極めて個人的なボカロ振り返りメモ

 前回の記事でボカロを語ることに味を占めた私ですが、そのときの「マジカルミライ2020を布教する」のような明確な目的が無く、何を書けばいいかわからなかったのでメモという言い訳をして2020年を振り返ってみます。
 日記的な内容はnoteには不向きかもとも思ったのですが、ちょっとした気付きもあってせっかくのなので。

 というのも、2020年は「ボカロを聞くこと」に対して個人的に視野が広がった年なのです。あるいは、考え方が変わったともいえるかもしれません。

 きっかけは、ほとんど使っていなかったTwitterアカウントをボカロ垢として運用し始めたことにあります。2019年の暮れに唐突にボカクラに行きたいと思った私は、タグなどから無差別にボカロ関連アカウントをフォローしました。(当時唐突に無言フォローを飛ばした方々、すみません。フォロバしてくださった方はありがとうございました。)(リアルの知り合いどころかリプしたことある人もいないクラブ経験なしボカロ厨のぼっちボカクラ体験記は近日公開します。)
 そして、ボカクラに実際参加したり(わずか2回ですが)、TLを眺めたりして、様々な発信する熱いボカロ厨を目の当たりにしました。ある人たちはボカロを聞くとともにその情報でクイズを楽しんでいる。ある人たちは曲の文脈を見出し、巨大感情のぶつけどころを探している。中には○○は受け入れられない、というような尖った主張も見かけました。当然といえば当然なのですが、いろんな人がいろんな聞き方をしているのだと実感しました。ええ、小並感。でも、私にとっては結構大事な考え方でした。

 ところで皆さんは、VOCALOIDは一人で聞きますか?
 当たり前だろ、という声が聞こえてきそうですが、実は私の場合、一人で聞くこともあれば、そうでないこともあったと思うのです。

 私がVOCALOIDを聞き始めたのは中学生の時でした。当時は毎日ニコニコ動画を見ていて、総合ランキングには常に目を通していました。そして友人とこの動画が良かったなどと言い合っていました。高校進学後はバラバラの学校でしたが、長期休みの度にカラオケに12時間のフリータイムで入っては彼らがボカロ曲を入れると、わかるこれいいよな、なんて考えていたと思います。このころの私は友人たちと同じ曲を聞いて、感想を共有していました。もちろん私がボカロ曲が好きだったことは間違いないのですが、今振り返ると、純粋にボカロを好んで聞いていたというより、皆でニコニコで遊んでいた結果そうなったという感じだと思います。そういう意味で、私は一人でVOCALOIDを聞いていなかったのです。

 ところが、ニコニコにおけるボカロの雰囲気が変わってきたことや、それぞれの生活にも変化があったこともあって、その友人たちと遊びはすれど、ボカロの話をすることは減っていきました。丁度このころ私も受験等で忙しくなり、ランキングを網羅しなくなったのですが、代わりに勉強用のBGM探しも兼ねて、再生数上位の曲ばかりではなく、今まで見逃していたくらいの再生数から曲を探すということにハマります。この時代は誰かの同意を求めることも減り、むしろ自分好みの曲を発掘することに楽しさを見出していたように思います。
 この時が私にとって、ボカロを一人で聞いていた時代です。とはいえ、そうやって見つけた曲こそ、好きな気持ちを共有する瞬間は格別で、一部のわかってくれる人には早口で喋っていたのですが。

 そんな中、ボカロ最近盛り上がってないよね、何て言われる時期が来ました。僕は一人で当時のボカロシーンを楽しんでいましたが、新たに知り合う人たちが「昔は聞いていたんだけどね」と口々に言うので、そういうものなのかなとも思いました。まあ結局ボカロは全然死んでなかったんですけどね。私を勝手に終わらせないでってなもんよ。本当、それ以降のボカロ曲もすごいんだから。そんな中で行われた初音ミク10周年記念企画はもうはちゃめちゃに盛り上がったんだから。
 そのようなタイミングで、前述のわかってくれる人の一人がマジカルミライに連れて行ってくれました。前の記事と内容が重複するので割愛するのですが、会場でボロ泣きした私はボカロが好きな人たちの存在を強く意識するようになりました。やっぱりボカロ曲はみんなで聞いていたんだ、と。

 ただその後に、また人と聞く時期になったかというと、実はこれは判断が難しいところなのです。いくつか理由がありますが、一つには、私自身が強めの自我を持ってボカロを好きになっていたこと。自分の気の向くままに曲を探す楽しさにハマっていたし、皆にとってのアンセムじゃない曲で好きな曲が増えすぎていたのです。
 そしてもう一つは、ニコニコではなくYouTubeを見るようになったこと。ランキングや自然に目に入るコメントがなくなった結果、昔のように意識を共有することが難しくなったと思います。しかし、マジカルミライで流れる曲は全て知っている曲であってほしい(その方が楽しいから。個人の感想です)。結果、自分の好きに聞くのを楽しみつつも、マジカルミライで流れそうな王道は押さえるためボカロ曲を「聞きにかかる」という姿勢を取りました。ボカロに詳しくありたいという気持ちもあったかもしれません。
 ここまでが2019年の話です。

