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変わりゆく「デザイン」の力。その変遷をWeb30年の歴史から振り返る。【まとめ読み】

デジタルデザインに関わって20数年が経ちました。

FOURDIGIT(フォーデジット)で代表をしています、田口です。

2年目のFOURDIGITにアルバイトで入社し、しばらくはWebデザイナーをやっていました。組織が大きくなるにつれてチームマネジメントをやり、自社プロダクトを作り、子会社化して代表をやり…なんだかんだあって2018年、FOURDIGITの共同代表になりました。
現在は経営・マネジメントを中心に、たまにプロジェクトに入っています。いちアルバイトから代表になるというノリなので、フラットというか、おおらかというか、楽しくやっています。

そんなFOURDIGITは今年20周年を迎えます。この20年、デザインの果たす役割は大きく変わってきました。

昨今は「デザイン思考」「UXデザイン」「デザイン経営」といったキーワードが飛び交い、もはや「デザイン」という言葉が「ビジュアル」「意匠」のみを指すわけではない、ということは一般的な認識になってきたと思います。

しかし、そうなった経緯を解説するコンテンツは………無くない?

とずっと思っていました。デジタル技術が世界に浸透していく中で、デザインに求められてきたもの、デザインが価値を提供してきたこと。その時代背景とか技術の進化とか、そういうのを知りたい。知ってほしい。

そこでデジタルデザインを取り巻くWebの30年史を、田口なりにまとめてみました。各時代ごとに色々な出来事がありました。ぜひご覧ください!

WWWの誕生、初期のWebデザイン。 【1991〜2000年】

WWWに誕生した最初のWebページって見たことありますか?当時の企業Webサイトなんか、今見るともう斬新でしかないです。マシンの表現力がまだまだ足りない時代。AppleのファーストWebは、立体のように盛り上がった文字やドロップシャドウなど、デザインへのこだわりが垣間見えます。

Windows95が発売されると家庭へパソコンが普及。日本では「テレホーダイ」が開始され、インターネットが多くの人に利用されていきます。通信やハードの進化が、Webの世界とデジタルデザインを加速させました。しかしまだ接続時にFAXみたいな音してた頃です。この頃に現在の巨人、Amazon、Googleも生まれています。

1998年、iMac発売。「嘘でしょ?PCがかわいい…ほしい…」となり、みんな「デザイン」の存在にちょっと気づきました。同時期にポストペットが流行。PCと通信は市民権を得ていきます。そして99年、2ちゃんねるとNapstarの誕生。一方向の情報発信ではなくユーザーがコンテンツを生成するというカルチャー。現在のSNSやBlogなどに繋がる、Webでのコミュニティが価値を発揮し始めました。

Appleの華麗なるデザイン。 そしてFlash黄金時代へ。【2001〜2007年】

iPod……ああiPod。僕にとっては、これこそがデザインか!と衝撃でした。ハードウェア、ソフトウェア、プラットフォーム、プロモーション、マネタイズ、どこを切り取っても素晴らしかった。プロダクトそのものでなく、人の活動にフォーカスし欲しいものをつくる。描いた理想を実現するために、あらゆる道を切り開く。これがサービス&ビジネスデザインの極み。

Flashすごい。Flashによって、今まで見たことのないような体験が、モニタ越しに届けられるようになりました。とにかく発想さえあれば、新しいことができそうな感じ。当時のクリエイターは「何か新しいもの!まだやられてないこと!」とみんな思っていました。2003年にはMySpaceとLinkedIn、2004年にはmixiといったSNSが登場。Web上でのコミュニケーションが大きく変わっていきます。

この頃からインターネット広告が大きく成長。バナー広告はFlashのおかげでどんどん過激になり、最終的には迷惑極まりない表現に。全画面ジャックしたり、バナーから侍が飛び出してページをぐちゃぐちゃにしたり。RIA(Rich Internet Application)という言葉が広がって、インタラクティブなフォームなども流行りました。またGoogleの進化に合わせて、SEOや解析などの技術も浸透。デジタルマーケティングの考え方が深まっていきました。

Flashによるクリエイティブの盛り上がりは最高潮に。カンヌライオンズ、クリオ賞、One Showの世界三大広告賞を獲得するデジタルクリエイティブが日本から誕生しました。それが「UNIQLOCK」。Webはテレビや新聞、雑誌などのメディアと並び、「新しい表現場所」として上り詰めていきます。

iPhoneの登場。すべてが変わっていく。【2007〜2009年】

全面タッチパネル+ワンボタンのプロダクト。「スマホ」が登場しました。そして「アプリ」という概念の誕生。人々のデジタル体験が明らかに大きく変わった瞬間です。「Human Interface Guideline」は、Appleのインターフェイス設計思想をまとめたもの。iPhoneアプリ審査指標のひとつとして多くの人に読まれたことで、デジタルデザイン業界に大きな影響を与えました。

2008年9月、リーマンショック。その波が日本にも届き、デジタルデザイン業界にも大きな影響が表れます。平たく言えば、結果が見えづらいもの、成果が見えづらいものに対して予算が付かなくなりました。派手なフルFlashどーん!みたいなものは減り、ROI(投資対効果)が重視されていきます。そしてFacebookの登場。SNSの世界にも大きな変化が起きた頃でした。

