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〈すみだクラシックへの扉〉へ。

新日本フィルハーモニー交響楽団
すみだクラシックへの扉
指揮 佐渡裕
ピアノ 辻井伸行

こちらに行ってきました。以下、感想。

バイオリンの音って、こんな音だったっけ?(とてもいい意味で)
初めの弦楽器だけの曲を聞いた瞬間、そう思った。目隠ししたら何の音かわからないと思う。ほどに、やわらかくって軽やかでなめらかな音色。新日本フィルの演奏、佐渡さんの指揮、すみだトリフォニーホールの音響がそう聴かせるのか。
指揮者の佐渡さんはまるで風を集めているみたいに指揮棒を振っていた。草原に吹く風を操っているみたい。草原の花々はひとりひとりのバイオリン奏者たちで構成されていて、花の種類の違う管楽器、ときどき飛んでくる鳥のように生命力みなぎる打楽器を自由自在に扱い、野原の音楽を完成させる。佐渡さんの、少年のように自由で、楽しくてたまらないといった指揮の振り方がすごくよかった。

演奏が終わったあとの割れんばかりの拍手で、ああ、こんなにも多くのみんなと聴いてたんだって思う。演奏もすばらしいし、それがこうやって聴けるようになった喜びが拍手の力強さに滲み出ている。胸が、目頭が、いっきに熱くなる。

そして辻井伸行さんの登場。佐渡さんと兄弟さながら寄り添い、手を取り合ってピアノのところまで出て行かれる。辻井さんの演奏はもちろんのこと、辻井伸行さんという存在自体をみんなが心待ちにしてるのが入場時の拍手のボリュームで伝わってくる。
演奏中、ハッとする。辻井さんは指揮者の動きを見られるわけではない。だけどそれ以上のものを一心に汲み取っているのだろうか。佐渡さんの息づかい、ほかの演奏者たちが織りなすうねり。それと融け合うようにして演奏していくだけ、という簡単な答えが返ってきそうなほどなんの問題も感じない。公演冒頭で語られた佐渡さんの言葉を思い出す。「伸くんとはテレパシーで繋がってるんじゃないかって思う」

全演奏を通して、「クラシック音楽」「オーケストラの演奏」「楽器の音」を聴いている感覚ではなくて、かなしいときに自分の内側に聞こえてくる音、歓喜のときに全身に走る熱みたいな音、のように効果音を聴いてる感じが常にあった。作曲家の想いに忠実で純粋な演奏だからこその体験なのではと思う。個人的にはオーストリア・ウィーンでの楽友協会、黄金のホールで涙した演奏会ぶりの佐渡さんの指揮をお目にかかれて胸にくるものがあった。それに辻井さんの演奏も聴けるというなんとも贅沢な日。〈生きてこられてよかった〉な日がまたあった。



ここで突然、
🤹🏻‍♀️プチ・トイレ情報
すみだトリフォニーホールのトイレはシンプル。便器のフォルムもすっきりしていてタンクレスか、埋め込み式か。手狭な個室も広く感じる。張り紙はただひとつ。〈フタをしめて流してください〉。その他に注意書きなし、広告なし、タンクなし、フォルムすっきり、除菌スプレーも音姫も付属品なし。それでいて清潔感がある。本来トイレとは、こうあるべきはでないか。

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