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2020 J2 第6節 栃木SC VS ツエーゲン金沢 レビュー ※閲覧注意

どうして得点直後にこんな浮かない顔をしているのか・・・

前節のジェフ千葉戦、僕はレビューをお休みしました。

去年の夏のレビュー開始から丸1年。調子の良い時もそうでない時も、ツエーゲンの一挙手一投足を僕なりの観点でお伝えしてきました。ただ、千葉戦に関しては何をどう自分なりに飲み込んで消化していいか判らず、レビューを書かない決断をしました。

今回も悩みました。勝ち点3は得られたのですが、課題をクリアしているとは言い難い試合内容だったからです。

スタメン

栃木は前節から3枚替え。柳→田代、禹→岩間、明本→山本。注目の明本くんはサブでのスタート。栃木のユースから国士館へ進学し、ユニバーシアード代表・大学選抜を経て、J1の誘いも断り栃木へ戻ってきた。昨年、引退した廣瀬浩二さんから受け継いだ背番号を身に纏い、栃木をけん引する若者。

逆サイドの森くんも栃木ユース出身。法政大で昨年の天皇杯、東京Vとガンバ大阪にジャイアントキリングを果たしたメンバーの一人。金沢FW加藤睦次樹くんの兄・威吹樹くんとはチームメイト。

サブのメンバーの豪華さはJ2でも上位に入るのではなかろうか。

一方の金沢は藤村くんが戦線復帰。前節、一年ぶりのカムバックとなった長谷川くんはスタメン。下川くんがボランチから定位置左SBへ。山田→廣井、金子→窪田、西田→島津と先発がめまぐるしく変わる。そしてとうとう陸次樹くんが控えに回り杉浦恭平くんが今期初のスタメン。前節までの後半スギウラーズでのワンペア交代のうっ憤を晴らす。

頭からハーフナーの歯を発掘し、針でふたをした守護神白井くんは今回もスタメン。

ということは湘南から短期レンタルの堀田くんの出番はいつくるのだろうか・・・

金沢のサッカーは退化している

もう一度、課題とはなんだったのか、整理していきたいと思います。

リーグ再開となった2節山雅戦で触れていましたが、以下の4つについてです。

①決め事の整備、スペースの認知

②ボール非保持→ポジトラの切り替え

③ボールを前に運ぶ選手が必要

④ルカオさんの使い方

①についてですが、試合時間6分30秒くらいのこのシーンを見てください。

左サイドで藤村くんからパスをもらった下川くん。島津・藤村共に前に行ってしまいパスを出しにくい状態に。さらには画面奥のルカオ・杉浦恭平・窪田はほぼ動かずに待っています。茶色の空間に誰かが行っていればパスを出しやすくなりますし、下川くんが深い位置にドリブルで仕掛けることが出来やすくなります。

結局大橋くんにボールを戻す事しか出来ず、栃木GK塩田くんにボールを取られてしまいます。ここで何がわかるのか。

先ずは一枚目の茶色の楕円の空間を認知していない事。そして、ボールホルダーのサポートに行けという事は言われているかもしれませんが、その方法が決まっていないという事です。

どうしてこのような事が言えるのかというと、平行に並んでいてもパスは繋がりにくいのに平行に並んでしまう事が多くみられるからです。

簡単に見える事ですが、平行にいる味方よりも段差をつけてあげたほうがボールは繋がりやすいです。さらには右利きか左利きかボールを味方に近い場所か遠い場所で受けるかによって身体の向きも変わってきて、次の行動も決まってきます。

ですから、ひし形(少しいびつなほうがパスが通りやすくゴール方向へ身体が向きやすい)になるようにパスを回す事を原則としているクラブも多いです。しかし、金沢はパスを回す事(ボール支配率を高める)を志向している訳ではないのでこの原則は取り入れていません。

が、ボールホルダーとほぼ平行にポジショニングしていては、パスがつながらない事はわかるかと思います。

決め事の整備を、と私が言っているのは、上の写真のような動きをしてしまうという事は、細かな決め事を設定しないでを練習しているから同じような動きを複数人でしてしまい、結果的にボールを失うという事を繰り返しているからなのです。

「同じサイドの3人でビルドアップして反対側の3人にパスする」という目的があったとしても、そのビルドアップのやり方が細かく設定されているチームとおおざっぱなチームとでは、ゴールの確率に格段の差が生まれるという事です。そしてそれが結果的にスペースが空いていても認知出来ていないという事につながります。

ゴールまでの距離に平行に並ぶ、または平行に近い状態になるという事は、その前後にスペースができる事は当たりまえです。さらにゴールに近い距離で平行になってしまった場合はペナルティエリアの前にスペースが生まれる事に・・・その状況を狙って作り出しているのならそのスペースを利用してミドルシュートをガンガン打てばよいのですが・・・そうではありません。

決め事をしっかり決めておかないからフィニッシュやその一つ前のプレーの精度に影響が出るのです。それは無理やり目的に向かって進んでいくからに他なりません。

そしてそれを見てみないフリをする私達にも責任があります。「誰かがもっと厳しく言わないとわからない」とヤナ将が昨年言っていた事は、選手だけではなく監督やコーチ陣にも当てはまります。

ですから、私達はプレーの一つ一つをしっかり見て評価し、素晴らしいプレーには惜しみない拍手を、そして今回のようなプレーにはしっかりとした根拠に基づいてダメ出しをしていかなければいけないと思います。

