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『途方もなく』

郵便局への 道すがら

そして 帰り道

メガネを外して 泣くに任せた

こと あなたに関しては

もう恥も外部もないのだ

見栄やら プライド やら 変な 意地やら

とっくのとうに 砕け散った

あるのはただ

狂おしさだけである

お風呂から上がった あなたの裸体に

ヘパリンとロコイドのクリームを塗った

冷たくないように

手のひらでクリームを温めながら

あなたの背中

あなたの肩や腕

あなたの胸やお腹

いとしげに垂れる 陰茎の周り

あなたの太ももや脛

私はいつも下手くそだから

こういうことでしか

あなたにいいことができない

気の利いた言葉なんか出ず

いや もともとそんなものは持ち合わせておらず

あなたがあんなに愛した 昔の顔ですら

私は自分で勝手に壊してしまった

私は誇れるものが何もないのだ

あるとしたらただ

ただ

あなたへの

恥も外部もない

見栄も プライドなんかも意地なんかも

そんなもんとっくにないような

一途さだけである

私はあなたの前では泣けない

だからいつも外を歩く時

あなた そのもの

その一つの命に対し

途方もなく泣くのである

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