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2020 J2リーグ第21節 ツエーゲン金沢 VS 東京ヴェルディ レビュー「駆け引きか?それとも親心か?」

地上波である。このところ年イチで行われる、貴重なTV放映である。県内のみではあるが、むしろ県内にこそ知らしめたいのである。いかに新たなファンサポを増やすか。それはいかにファンサポの中でツエーゲンを楽しむ為のコミュニティを作り広げていくかを考えている僕ら(RED TAG)のテーマと似ている。もちろんご新規さんの開拓も僕らのテーマの一つですが。

相手が全国に名の知れたヴェルディで、さらに大久保嘉人くんがいるとなれば日本代表の試合しか観ていないような人にでも観てもらえるかも知れない。と、MROさんが考えてこの試合を選んだのでしょう。しかし、結果は一番避けて欲しいものとなりました。サッカーというものは得てしてそういうモノ。

スタメン 「KING IS BACK!」

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金沢の変更は廣井→作田長谷川→高安の2点。久々にSBで出場の高安くん。そしてルカオさんが北九州戦以来、1か月半ぶりに帰ってきた。全治6週間と発表されていたので、少し早いと感じたのだが・・・。しかしTV的には「KING IS BACK!」的な盛り上げ方で、しかもゴールを決めて勝ってくれれば言う事なし、だった。

東京Vの変更は、えーと・・・6人替わっててとりあえず書くのめんどくさいのでターンオーバーしてるよーって事でご勘弁を。上に位置させたのもなんとなくな位置です。ホントの位置にしたら3-2-5?4-1-2-3?3-1-1-3-2?もうわけがわかりません(笑)。守備時は3-4ブロックを形成。サッカー好きにはかなり楽しめるメンツでスタートしていますが、大久保くんはベンチからのスタート。がっかりするMROの方々(たぶん)。

試合開始

ヴェルディという事で一般視聴者には認知度はあると思いきや、一番分かりにくいサッカーをしてきて逆に面白かったこの試合。がっちり心をつかむ為に強いツエーゲンを見せて欲しかったのですが、一番最初に心つかまれたのはヴェルディの井出くんのオシャレなパスでした。11秒間ボールキープした後に出したノールックパス。久々に見た井出くんはやっぱり凄いヤツ。

前半15分は東京Vペース。簡単に表すと下の図のようになりました。

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基準を無くせ

ヴェルディは前の5人が1レーン毎に1人位置して中間ポジションを取りつつボランチの2人もピン止めしています。3バックに2FWで対応しても数的不利となる金沢はアンカーの藤田くんへのパスを切る位置取り。

右か左のCBにボールが出ると反対側のサイドを捨てボールホルダーにプレッシャーをかけにいく金沢ですが、ヴェルディはGKマテウスも加わりボールを保持。つかみどころの無い序盤は、慣れるのに精一杯といった感じでした。

マンマークの金沢は自分のマーカーについていきますが、東京Vの選手達も自由にポジションを変えてくるので、基準を見失いかけていました。しかし当事者の東京Vのほうも完全にゲームを支配しているとは言えず、タイミングのズレがありシュートまで持っていけません。ただ、8分26秒の井出→松橋のシーンは、石尾くんが釣り出されて空いた場所にアカデミーで10番を背負った松橋くんが入るという狙いが出たプレー。

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高安くんがイチ早く戻らなければ得点されていたでしょう。オフサイドにかからないように、ラインもしっかり小池・澤井の二人にコントロールされています。

金沢としては10分53秒のように、ロングボールを前線にフィードすると数的有利になることができます。東京Vが人数を掛けて攻めているだけに、ネガトラ時にかかる移動時間がかなりあり、すぐには戻れなかったのです。

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しかし、そこに気が付かないのか早く前へとパスを出せない金沢。開始15分まではほとんど攻撃の形が作れません。

しかし19分55秒、ライン際を使ってのダイレクトな攻撃からチャンスを生み出す金沢。

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このようなカウンターではない攻撃が有効だったのも、ヴェルディの守備陣形が攻撃によって崩れているからでした。実際、窪田きゅんはどフリーだったし、ヴェルディは金沢のボールサイドと逆のSHは捨てていました。

試合開始の最初の図で当てはめて行けばわかるのですが、どこかで数的有利が生まれていれば、どこかでは必ず数的不利が生まれる。そこが金沢のSHが「浮いてしまう」原因でした。

この試合のテーマ「先制されない事」

さらに金沢は攻勢に出ます。いろいろ挙げたい場面はありますが、象徴的な場面は43分ちょうどのボールを奪った場面です。

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混乱から解放され、奪い所がはっきりした金沢でしたがチャンスを生かす事が出来ませんでした。しかし、今回の僕の重要なテーマはそこではありません。もちろん、点が獲れるに越したことはなかったですが。(試合後コメントで「時間をかけてでも全員ができるようにしたい」と言っているので今回は何もいいましぇん)

前半に先制点を奪われた試合は13試合、その中で勝てた試合は3つしかありません。データを詳しくとっていない昨年も、先制されて逆転した試合はあまりなかったと思います。攻撃も大事ですが、先ずはいかに先制されないか。それが僕が思っていたこの試合のテーマでした。