②はそれ以前の問題

そして②についてですが今回は③や④にも繋がります。この栃木戦ではルカオさんをターゲットにした縦パスやカウンターが多くみられました。

57分ごろのシーンです。窪田くんがインターセプトしたボールをルカオさんにパス。フィジカルモンスターぶりを発揮し、栃木の田代くんを振り切り佐藤くんと並走しながら全力で走ってシュート。栃木のGK塩田くんの右足に当たりゴールポストに跳ね返ってゴールならずという場面。

ルカオさんにパスが出た時点で、何人か全力でゴール前に走っていれば追加点が入ったかも知れません。

しかし実際は佐藤くんと並走してドリブルしていたルカオさんのほうがスピードは速く、ゴールバーに跳ね返ったボールを見て、慌てて駈け寄る杉浦恭平くんが確認できます。

これは②の切り替え以前の問題です。前節の千葉戦の2失点目は佐藤寿人くんのヘディングがゴールバーに跳ね返っても、すぐに後ろから見木くんが走ってきた事でゴールが生まれました。

貪欲に得点を狙うという姿勢がこのチームには無い。あるのかもわかりませんが見えない。僕が一番懸念しているのは戦術ではありません。戦う姿勢が表れないと目的に向かう為の戦術も実行出来ません。

③について、ボールを運ぶ役割をルカオさんがしているとしても、そこに連動してくる選手がいなければ得点に結びつきにくいのです。もちろんカウンターを仕掛ける際の決め事も必要。今はルカオさんが一人で頑張っているように見えます。

そして④について、ルカオさんの使い方という点についてはターゲットとしてパスを放り込むというやり方は、それで良いのかもしれません。しかし私はある2つの事を思い出さずにはいられません。

ヤナ将とソリボールと森保一

一つ目は、縦パスを前線にドンドン放り込むという「まるでサッカーとは違う競技をしている」と他サポから揶揄された2015年あたりの松本山雅のサッカー「ソリボール」。

別にそれ自体は手段としてはアリだとは思います。面白いか面白くないかは別として。しかし、正直「ヤナボール」は「ソリボール」より今のところ完成度が低いです。

栃木GK塩田くんの分析がきっちり出来ているのならば、どのタイミングで縦ポンすればCBとGKの間にボールが落ちるかがわかると思いますし、それを効果的に行う為にCBを前に釣り出す事、ライン間でまずボールを受けてから一旦戻して縦ポンとか、そういう事がまるで決まっていない中で、僕が数えて確認しただけでも栃木戦で約20本の縦ポンを失敗しています。結局は味方の動きしか見えていないのです。

二つ目は、この栃木戦とは違いますが、千葉戦の敗戦はヤナ将が「つまらないサッカーに負けた」磐田時代に語った広島戦と同じシチュエーションでした。2点先制されてから、引いて守られそのまま逃げ切られる。打ち合いに応じない将来の代表監督をこう切り捨てました。栃木は1点ビハインドだったので打ち合いを選びました。しかし、千葉や甲府のようにリードしたら引いてクローズしてくるチームは今後増えてくるでしょう。

しかし、つまらない先行逃げ切りのサッカーも縦ポンのサッカーも手段の一つです。結局、決め事と言われるチーム原則をしっかり整備しないでプレーの質を上げていくと言っていても進歩はありません。実際、質は去年から上がっていないのですから。

これからツエーゲンと相対するクラブは先行逃げ切りで来るでしょう。去年の金沢は先行逃げ切り型でしたが、森保さんのようなコンパクトなブロックを築いて相手にボールを持たせておくようなサッカーではありませんでした。あくまで追加点を取りに行く姿勢を見せながら相手を上回るスタミナと集中力で守るというサッカーでした。

しかし今年は先行逃げ切られ型。2点敵に与えてしまったらおしまいです。それを甲府戦や千葉戦で露呈してしまいました。

カウンターがルカオさん頼みになり、先行逃げ切られ型になって、しかもボールを持たされると攻めあぐねてセットプレーの機会も減りかねない(甲府戦CK2回)。今のままでは金沢のサッカーは退化していると言わざるを得ません。

先行逃げ切られ型にやられない為には、逃げ切られるシチュエーションを作られる前に得点することです。

試合は勝った。でも気がつけば、田坂サッカーを堪能。

肝心の試合に少し触れます。ゴールシーンの下川くんのクロス、杉浦恭平くんのヘディングが両方ともテクニカルでした。マークされている相手を抜き切る前にクロスを上げるというのは欧州ではスタンダードなクロスになっていますし、下がりながらのヘディングはボールに合わせるのもボールに力を伝えるのも難しい。栃木DF陣に囲まれながら一瞬フリーになる動き。久々に良いものを見たなと思ったゴールでした。

栃木は縦ポンには縦ポンと、矢野くんを入れてセカンドボール奪い合い競争に名乗りを上げ攻撃の起点になりましたし、両翼の森・明本のルーキーも随所でドリブルの仕掛けを見せたり、良質なクロスを入れたりと、負けていても田坂監督の引き出しを感じさせるサッカーは、確実に昨年以上の成果を上げられると感じました。

試合結果 データ 

レビューと言っておいてごめんなさい

今回のレビューはあまりレビューといえる代物ではありません。次回からはもう少しレビューらしいものにしていきたいと思いますが、リーグ戦再開の5試合を見て、どうしても黙っていられなかったというか・・・。昨年もモヤモヤした思いをして終わったのですが、今年もその傾向は変わらないままだったので爆発してしまいました。とにかくこのままでは進化どころか退化です。

まあ昨年から10試合連続、見に行った試合で勝っていない訳ですから(笑)いい加減、勝利の余韻に浸らせて下さいよ(苦笑)それではここまで読んで下さりありがとうございました。僕の意見がすべてではありません。色んな見方があると思います。ご意見ドンドンお待ちしています。

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