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ひつじを数える

子供の頃、眠れないときはひつじを数えるといいと教わった。頭の中で「ひつじが1匹、ひつじが2匹、ひつじが3匹……」と数えていればだんだん眠くなって気づいたら寝てるから、と言われた覚えがある。どうしてひつじなのかと疑問に思ったこともなければ、ヤギじゃだめなのかと反抗的な態度をとったこともない。

ある晩、旦那が眠れないと言うのでひつじの起用を提案したら、きょとん顔をされたので丁寧にレクチャーすると、早速まぶたを閉じて数え始めたようだったので放置していたら「逃げるんだけど」と言ってきた。え、何が?

どうやらひつじたちが動き回ってうまく数えられないらしい。彼のひつじは放牧系のようだ。わたしの場合は右から1匹ずつ入場してくる。入ってきたひつじは左端から順に横並びで整列していき、右端まで埋まったら次は二段目に突入するという仕組みだ。四角い箱にひつじがすし詰めにされていくようなものだと思ってもらえればいい。どこまで数えたか分からなくなることはあっても、逃げられたことは一度もない。旦那が同じようにやってみると言うので再び放置していたら、「コピペ(コピー&ペースト)したほうが早くない?」と言い出した。いやそれでは意味がない。どうすれば効率的かつ迅速にすし詰めできるかに力を注いでしまっている。ゴールは眠りにつくことなのだ。

そもそもひつじを数えたら眠れると言い出したやつは誰なんだと検索したら、諸説あるが元々は英語圏で始まった文化のようで、ひつじを意味する「sheep」(シープ)と発音することで深い呼吸が促され、体がリラックスして眠りにつきやすくなるとのことだった。睡眠を意味する「sleep」(スリープ)と綴りが似ているという言葉遊びでもあるようだ。

どおりでひつじを数えて眠れたことが一度もないわけだと納得すると同時に、自分がなんの役にも立っていないと知ったらひつじたちはどう思うのだろう、と少し心配になる。大してお世話になったわけではないけれど、次に眠れない日は何食わぬ顔でひつじを数えようと思う。

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