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アメリカの景気後退はいつか ~株式市場の暴落タイミングを読む~

2022年から2023年にかけてFRBがコロナ後のゼロ金利から政策金利を5%以上に引き上げて景気後退が予想された。だが、アメリカ経済は力強さを保っている。失業率は過去最低水準を維持したまま、消費も堅調である。

では、アメリカ経済に景気後退はこないのだろうか。

筆者も景気後退が早晩やって来ると考えていたが、考えを改めた。少なくとも現在景気後退が間近に迫っているとは言えないというのが現在の見立てである。

根拠として、景気後退の重要なシグナルがまだ景気後退突入を示しておらず、それにはまだ一定の距離があるように思えるからだ。一つづつ見ていきたい。


逆イールドカーブ

まずは、景気後退のもっとも有名でかつ的中率も高い逆イールドカーブである。ここでの逆イールドはアメリカの10年国債利回りよりも2年国債利回りが高い状態を指す。

一般に、年限が長い債券の方が期間リスクが高い分金利も高くなるはずである。しかし、景気後退が予想されるとき、2年国債などの短期債利回りは(景気後退を引き起こすほど)高い政策金利の影響を受けて比較的高い利回りとなる。一方、将来の景気後退を織り込む10年債などの長期国債の利回りは低くなる。これが逆イールドが発生する要因である。

10年債利回り-2年債利回り

灰色の網掛けが示す景気後退の直前には、逆イールドが発生し、逆イールドが解消されようとしたタイミングで景気後退に突入する。これが従来の逆イールドが発する景気後退のシグナルである。

しかし、現在は逆イールドが発生し、その解消に向けて逆イールドが収縮している過程であり、まだ逆イールドの解消まで距離があるように思える。2月14日現在、10年債が4.2%、2年債が4.6%となっている。

トラック従業員数

次に見る指標はトラックドライバーの推移である。

トラックドライバー 推移

ドライバーの数が減っても必ず景気後退となるわけではないが、景気後退になる際には必ず減少している重要な指標である。

コロナ後のピークからドライバーの数が減少しているが、直近では横ばいで推移している。

これが減少を示し谷を描くようだと景気後退突入ということになるが、こちらも現在は持ちこたえており、景気後退が差し迫っているという印象は抱くことはできない。

クレジットカード延滞率

クレジットカード延滞率 推移

こちらは消費者の懐事情を図るうえで有用な指標になる。リーマンショック時には消費者の購買力が暴落していることが読み取れる。一方のITバブル崩壊後はやや上昇しているが、極端に跳ね上がっているという印象はない。むしろ、1995年から消費者の購買力は落ちているのに株価が上昇を続けたことが実態を伴わなかったという意味で、1995年からの上昇傾向の方に注意を向けるべきかもしれない。

さて、2024年の立ち位置であるが、コロナ禍の過剰なバラマキ政策により延滞率は史上まれにみる低水準で推移しいたが、徐々に上昇し、コロナ禍前の延滞率を突き抜けている。

これを見ると、消費者の購買力、あるいは少なくとも低所得者層の購買力が低下していることは如実に見て取れる(延滞は低所得者層から先に延滞するだろうから。)

アメリカの消費者全体はまだ体力を維持していても、その足元が揺らぎつつあるのかもしれない。低所得者層の経済状態が悪化していることは大統領選挙にも影響するだろう。延滞率を見れば、トランプ政権時代の方が経済状態が良かったと感じる有権者が少なくなりことにもうなずける。

マネーサプライ

マネーサプライ 推移

市中の現金と預金の総量を示すマネーサプライである。実質マネーサプライのグラフは次のようになっている。

コロナ禍ではマネーサプライが爆発的に増加しており、これが最大9%に至ったインフレの原因である。

マネーサプライは消費者や会社が保有する現預金含むからインフレ率を大きく左右する指標である。

例えば、明日の朝に国民全員の口座に100億円ずつ入金をし、そのお金が自由に使えると仮定しよう。おそらく多くの国民が働くのをやめ、車や不動産、宝飾品などを買い漁り始める。働き手を募集するにためは、年収1億円は支払わないといけないくなるだろう。これがマネーサプライ増加に伴うインフレである。

このマネーサプライは2022年をピークに減少を続けているが直近ではその減少スピードは緩やかになってきている。CPIが3%程度が継続している理由もここにあるだろう。

現在のマネーサプライの水準はコロナ禍前の巡航速度にちょうど回帰したところだと思っている。

マネーサプライが急速に減少し、コロナ禍前の巡航速度を突き抜けて下に振れた場合は景気後退・デフレ経済となるが、そのようにはなっていない。ここにも景気後退が差し迫っていることを示すものはない。

結論

主要な景気後退を示すシグナルを見たところ、景気後退は差し迫っておらず、景気後退に突入するまでは相応の距離があると考える。

直近ではややバブルの様相を呈している株式市場についても、企業利益が大幅に低下することによる株式市場の暴落はしばらく先になるだろう。

目先半年程度は、株式を買い目線で保有することを継続したい。

※本記事は、あくまで筆者の株式分析、企業分析の記録であり、投資活動の勧誘または誘因を意図するものではありません。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。また、本記事は不特定多数の者へ無償で情報公開されるものであり、投資助言に該当するものではございません。

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