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VR&AI時代のゲームシステムについて考える

これは別のブログ記事でも以前書いたことがあるのですが、現在ゲームシステムに大きな変革が起きる時期が近付いているのではないかと考えています。

最近のゲームはどちらかというと画質や処理能力の向上など量的な進化は見られたものの、家庭用テレビゲームの黎明期のように技術の進化(2D→3Dへの変化等)とともに質的な変化が見られることは少なかったものと思います。

今回はそんな中でこれからのゲームシステムがどんな進化を遂げてゆくのかについて考えてみたいと思います。

VR技術の進化、そしてVRゲームの現状

スタンドアローン型のVRヘッドセット「OculusQuest2」の登場は、VRの歴史において非常にインパクトの大きな出来事だったと思います。

・6Dofによる仮想空間内への現実の動きの反映
・ハンドコントローラーによる仮想空間内のオブジェクトの操作
・VRヘッドセット単体で機能しコード類が排除されたこと
・十分な解像度
・リーズナブルの価格

「OculusQuest2」の登場により、高品質なVR環境は誰でも手に入るようになりました。

しかし残念ながら、このハードを有効に活かせているゲームがあるかというと、それほど多くないというのが実情だろうと思います。

現状は”VRを見せるためのVRゲーム”がほとんどであって、通常のゲームであれば通常の画面でやった方がよいというのが本音でしょう。結局「すごいね!」で終わってしまうレベルでしかないのです。

これではせっかくVR環境が整っても、VRで楽しめるゲームジャンルというのは限定的になってしまうと思います。

ではなぜこういったことが生じるのでしょうか?筆者はVRゲームにおいて一人称視点を重視しすぎる傾向があるからではないかと考えています。

ゲームにおいて一人称視点を追求することは、つまりキャラクターの不在を意味するもので、このゲームシステムを追求する限りゲームの楽しみは奪われてゆくことになるでしょう。

VRにおける一人称視点の動作はつまり現実の自分の動作であって、この場合、以下のような制約がゲームの世界に持ち込まれることになります。

・自分の現実の身体能力がゲームの進行に影響する
・自分の動ける範囲は現実のスペースの広さの影響を受ける

VRコンテンツでフィットネス系のコンテンツが成立しやすいのはこういった事情があるからだと思います。

つまりどこかの段階でVRゲーム=一人称視点=自分が主人公、という思考を脱却してゆかないといけないと考えます。

そしてVRゲームの本格的な普及には、三人称視点を追求したVRゲームシステムの確立が不可欠だろうと思うのです。

※現在あるVRゲームで言えば「Moss(モス)」という作品がこの可能性を感じさせるタイトルに思います。この作品では三人称視点で主人公のネズミを動かしますがその操作方法は一般的なゲームと同じです。それでいてVRの楽しみは損なわれていません。

現実世界と仮想世界の接点について

ゲーム内の世界と我々の暮らすこの現実世界には大きな隔たりがあります。

我々にゲーム内にある物の重さを感じることはできませんし、ゲーム内に吹く風を直接感じることもできません。また、ゲーム内の食事の香りを嗅ぐこともできなければ、その味に舌鼓を打つこともできないのです。

我々とゲームの世界に存在するこの大きな隔たりを媒介するものはキャラクターです(コントローラーではありません)。キャラクターがゲーム内の世界のものを感じることで、我々は間接的にそれを感じるのです。(キャラクターが重がる、キャラクターの髪がそよぐ、キャラクターが美味しがるなど)

※現状の一人称系VRゲームでは、プレイヤー→コントローラー→仮想世界の構図だが、この構図で楽しめるゲームジャンルは限られる。本来はコントローラーと仮想世界の間に感性を司るキャラクターの存在がなければならない。

つまりキャラクターこそがゲームという仮想世界と現実の我々とを結びつける本質的な接点であり、この構図が変わることはおそらく永久的にないだろうと考えるのです。

我々はVRの登場によって自分がゲーム内に入ってその世界を直接体験できると期待している節がありますが、これは大きな間違いだと思います。現実の自分がゲームの世界にそのまま入れば、ゲームの世界は陳腐化してしまうでしょう。

それはあたかも自分が小説の主人公に置き換わることができないのと同じようなものです。

こういったことを考えたときに、VR含めこれからのゲームの進化の方向としては、キャラクターの感性の進化という方向性があるように思います。

VRで加速するオフラインゲームの進化

筆者はVRによってオフラインゲームの進化が加速すると考えています。

現在ゲームのオンライン化が進みつつありますが、VRゲームではそれと逆行してオフラインゲームの魅力がより増してくるのではないかと思います。

VRによって我々はゲーム内のキャラクターを間近に感じることができます。

これはオンラインでアバターを介して現実世界の人と会うオンライン形式のゲームよりも刺激的な体験となりうるかもしれません。

ですから、VRゲームではオープンワールドよりもストーリー性の高いゲームの魅力がより増してくるのではないかと考えています。

つまりゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのようなオープンワールドゲームよりも、ドラゴンクエストのようなストーリー性の高いゲームでより新鮮な体験ができるということです。

AIがオフラインゲームに革命を起こす

そしてオフラインゲームの世界のキャラクターたちとのコミュニケーションを行う上で、AIの導入は欠かせないものとなってゆくだろうと考えます。

基本的なストーリーの筋は決まっていながらも、AIによってプレイヤーとキャラクターの関係はよりインタラクティブになってゆくでしょう。

※決まったセリフを繰り返すだけではあまりにもロボット的なので。

例えば、プレイヤーは意志(コントローラー)を、キャラクターは感情や条件反射(AI)を担当するようなしくみを作ると面白いかもしれません。

プレイヤーはコントローラーを介してキャラクターを動かそうとするも、その行動に対してキャラクターに負の感情があれば抵抗する、これをコミュニケーションによって一致させてゆく、なんてシステムがあればよりキャラクターに生命を感じることができるかもしれません。

そしてこういったキャラクターへのAIの導入は今までにない質的な変化を我々に与えてくれるのではないかと期待をしています。

最後に

私見ではありますが、今回はVRとAIの進化がどのようなゲームシステムの変化を起こすかというところを考えてみました。

VR市場は一般的なゲーム市場と比べるとまだまだ小規模だと思いますので、ビッグタイトルの参入はなかなか難しいとは思いますが、「新しい体験を提供したい」という遊び心を忘れていないようなメーカーもあってほしいものです。

おまけ

キャラクターに以下心的要素を導入し、キャラクターとオブジェクト、キャラクターとキャラクター、キャラクターとキャラクターの関係構築の基礎とするとよさそう。

・五感
・感情(好む/嫌う)
・記憶(事-感情)
・記憶に基づく条件反射(近づく/遠ざける)

※これらは反復した学習によってコントロール可能。


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