活かしてゴールを奪えていたが、チャンスも今年見た試合で一番少ない試合だったように思える。
それでもなんとか耐え、最後に痛恨のPKを献上してしまうも相手のミスに助けられ、辛うじて勝ち点1を得た。

土曜の夜に集まった秋田サポーター。試合後には後ろのお婆さんから余っていた応援グッズをいただきました(笑)
選手たちは厳しい表情でゴール裏へ。
それでもゴール裏は大きな拍手で後押しした

それから3日後の話。
正式には、この大宮戦の前に、こんなツイートが。

クラブのメインスポンサーであるTDKの硬式野球部が、ちょうどこの時期東京ドームで行われていた「都市対抗野球」に参戦中だったのだ。
そこにクラブマスコットのブラウゴンも参戦。バスケットボールの「秋田ノーザンハピネッツ」も含め、競技の垣根を超えたTDKのパワーに後押しされ、3日後に私は東京ドームにいた。もともと都市対抗野球は「各チームの応援がすごい」と聞いて興味はあったが、まさかこのような形でつながるとは、1ミリも思わなかった。

そしてそして…

ブラウゴンは応援席で躍動しまくったのである。試合は負けてしまったが、そんなことはどうでもいいぐらい。
秋田のサポーターだけではなく、その他のJリーグファン、社会人・都市対抗野球ファンの心もガッチリ掴んだブラウゴンはすっかり「働き者」のイメージを植えつけていった。

秋田ノーザンハピネッツのビッキー、にかほ市のにかほっぺんとブラウゴン
三者三様な姿がなかなか良かった。いい夏の思い出

↓エビ中の曲を踊っていたら、本当にオファーが来ておったまげましたが。(笑)

東京V戦〜想像以上の入りやすさと楽しさだった声出しありのゴール裏と「秋田県民歌」

味の素スタジアムの東京V戦は「声出し応援適用試合」ということもあり、初の声出し応援での参戦。YouTubeなどでほどほどに予習したゴール裏は、とにかく楽しかった。

↓唯一無二の応援「トラパンツ」
トラパンツとは、この弾幕を使った応援を考えた秋田の企業名に由来する。

試合も、今まで勝てていなかったヴェルディ相手に前半終了間際に泥臭く先制点を奪い、後半は相手のOGで追加点。これを秋田得意の堅守で守り抜いた。
奇しくもこの試合のあった9月14日はクラブ創立13周年の日。Jリーグが創設された年に「Jクラブは今後できないだろう」と言われた秋田県が、オリジナル10かつ、今まで一度も勝ったことのなかったヴェルディに初勝利を掴んだ歴史的な1日にもなった。

そして私が何よりも心に残ったのは、「秋田県民歌」の偉大さと思い入れの強さである。
「秀麗無比なる鳥海山よ」のフレーズから始まるこの曲の秋田県民の方々の思い入れは強く、秋田県の情景が浮かぶ歌詞になっている。あとから聞いたが、ノーザンハピネッツの試合でも歌うらしい。
ブラウブリッツの試合では試合前の選手入場からキックオフまでの間と、勝った場合は試合終了直後にも歌われる。秋田のゴール裏の人たちはチャント以上に、甲子園の試合で勝った高校の校歌を歌う高校球児のように、皆が大声で歌っているのが印象的で、私も動画をSNSに投稿したところ、DAZNで観戦していた方も含めた秋田のサポーターや秋田県の方からの思い入れの強さが「リツイート」や「いいね」の反応から伺うことができた。私は秋田に縁もゆかりもないけれど、これからもこの反応を感じた限りは、しっかりゴール裏で歌っていかないと行けないなと感じさせられた、忘れられない光景であった。

岡山戦〜完全アウェーで貫いた「らしさ」とAT劇的弾で開いた新たな扉

ラスト二節で迎えた岡山戦。
自動昇格の可能性が残っていた相手かつ、12000超えの完全アウェーにも、秋田は怯まなかった。
少し硬さが見える岡山に自分たちのサッカーを貫き、隙あらばカウンターでシュートを狙う。チャンスの数はいつもよりも多く見えた前半だった。

しかし、さすがは3位のチーム。サイドからの崩しで綺麗なシュートが決まり先制される。
それでもそのゴールから9分後。相手のゴールを奪ってから、8秒で高速カウンター。齋藤恵太がまるで競走馬のようなスピードで相手DFを振り切って強烈な一発を突き刺し同点。

追いつかれたあとは岡山の前半以上に威力を増した波状攻撃に合うも、GK田中雄大を軸にしたディフェンス陣が跳ね返し、耐え続ける。
するとAT。ここまでカウンターのチャンスや相手DFのボール回しに必死に前線で身体を張り、走り続けていた青木翔大が前がかりになった相手のスキを逃さず、小暮大器のクロスに合わせて決勝ゴール。J2クラブ新記録の4連勝とアウェー6連勝を達成し、大きな自信を得た。

試合後には夏に移籍し、古巣対決となった輪笠祐士が秋田ゴール裏へ。試合前には愛情たっぷりのブーイング。試合後には温かな拍手でプレーオフへ送り出された。

秋田から日帰りで来られているサポーターもいた秋田のゴール裏

「秋田一体」のサッカーはさらなる高みへと向かう
予算の少ない地方クラブの希望となれ!

シーズン終了から2日後。ブラウブリッツが真っ先に更新のお知らせを出したのは選手ではなく、吉田監督の続投のお知らせだった。

また来シーズンも見ているものの魂を打つ秋田らしいサッカーが見られることを伝えてくれたこと、来季への指針を真っ先に示してくれたクラブの姿勢は素晴らしいと思う。

私が思うに、秋田のサッカーはお世辞にも面白いかと言われると、少し違う気がする。バルセロナのような美しいパス回しがあるわけでもないし、スタイル的にボールを常に持つわけでもないし、特出した個の力があるわけでもない。
けど、それをやったところで必ずしも勝てるわけではないのがサッカーであり、一人でもサボるやつがいればスキが生まれる。

今シーズン見続けていて変わらなかったのは
・選手全員が妥協せず走り続けること
・相手のシュートには身体を投げ出して守ること、シュートコースを狭めること
・美しくなくてもこぼれ球を逃さずゴールに押し込むこと

である。
そういう泥臭いサッカーは、美しく回すサッカーよりも感情移入はしやすい。私がもし監督をするなら、がむしゃらに走れる男を使いたい。吉田監督の「徹底」という言葉や日常のトレーニングの成果に説得力があるのは、そういったプレーが伝わるからである。慣れてくると、もうボールを回されることにも見ていてもビビらなくなる。

特にJ2リーグには、今年天皇杯を制した甲府のような「プロビンチャ」といわれる規模の小さな地方クラブであったり、未だにJ1に上がったことはないが、若手をしっかり育ててJ1に送り出す育成力のある水戸だったり、お手本にすべきクラブがたくさんある。秋田はまだまだ発展途上のクラブであり、水面下では新スタジアムの話も進んでいるとか。彼らに追いつき、追い越してほしい。

確実に知名度と秋田のスタイルは他クラブにも浸透している。今季以上の新たな歴史をこじ開けるのも、そう遠くはないなと感じたし、私はそう信じている。来季はホーム・ソユースタジアムの空気を感じたい。もちろん、来季の関東アウェーも参戦して、秋田県民歌を大音量でたくさん歌いたいですね!

今シーズンの秋田あれこれ

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