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2021  J2リーグ第7節 ツエーゲン金沢 VS ジェフユナイテッド千葉 先だしジャンケンの無力感

グーを出すとわかっているヤツにわざわざチョキを出すヤツはいない。例えるならいつもチョキだった千葉がパーを出してきた。ただサッカーがジャンケンと違うところは強烈なグーならパーを破壊する事が出来る。

スタメン

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金沢のスタメンはおなじみの11人。今度からおなじみのスタメンの事をオナスタと略す事としました(エロい言葉ではありません)。そのオナスタで中身も同じサッカーをやってくる事は明白な訳ですから、どれだけ相手の想像を超えられるのか。

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千葉は新井一耀くんとブワニカくんが外れ、ミンギュさんと大槻くんがIN。横浜FCに移籍したクレーベさんほどのパワーは無いにしても、ワンタッチの上手さと献身性は上回る(と僕は思っている)大槻くん。一耀くんとのポジション争いでポテンシャルの高いミンギュさん。チームの順位は低いが個人のポテンシャルが高い千葉。という事は歯車が嚙み合えばパーの掌は大きくなる。

千葉の攻撃の理由は守備にあり

千葉は4-4-2でセットする超コンパクトな陣形。基本的にはボールが基準で誰が誰に付くかは決まっている。ライン間でボールを受けて前を向くのはかなり困難な状況だった。ちなみに下の図は33分くらいの金沢の攻撃時。

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ちなみに金沢は図のように大谷くんが中に入ってFWと並んだり近い位置にいる事が多い。嶋田くんは大谷くんよりやや下がり気味の位置。瀬沼くんや丹羽くんに楔のパスを打ち込んでワンタッチで崩すという意図は感じ取られたが、成功した場面は多くは無かった。

さらに千葉は攻撃の際にも幅広く構える事は無く、そのままの「狭さ」で攻めてくる。普通ならオーバーロード(負荷のかかった状態)とアイソレーションといった密集している側と反対側に必ず足の速い選手を置いて強襲を仕掛けるのだが、全くそのような素振りはなかった。

金沢はボールを奪い獲ればCBと主に大橋くんが同列になりサリーを仕掛け左右にボールを散らし幅を取りにかかる。しかし千葉はそれを嘲笑うかのように中央を絞りボールが通る隙間を与えない。

要するに中央を絞る守備の為に幅を取らない、アイソレーションの無い攻撃をしていたのだ。千葉の攻撃はたまにショートパスを繋げる事もあったが、多くはSBやCBが大槻くんを狙うロングボールやSHの裏抜けに合わせたパスで、そこまで怖さがあるものでもなかった。

ただ、千葉の過去6節を見ると攻撃的な守備で2列目のSHの位置にいる選手は相手が来るとすぐにフォアチェックにいく。金沢からすると前がかりになる守備で相手の背中に広がるであろうスペースを使ってビルドアップしたい「はず」だった。

千葉がチョキでくるからグーのままでいいと思っていたのに千葉はパーを出してきた。金沢はいつだって先出しジャンケンなのだ。

相手の弱点を突く意識に欠ける金沢

ただ、昨年のシーズンダブルを喰らった時のように反撃出来なかったわけでは無かった。14分53秒の攻撃では数秒前に前がかりになっていた千葉左SH岩崎くんの位置を見逃さず、松田→大橋→丹羽で相手の背後にボールを動かし、丹羽くんが嶋田くんにパス、それから下の図のようにボールを動かしサイドへの展開にもっていく。

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ボールがゴールライン際に行ってしまった為に、泰基くんはうまくクロスを上げる事は出来なかったが、このような崩し方が続けばいずれ得点は生まれると思っていた。

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これは6節までの千葉の失点パターンだったが、クロスからの失点が半数を占めていた。僕の見た琉球戦でも田中恵太くんのクロスを阿部くんが見事なヘディングで押し込んでいたし、京都戦でもウタカさんのグラウンダークロスを松田天馬くんにスライディングで押し込まれている。

弱点がわかっていない訳では無いと思う。町田戦でもターゲットとしてもっと瀬沼くんを狙ってロングボールを狙えばいいと思う事もあった。瀬沼くんより町田の両CBは4~5センチ低かった。十分に勝算のある競り合いを、しつこいくらい仕掛けないのが金沢である。それは今に始まった事ではないのだが。

とにかくクロスをあまり狙わず、中央から崩す事にこだわったように見えた金沢。グーの金沢とパーの千葉との戦いは後半途中まで続いた。

コーナーキックは基準が大事

まさか小田くんが決めるとは。もちろん私もそう思った。だが173センチのSBに対して警戒心が無かったかと言えば決してそうでは無かった。小田くんが動きだしたのに気がついたマーカーの松田くんが反応してすぐに動いている。しかし、松田くんがいた場所が悪かった。というか、どうやってそうなったのかはDAZNで確認しきれなかったが、松田くんと小田くんとの間には福満くんとその福満くんにびったりと触っている後藤くんがいた。

マーカーとの間に誰かを入れて、相手から離れるというやり方は良く見られるやり方だが、主に点取り屋のやる事で千葉の狙いとしては裏をかいたという事になるのだろう。しかし、後藤くんが相手にびったり触っている事で松田くんにとっては壁の厚みが増した。

なぜキーパーが目の前にいる敵選手に対してびったり触ってはいけないかというと、自分の前に立っている選手が基準となってしまい、自分の基準を見失う、もしくは自分の基準となる立ち位置がわかっていないという事になるからです。相手に触っている事ですぐにはクロスに反応出来ないかもしれません。

しかも、ストーンとして立っていた瀬沼くんも小田くんの動きに反応出来ていませんでした。今後、コーナーキックが弱点となるかもしれません。早急に改善してくれるといいのだが。

耐える自信

さて、千葉のプランを明かしますと、何とか1点を取る事が出来ればあとはクローズ。69分に福満・岩崎の両SHを下げてボランチの小林くんとCBの岡野くんを投入。あからさまにゲームを終わらせにいく。アディショナルタイムを含めれば25分はある。耐えるにはいささか長い時間にも思えるが、去年の金沢を封じた尹晶煥さんには自信があったのだろう。嶋田くんが交代した後半26分、丹羽・大谷が交代した後半36分と時間を追うごとに自信は深まっていく。

結局のところ、金沢が失点してからは71分40秒の大谷くんが放ったシュートが唯一のチャンスらしいチャンスだった。

試合スタッツ

ハイライト

感想

同じ相手に3度も同じ手をくらって負ける。先出しジャンケンで出したグーは強烈なグーではなく、まだ普通のグーだった。それではパーの相手には勝てない。

再三、話しをしてきた次のプランが無い事や、ベンチメンバーをあまり出していない事の弊害も見られた。グーの打ち合いをしてくるチームばかりではない。より勝ち点を計算できる相手だと思われればパーを出してくるチームも当然ある。マッチデープログラム作成の為に千葉をスカウティングした僕の眼には、金沢戦の千葉は全く別のチームに見えた。

正直、前半は去年のメンバーでのぞみ後半途中から前線の4人を投入するということも出来たはず。しかし監督の哲学にはそんな駆け引きは最初から無いのだろう。ならばやはり強烈なグーになるまで先出しジャンケンをするしかない。

5年目のヤンツー体制でようやく見せた開幕ダッシュ。しかし、町田・千葉と課題がかなり浮き彫りとなった。今の3位という順位に見合う強さは身についていない。次は首位・新潟との決戦。グーとグーの殴り合いとなるのか。相手は今、まさに強烈なグーだ。




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