デジタルはリッチからリターンへ。【2009〜20011年】

リーマンショックの影響が続き、デジタル領域でも実質的な成果が求められます。Webはリッチなクリエイティブ表現の場所ではなく、経済活動に組み込まれていきました。この辺りから、企業におけるデジタル戦略は複合的で高度になっていきます。その裏にはAWSをはじめとするクラウドサーバーの競争、フロントエンドにおける技術的な変化がありました。

2010年にiPadが発売。タブレット端末が普及したことで、さまざまな閲覧環境へ対応する「レスポンシブデザイン」が登場します。最終アプトプットより手前にある、どういう情報構造にするのか?までもがデザインの領域に。構造・骨格のレイヤーに、デザイナーが踏み込んでいくことになります。

Flashの終焉と、フロントエンド戦国時代の到来。【2012〜2014年】

Flashが終焉に向かっていく中、ブラウザでリッチな体験を目指していくことになります。リッチコンテンツを支えるWeb標準技術が一気に進み、フロントエンドエンジニアという職業ができました。マーケティング領域では低品質なリンクを排除するペンギンアップデート、アプリ領域ではコンプガチャ違法問題など。デジタル業界の倫理観が問われた時期です。

「UXデザイン」がバズる。欧米でコンサルティングファームや事業会社が、次々とデザイン会社を買収する流れが起きました。ビジネスの経営上、「デザイン」がインパクトを生み出していることがわかってきたわけです。デザイン会社は独自性を高め、それぞれのサバイバル戦略が始まります。

画面の外へ広がるテック。デザインのあり方も変化。【2015〜2017年】

DX(Digital Transformation)、IoT、〇〇Techといった活動が大きくなり、デジタルデザインの求められる場所はWebの外へ広がっていきます。オンライン・オフラインの垣根が無くなり、デザインは体験全体の品質と魅力のクオリティを求められることに。それに対応するための技術や思想も進化していきます。そしてデザインはビジネスに必要不可欠になる!と提唱したのが、ジョン・マエダでした。

デジタルデザインの役割は、本当に多岐に渡っていきます。同時にブラウザ上の操作でWebサイトやECを作成できるサービスが発達し、「単に作る」ことの価値は低減。ビジネスやユーザーにとって何が価値があるのかを見据えてデザインすることが、プロフェッショナルとして求められていきます。

デザインが提供すべきものは何か?【2018〜2019年】

人々の生活はデジタル技術によってじわじわと変容していきます。色々発展したっていうけど、で、何が良くなったんだっけ?一部の金持ちを生んだだけじゃない?私たちはテクノロジーをどう使うべきなのか。本当に提供したいことに向き合えているのか。デザインで解くべき大きな問いは、ここにあると思っています。

オリンピックがあったはずの2020年。コロナの到来により、生活と価値観に大きな変化がありました。歴史を振り返ると、リーマンショックの後も、震災の後も、私たちは必ず立ち上がって前進してきました。素晴らしいアイデアを持って目の前の課題に向き合ってきた人たちが、今を作っています。

本当に大事なものは変わらない。

デジタルデザイン業界が大きく変わる要因は、技術・マーケット・人々の生活の変化。これらに向き合ったデザインしか、生き残ることはできない。と30年の流れを振り返って感じました。逆に「大事じゃないこと」も見えてきたように思います。

こうして歴史を振り返ると、デジタルの世界は競争が激しく浮き沈みも大きい。技術はすぐに進化・変化し、10年ごとに世界の光景が全然違っています。

しかし変わらないものもあります。「本当に大事なものは何か?」ということ。コロナ禍の現在を見ると、今後この問いが顕著になっていくだろうと感じています。

現在起きている生活の変化は、そもそも満員電車に乗りたくなかったとか、そもそももっと家族と過ごしたかったとか、「本当はそうすべきだったけど出来てなかった」ということ。それ以外の「今は我慢しておいた方がいいこと」は一時的な変化で定着しないはずです。そうして残っていくのは、本当に必要で大事なもの、プリミティブな欲求に近いものだと思います。

デザインの役割やビジネスニーズは時代とともに移り変わっていきますが、本当に大事なものは変わらない。そういうのって、あるよね。

「今」と「未来」を同時に作り続ける。

技術・マーケット・人々の生活が次々に変わっていく、ということを前提に考えると、「今」を作る活動と「未来」を生む活動を同時に行うことが必要になります。成長企業はみんなそうしている。言い訳抜きで向き合っていかねばと感じます。そんな覚悟とともにFOURDIGITの20年を締め括り、21年目をスタートしていきます!

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……と振り返りながら書いていたら、トータル11万文字を超えてしまったのでした。大体一冊の本になるぐらいだそうです。本や論文の最後には「謝辞」というものがありますけど、あれ書きたくなる気持ちが分かりました。長い文章を書くと、なぜだか感謝の気持ちが生まれますね(笑)。

というわけで、執筆に協力していただいた皆さんはもちろん、興味を持っていただいた皆様にも感謝。そしてあらゆる先人たちに感謝。

この振り返りが、デジタル業界で一緒にデザインへ向き合う、誰かのためなったら嬉しいです。