ヴェルディが相手というのも幸いしていたかも知れません。永井監督が就任して約1年が過ぎましたが、まだ最適解にたどり着いていないという印象で、井上くんの出場停止とチーム内アシスト王の福村くんがターンオーバーでいなかったこともプラスに働きました。

しかしヴェルディの目まぐるしいポジションチェンジをするパスサッカーは、金沢のマンツーマンサッカーこそ一番のお得意様だったはずです。金沢の選手を釣り出して、空いたスペースを使いたかったからです。

歯車がかみ合わないと、全く違う結果が出てしまうのが今のヴェルディのサッカーです。サイドアタッカーの澤井くんが、何故あの位置で使われていたのかというのも興味深いところではあります。

後半開始

東京Vはその澤井くんがOUTで佐藤くんがIN。金沢はそのまま。

後半開始から東京Vは4バック化します。しかし2CBに対して金沢も2FWでプレスをかける事を考えると、同数ではあまりスムーズにビルドアップをすることができません。

なので、右SBの位置にいる若狭くんも最終ラインに加わります。その若狭くんには普通に考えれば、金沢左SH島津くんがマッチアップするはずなのですが、下の図のように東京Vには藤田くんと森田くんがいて、島津くんが若狭くんに行ってしまうと真ん中が空いてしまいます。

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後半から入った佐藤くんが本塚くんを、井出くんが藤村くんをピン止め、小池・松橋がライン際まで広がる事で、金沢の両SBの自由を奪う事には成功しました。石尾・作田の前に東京Vの選手は張り付かず、基準点がありません。前半の終盤にボールをよく失っていた東京Vは、再びペースを取り戻しました。

下の図はFootball LABから拝借した、この試合の15分毎の支配率・シュート・どんな局面があったかを示すモノです。

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後半の1/3は金沢にシュートを打たせていません。金沢に前半の31-45の勢いがパッタリと失われました。

しかし、ボールを保持している東京Vも、金沢ゴール前に選手を配していないので、最終ラインを高く押し上げてコンパクトに攻めるまでにエラーが発生(ボールロスト)してしまい、金沢が奪いどころを設定出来ていない状況でもなかなかチャンスを生む事が出来ません。

運命の交代

そして残り30分前後に両軍共に選手交代。

金沢 59分 窪田→金子 杉浦→杉浦(恭平→力斗ね)
東京V 61分 森田→山下 松橋→大久保

結果的に引き分けとなったこの試合の分かれ目は、この交代にあったと思います。

印象としては「いつもの交代」の金沢ですが、違うのは後に「ルカオ」がいるという事です。

金沢は交代した選手はそのままの位置に、東京Vは松橋くんのところに山下くんが、森田くんのところに大久保くんが入りました。

無失点の金沢、評価すべき

金沢は東京Vの井出・佐藤・小池・大久保というJ2屈指の破壊力とテクニックを持つ攻撃陣が流動的に襲い掛かる状況でも、マークをしっかり受け渡したり、必要以上に前へ出すぎないようにするヤナ将のコーチング(マジで)などで決定的な場面を作らせませんでした。結果、無失点で終えた事は非常に評価すべき点です。

何故、最適解を選ばなかった?

だから、尚更ルカオ・陸次樹の2トップにしなかった事が悔やまれてなりません。先の五連戦の初戦、山口戦は筋肉に違和感を覚えた為の交代で45分間のみでしたが、2戦目の琉球戦はフル出場でした。

陸次樹くん自体に問題が無いのであれば、ルカオ・陸次樹の2トップにしなかった意味がわかりませんでした。

ヤナ将の親心?

力斗くんが悪い選手という訳ではありませんが、まだ高校生。久保建英くんがFC東京で活躍していたのは、かなりのレアケースですから過度な期待はできません。ルカオ・陸次樹の2トップにしなかった理由はもしかしたら、勝ち点を失ってもいいから力斗くんを育てたい「親心」だったのかも知れません。

ルカオさんが久々の出場で、張り切っていたせいもあるかもしれませんが、まだ力斗くんは「周りを使って違いを出せる」FWにはなっていません。ルカオさんが入ってからの攻撃を見れば良くわかります。どれがどうとはあまり今は言わないでおきましょう。

試合終了 金沢0-0東京V

試合スタッツ

ハイライト

井出くんが目を閉じているところがサムネなのは意地悪なのだろうか・・・(笑)。

永井サッカーが身を結ぶまでにはまだまだ時間がかかりそう。日程が過密になりターンオーバーをしなければならない状況が東京Vにはあまりプラスに働いていない様子に見えました。普通の日程のリーグ戦ならスタメンを固めて、連携面でかなり結果が出せると思いますので来年以降に期待したいです。もちろん金沢以外の試合で。

一方我が軍は、年に一度の県民にアピールできるチャンスをまたドローで終えてしまいました。勝利して「ツエーゲンはつえーげん」と声高らかに職場や学校で叫ぶ機会はまた来年以降になってしまいましたが、僕のようなサッカーの見方をする者からすると、とても面白い0-0でした。さらにもしヤナ将の「親心」があったとしたなら・・・と考えると尚更ね。答えがわからないからサッカーは面白い。THIS IS FOOTBALL!


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