『よう！兄弟!!』

あなたとは 散々 軽口を叩き合って

恐ろしく 派手な 怒鳴り合いの喧嘩をしたり してきた

「 よう！ 兄弟!!」

私たちは互いに そう 言い合ってきた

あなたはいつか こういった

「 あなたを選んで、 俺は他の人間関係を全部絶った。 おいお前、 俺を見て俺と 話せ！」

今私はこうだ

あなただけを選んで、 もうずっと 誰とも連絡を取っていない。 おいお前、 私を見て私と話せ！

と言いたいところだが

どうしたことだろう

近頃の私は日がたつにつれ

あなたを変に意識してしまって

どうにもドキドキして 軽口が叩けない

まるで男の人と初めて話す みたいで

まるで あなたが 私が話す初めての男の人みたいで

私のこの緊張と来たら

会話のしっぽ さえ つかめない

もどかしくてもどかしくて

私はカチンコチンに緊張し

長座布団に転がったまま ただあなただけを見ている

何かを言おうとすると 頭の中が真っ白になる

あなたに 声をかけようとすると 自分は邪魔かなと思ってしまう

声を発する その時 心臓が高鳴って

何を喋っていいのかもわからなくなる

昔あんなに

「 よう！ 兄弟!!」

そう言いながら

男同士みたいに語り合ったのに

私は今

自分にからっきし 自信がなくて

例えば 髪の毛を少し 整えた方がいいのだろうかとか

例えば 例えば

あなたを笑わせるには どうしたらいいんだろうかとか

気楽に 気軽に あなたと 軽口を叩き合うには

本当にどうしたらいいんだろうと

意識しすぎて 訳が分からなくなってしまった

私の無言は 私の目線は 私は頭の中は

あなたに気安く 声をかけたい

そんな 瞬間ばかり 逃して 悔いて 勇気が出なくて 汗だけ出て

全く どうしたことだ

まるで私は生娘で 初めて恋をした 男の人に どうしたらいいかわからなくなっているような

毎日がそうである

昔のようにあなたと 肩を組み

「 よう！ 兄弟!!」

破天荒な男同士のように

どうしようもない 軽口ばかり 叩きあいたいのに