初めてのイル活とその悲劇②

ドアノブ・ハンガーの正体はわかった。さて、ユニバとウィバス、どちらのサイトでCDを買おうか。もう一度おさらいしておくと、ユニバの特典がメンバー全員分のフォトカードとドアノブ・ハンガー、ウィバスの特典がオリジナルキーホルダーである。

（フォトカードほしいし、今回はユニバにしようかな）

ようやく決心しようというとき、ある事実が脳裏をよぎる。

「あれ私の家って、ドアノブないな」

そう。我が家にはドアノブがないのだ。厳密にいえば家の２か所にドアノブは存在しているが、いずれにせよ私の部屋のドアではない。家族の共有スペースに推しのグッズは置きたくないと思っている。

今住んでいる家は、この秋で築１０年になる。注文住宅だったため母のこだわりが多く詰まっているのだが、そのうちのひとつがドアである。ドアノブのついたドアは開閉にスペースを要するため、家のほとんどのドアを引き戸にしたいとのことだった。十分に納得できる理由であった。誰一人としてドアノブへの執着がなかったということもあり、母の要望通り現在の家が建った。

というバックグラウンドがあってのドアノブ・ハンガーである。こんなことがあってもいいのだろうか。家を建てる際のほんの小さなこだわりが、１０年後の私のオタ活にこんな悪影響を及ぼすなんて。そして私はまた、悪しきドアノブ・ハンガーに頭を悩まされることになった。

７月が終わる頃、私はまだどこのサイトでCDを購入するか決められずにいた。

（まあ焦ることはない。発売は８月の１９日だし、いったん前期分の課題を終わらせてから考えよう。）

私はこの、「課題終わらせてからやろう」精神に何度振り回されたかわからない。趣味と学業を両立できているように見えて、この発言、実はただの後回しでなのである。人が行動を起こさないとき「○○が終わってから」、「○○が忙しくてまだできない」などと理由をつけるのも、実際はただの言い訳である。自分以外の他のどこかに原因があるように見えて、本当はドラマを観る気も本を読む気もないのだ。今一番自分がしたいと思っていることは無意識のうちに取り組み始めているはずである。現に、私も２か月前ほどに観始め、課題を理由に観ることを中断している「愛の不時着」そっちのけでこのコラムを書いている。ゆえに、私が今一番したいことはこれなのである。

そして結局、どこのサイトで買うか決められないまま８月に突入した。ここから怒涛の悲劇が重なる。

８月５日。公式サイトから各特典の絵柄が発表された。

（特典のビジュさえわかってしまえばもう迷う必要はない。やっとCDを予約できる・・・！）

そんな私の淡い期待をいとも簡単に裏切った特典の絵柄がこちら。

（上から、ウィバス特典オリジナルキーホルダー、ユニバ特典ドアノブ・ハンガー）

・・・。微妙。微妙ってか普通・・・。というかダサいな・・・。（言った）てかドアノブ・ハンガーって本当にこれじゃん・・・。本物のドアノブ・ハンガーじゃん・・・。（別に偽物などない）

これを見た私はやっと決心した。

「よし、ユニバで買おう。」（激遅）

しかし、この時まだ謎の余裕を感じていた私はまた予約を後回しにした。（大バカ者）この行動がその後の自分の運命を大きく左右することになるとはつゆ知らず・・・。

翌朝、朝一番にツイッターを開き目にした文字。

「ユニバ５形態売り切れ」

嘘だと思った。色々なことが頭をよぎったが、最終的にはかなり後悔した。もうここまで来てしまえば昨日の夜とかの話ではない。詳細はもっと前から出ていたはず。単に私の行動が遅すぎたのだ。ショックを隠せないままTLをスクロールする。時々目にする「買っといてよかった～！」のツイートに、心の中で小さく舌打ちをする。八つ当たりはよくない。

ユニバで売られていた５形態セットが急に在庫切れとなった原因として考えられていたのは、やはり特典のダサさだった。「ウィバスのキーホルダー思ったよりダサかったな・・・。ドアノブ・ハンガーいらないけど、フォトカードほしいしユニバにしちゃお！」誰もこんなこと口にしていなかったが、大体みんなこんなところだろう。オタクの心理は単純である。

翌日、ユニバ５形態の在庫が復活しているとの情報が入る。発送が通常よりも遅くなるらしいが、そんなことはどうでもいい。ドアノブのない我が家にドアノブ・ハンガーが届くことも、今となってはどうでもいい。

紆余曲折あったものの、発売日の約１０日前に無事シングルを予約した。この後さらなる悲劇に襲われることになるなど、この時の私には想像する余地すらなかったのだった。

つづく