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短編小説

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TAGOが執筆した小説作品。ホラー、SF、恋愛、青春、ヒューマンドラマ、紀行文などいろいろ。完全無料。(113作品 ※2022/10/1時点) ※発表する作品は全てフィクションで… もっと読む
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2020年5月の記事一覧

『スキやいいねを押すたびに自分が失われていく症候群』(短編小説)

どこへ消えてしまったんだろう、あの私は。 誰かの記事を読んで、足跡のような感覚で「スキ」や「いいね」を気軽にぽんと押す。特に基準はない。記事の内容や質よりも、書き手に少しの好感を持ってさえいれば、よほどのことがない限りはワンクリックで無色のマークに色をのせる。躊躇なく惜しげもなく誰かの記事に自分をマーキングする。それが私のSNSにおけるスタンスのようなものだった。 でも、それができなくなった。 目の前に並んでいる記事に対して何も反応できな

『ドラマをみる女』(短編小説)

「あんた、彼氏と寄りもどしたらしいじゃん」 「うん」 「これで何回目? 」 「4回目かな」 「まあ、あんたが幸せならそれでいいんだけどさ。くっついたり離れたり・・・そのたびに新しい男友達を紹介してる私の身にもなってよね」 「ごめん。でも私たち戻らなきゃいけないって思ったんだ」 「もう別れるなよ」 「私ね、彼がいなくなって気づいたの。逆らっちゃいけない運命ってあるんだって」 「へえー。ふーん」 ソファに横たわる妻は、煎餅をばりばり噛み砕きながら、気怠い表情でテレビをみて