 そんな中途半端さを抱えた中で、私にとって、存在を意識こそすれど名前のなかったボカロ好きの人たちの声を聴いたのが2020年だったのです。初めは戸惑ったように記憶しています。皆が話している文脈や持っている感情で理解できないものも多々あったので、ボカロ好きたちの作っている潮流に全然付いていけていないように感じたのだと思います。ただ、しばらく見ていると、彼らは彼らで、私の趣味嗜好や私が友人たちと語り合っていた文脈で持っていないものもあることもわかりました。いろんな人がいろんな聞き方をしているだけ。彼らの楽しいようにやっているだけでした。彼らがボカロリスナーの王道でもないし、私も違う。そして思ったのが、何なら今のボカロに王道なんてないのかもしれない、ということです。

 今のボカロの聞き方は、昔と違ってきていると思います。2008,9年頃にニコニコでボカロを聞いていた人たちはryoやkzがいて、ハチwowakaがいて、kemuじんトーマがいて……という流れを共有していることが多いです。時々見かけるボカロ文化の振り返り記事でも、また、周りの同世代の人間と話していても、この辺りの時代に対しての感想や思い出は大体一致します。
 でもそれ以降、この時期はこうだったという話になると意見が分かれることが多いのです。具体的な話では、最近「私ボカロ聞きます」という人と会った時に、聞いてる曲をすり合わせるのが難しいのです。ボカロをボカロという括りで語るのが難しい時代がきているのかもしれません。でも、それでいいと思います。
 ボカロPをやっていた人が人の歌う曲を発表して、ボカロを聞かない人にも届くようになって久しいです。もはやボカロ曲、ボカロ発とそれ以外の境界は曖昧です。捉え方によっては、ものすごく広い世界に繋がっているといえます。そんなに広い世界なら、何をして過ごしてもいいと思うのです。個人個人で楽しんで、隣の話の合いそうな人と時々話せばいいと思うのです。私よりたくさんの時間多くのボカロ曲を聞いている人や、他の音楽的知見を持ってボカロ曲を聞いている人たちも、それぞれ違う好きなことを言っている。私の意見も同様にあっていいのだと思うようになったのが今年の変化でした。

 ここ何年か、ボカロを聞きますという人とうまく話せないときに難しさを感じていたのですが、今はまあいいかと思えています。自分の知らない曲がたくさんあるのも、だいぶ受け入れられます。「今ボカロは○○の時代」というまとめ記事に納得できなくても、マジカルミライOfficialアルバム収録曲が知らない曲ばかりでも、別に私が浅いわけではないのです。個人で聞いて個人で感じていいのです。それで個人のボカロが好きという気持ちは否定されないのです。

 この意見にピンとこない人もいるでしょう。何なら数か月後には、私自身これと違う考え方をしているかもしれもせん。でも、それもまた、個人の好きにしたらいいってことなので、多分大丈夫です。

 という、個人的な気付きの話でした。



 蛇足なんですが

 自由な気持ちで好きになった曲を聞くのや、その思いが分かりあう瞬間というのが今の僕にとって一番楽しいので、そんな感じでやっています。それはそれとしてマジミラではライブを楽しむために知ってる曲をやってほしいので攻略という態度は崩さないと思います。
 それと、分かり合おうと無理しなくなっても、マジで初対面でボカロの話するの難しいんですけどどうしたらいいですか。いや、私のコミュ力の問題は置かせていただいて、相手がどういうのを聞くのか全然当たらない。2012,3くらいまでの曲の話なら3,4人ボカロP挙げれば誰かは当たったけれど、今は何の話すればいいのか全然わからないです。アッアッ。
 あと、YouTubeでボカロを聞くとランキング機能がないから聞く曲は個人化していくかと思っていたのですが、関連やオススメに出る曲を聞くとなるとYouTubeに誘導されて皆同じ曲を聞くようになるのかと思ってよくわからなくなっています。ニコニコに比べて検索機能が使いにくくて発掘がしにくいという話も聞きます。どうなんですかね。YouTubeによってボカロ視聴は個人化しましたか?
 また、TikTokはわからないので、そこで作られるボカロ文化について知っている人は今度教えてください。
 個人的な振り返りって自分のことを振り返るんかい、という感じになってしまったので、個人的に印象に残った2020のボカロ関連の出来事の振り返りもできたらなと思います、抱えている締め切りをどうにかしてからですが。

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