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「可愛くてごめん」の闇 ー女をナーフしたい男たち、女をナーフしたい女たちー

海外インスタのリールを見ていたら、「可愛くてごめん」という曲を耳にした。

この曲、歌詞がすごい。

まず、「可愛くてごめん」って、誰に謝ってるか気になりますよね。これはもうわかりやすく、「可愛くない女」に謝っている。

こんな調子である。

Chu! 可愛くてごめん
生まれてきちゃってごめん
Chu! あざとくてごめん
気になっちゃうよね? ごめん
Chu! 可愛くてごめん
努力しちゃっててごめん
Chu! 尊くてごめん
女子力高くてごめん
ムカついちゃうよね? ざまあ

Source: LyricFind
Songwriters: Shito
Kawaikutegomen lyrics © Sony/ATV Music Publishing LLC

あるいは、

趣味の違い
変わり者とバカにされても
曲げたくない 怖くもない
あんたらごとき

重い厚底ブーツ
お気に入りのリュックで
崩せない前髪くしでといて
お出かけしよ
軽い女? ふざけんな
重すぎるっつーの!

Source: LyricFind
Songwriters: Shito
Kawaikutegomen lyrics © Sony/ATV Music Publishing LLC

これは明らかに、女性から女性へ、同性に対するメッセージである。

いや、「可愛い女」から「可愛くない女」への挑発であり、攻撃だ。

問題が複雑なのは、歌っているのは可愛い女の子たちでも、この曲を聴いているのはおそらくアイドル好きの男性たちであり、彼らは世間一般で言われる「弱者男性」(この言い方は嫌いなのだけれど、仕方なく)だろう、ということである。

つまり、「弱者男性」+「可愛い女」vs「可愛くない女」=「フェミニスト」という構図が、透けて見えちゃっている。胸が苦しい。

「アンチフェミ」の実働部隊は、この曲みたいに「女をナーフしていく」タイプの芸術文化活動(!)を通じて社会に影響力を与えていくのではないか、という気がするのだ。しかも、アイドルのような存在を使って、「女が女をナーフする」の建前で。

女はまた「可愛く」なるのか

こんなに可愛い曲なのに、胸がキリキリ、涙なくして聴いていられないのは、「世の中はこうも変わらなかったか」という虚無感のせいかもしれない。むしろ「可愛い女」をめぐる感性は、後戻りしているんじゃないか、という気さえする。

十年くらい前、未来はもっと、可愛くない女が、勝っていくんだと思っていた。

つまり、過度なおしゃれや化粧、「可愛さ」をめぐる文化は、弱者としての性である女に「押し付けられた」ものであり、これからの女は男と同様、勉強を通じてスキルを身につけ、学歴やキャリアを育んでいくことで、「可愛くない」女になるんだ。それが正しいかどうかは別として、そういう空気があったような気がする。十年前に大学生だった僕の周りには、たぶんあった。



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