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『独り占めしたいのだ』

あなたへの

私の中の仄暗く 熱く 渦巻く 欲望は

あなたとの 年月を重ねるたびに

あなたとの 1日1日が 深まるごとに

今この時

この時が 瞬間瞬間瞬間 重なるごとに

どうしようもなく マグマのようである

あなたの肉も 骨も 頭髪も 爪も

あなたの心

その隅から隅まで

私が奪いたいのだ

私が食べてしまいたいのだ

あなたの時間

あなたの生

そして あなたの死をも

あなたが死んだあと

私がその遺体に

口づけをしたり 頭髪の匂いを嗅いだり

さんざん 撫で回して

口づけで あなたを 私の唾液だらけにすること

その

死後の余韻 その時間

それら全てを

私のものにしたいのだ

離れたくない

いや離さない

あなたを誰にも渡さない

あなたの どんな時間も

あなたの 絶命の時も

その後のニ人の時間も

あなたの魂が 私に取り憑くように

あなたの 冷たくなった肉体を

私だらけにするように

忘れられなくするように

あなたの魂が 私に根負けして

私から離れられなくなるぐらい

あなたの死後の 余韻の時間

全てを独り占めしたいのだ

あなたの脇の下の匂い

あなたの頭髪の匂い

あなたの吐息の匂い

毎晩 確かめる

私が 忘れないためだ

あなたの皮膚の匂い

あなたの匂いを これでもかというぐらい

鼻腔の中の 細胞という細胞に 記憶させ

あなたの肉に ベタベタに 唾液をつけて

口づけだらけにする

あなたの死の時も

死の後の余韻も

手を握り続け

私はこんな風に

あなたの肉体を 私だらけにしたいのだ

あなたのこの時を

絶命の時を

誰にも渡したくないのだ

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