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NBAへの挑戦:渡邉雄太の夏 Part 2(GリーグはNBAの通過点?)

先週、渡邉雄太選手がメンフィス・グリズリーズと「Two-way契約」を締結するという嬉しいニュースが飛び込んで来た。

渡邉に関しては、もともとドラフトでの指名は難しいと言われていただけに、サマーリーグの結果如何ではいきなりNBAのチームと契約できるか、またはTwo-way契約で一旦Gリーグでプレーするか、はたまた海外(Bリーグも含め)、もしくは米国に残ってGリーグのチームと契約(One-way)してNBAを狙うか、大きく選択肢は4つあったと言っていい。

NBAでのプレーを目指すならGリーグが1番の近道

渡邉のようなNCAAである程度の実績を持ちながらもドラフトにかからなかった選手たちは、これまではGリーグの給与が極端に低かったため(昨シーズンUS$26,000/シーズン)、欧州や中国など一旦海外でプレーする選択肢を取るケースも多く見られたが、昨年からNBAが「Two-way契約」を導入したことで、サラリーベースが上昇(最低約US$75,000/シーズン)。さらにこのTwo-way契約の導入はNBAのマイナーリーグ組織改編本格化の表れであり、NBAの各チームにGリーグ傘下のチームを持たせ、NBAとGリーグのパイプを強固なものにし、双方リーグ所属選手の行き来をより柔軟に、活発にさせることを目的としている(現在はNBA30チーム中26チームがGリーグに傘下のチームを保有)。

すでに昨シーズン終了時点で、NBA全体の最終ロスターの53%がGリーグを経験している選手であることを考えると、GリーグはまさにNBAへの「登竜門」であり、今後ますますGリーグを経てNBAでプレーする選手は増えていくことだろう。

さて、渡邉のTwo-way契約によって、その契約に関するニュースや記事をよく目にするようになったが、実際にGリーグの選手はどのような契約下でプレーしているのか少し調べてみた。以下、大きくGリーグには4つの契約形態があると考えてもらって良い。それぞれ比較をしてみているので以下をご覧いただきたい。

*NBAドラフト指名の資格を有する選手はCall Upの対象にはならない。

NBA契約下にある「NBA assignment」は例外として、Two-way契約以外にも上記の通りNBAへ行くチャンスはある。

ミシガン大学時代のスター選手であるトレイ・バークは、昨シーズン前にニックスから解雇されるも「Affiliate player」としてニックスのGリーグ傘下(ウェストチェスター・ニックス)でプレーし、そこでの活躍が認められ、シーズン途中にニックスとNBA契約を締結している。度重なる怪我でNBAから姿を消したかに思えたエメカ・オカフォーも、昨シーズン同様の契約下でGリーグでプレーしており、シーズン途中に見事ペリカンズでNBA復帰を果たしている。

またご覧の通り、GリーグのOne-way契約やAffiliate Player契約は、給与面の条件はTwo-way契約と比較して劣るものの、どのNBAチームからも声をかけられる可能性があり、選手によってはTwo-way契約を選択せずにOne-way契約で30チーム全体から声がかかる機会を待つ選択肢を取るケースもある。

渡邉雄太のNBA出場の可能性は?

さて、気になる渡邉の今後であるが、上記表の通り、Two-way契約は事実上NBAチームの16・17番目の予備ロスター選手という位置付けである。もちろんGリーグでのある程度の活躍は必須だが、NBAチームが選手をTwo-wayで契約するということは、ロスター登録枠に怪我人や不振の選手が出てくれば、代わりにその枠にTwo-way選手をスライドさせてNBAに上げるという意味でもある。

昨年シーズン前にTwo-way契約した選手は全部で54名おり、出場時間の差こそあれ、少なくとも全選手1試合以上はNBAチームでプレーしており、渡邉も時間の問題だけで今シーズン中にはどこかで必ず「メンフィス・グリズリーズ」の選手として出場する機会があると言って良い。ただもちろん出場することができたとしても、NBAの本契約にこぎつけられるかどうかは、Gリーグでの著しい活躍と出場機会を得た所属NBAチームでの活躍の両方が求められる。無論、Gリーグで活躍できていなければNBAから求められることはないし、例えそれでプレーする機会を得られたとしても、またそこである程度の活躍で成績を残さなければ本契約への道のりは険しい。

クイン・クックはTWO-WAY契約からNBA本契約を勝ち取った代表的プレーヤー(写真:Orlando Ramirez-USA TODAY Sports)

昨シーズンTwo-way契約からNBA契約に切り替わった代表的な例は、ウォリアーズのクイン・クックで、傘下Gリーグのサンタクララ・ウォリアーズで29試合に出場し、平均25.3点、8.1アシスト、4.6リバウンドの好成績を残し、かつカリーの怪我による長期離脱によってNBAでプレーするチャンスを得ることができた。NBAではキャリアハイの30得点を記録するなど結果を残し、昨シーズン途中プレーオフ前にゴールデンステート・ウォリアーズと2年契約を締結し、プレーオフ1回戦では怪我のカリーに代わる貴重な戦力としてプレーしている。

過去にGリーグでの活躍が認められNBAの本契約に至った代表的プレーヤーは、他にも76ersのコヴィングトンやヒートのハッサン・ホワイトサイドなどがいるが、いずれもGリーグで著しい活躍をして結果を残した選手たちである。

ただ、ジェレミー・リンのように何度もマイナー落ち(当時はNBDL)を経験しながら、数少ないNBAでの出場機会にとてつもないインパクトを残し、大型NBA契約を勝ち取ったケースもある。

NBA契約までには長く、険しい道のりがあることに間違いないが、Two-way選手は必ずNBAでの出場機会は巡ってくる。その数少ないチャンスでいかにインパクトを残すことができるかが、NBA契約を勝ち取る大きなカギある。サマーリーグの数試合でインパクトを残せた渡邉雄太なら、必ずそのチャンスをものにできる。そう信じてNBAデビューまで彼にはエールを送り続けたい。

参照:

https://gleague.nba.com/

https://www.sbnation.com/nba/2017/7/18/15985262/nba-two-way-contract-2017-summer-league-agents-worried-about-them

https://collegebasketball.nbcsports.com/2017/04/27/d-league-salaries-two-way-contracts-increase-nba-draft-early-entries/

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