ポリヴェーガル理論 書評抜き書きまとめ「いごこち神経系アプローチ」浅井咲子著
ポリヴェーガル理論ってなんだっけというところの備忘まとめと、一冊熟読して抜き書きまとめを作ったので、投稿しておきます。
ポリヴェーガル理論は、自律神経の捉え方を新しく1994年に提唱されて以来、トラウマの臨床治療などで功績を挙げたところから注目されてきたもののようなのですが、特に最近は、心と身体は繋がっているよねというような文脈だったり、人の行動のカラクリを解き明かしてくれる考え方として注目されています。
私自身、最初は、モビリティケアのコンディショナー資格を取ったばかりの時に、友人の施術仲間からモビリティケアで行っていることに繋がっていると思うとオススメされて「ポリヴェーガル理論」の本を、初めて手に取りました。
その時は、人がコミュニケーションする能力を発揮するには、安心安全を感じることが必要で、音楽や声の抑揚などが、人に安心感を与えるということを読み、へぇーと思いました。
障がい者への臨床支援をしている人も興味を持っていて、引きこもりの人とコミュニケーションを取るときには、最初は安全を充分に感じられる距離から話しかけてみるとか、いくつか現場で実際に行なっているアプローチと符合するところがあるということでした。
さらに、モビリティケアの上級コンディショナーの資格を取り、自分でセッションを行うようになると、私自身も自律神経のコントロールの大切さを感じるようになります。
その後、ゆるみの専門家の友人からポリヴェーガル理論の話とエクササイズを教えてもらったり、セルフケアの講座を開いてもらったさとう式リンパケアというところでも話題になっていたり、自分のセッションにも一部取り入れていたり、U理論の中土井僚さんが、専門の人を招いて講座を開いたりしていたこともあり、なんだか最近方々で話を聞きます。
改めて勉強しようと思い、『「いごこち」神経系アプローチ』浅井咲子著という本を読んでみました。
ポリヴェーガル理論の翻訳者でもある著者の浅井さんがご自身の臨床カウンセリング経験を元に、具体的にどう自律神経を整えていくかというプロセスを系統だって説明してくれている本です。
後段に、抜き書きまとめメモを付記しますが、前提になる副交感神経の作用を、腹側と背側に分けて考えるというところにはあまり触れられていないので、少し備忘しておきます。
ポリヴェーガル理論では、いわゆる副交感神経と従来言われていたものを更に2つの系統に分けます。
一つが、生命の危機を感じると凍りつく(熊にあったら死んだフリ)みたいな古来から生物の多くが持っている神経反応となる背側迷走神経。
もう一つが、哺乳類にて発達の見られる集団行動を取るためのコミュニケーションを取る顔面神経などと結びつく腹側迷走神経。
この2つの迷走神経と、従来からの交感神経との関係で人の様々な行動パターンが生み出されているとされています。
・背側(ハイソク)迷走神経複合体 無軸
古い神経 危険に対して凍りつく
・交感神経
背側の次に古い神経 戦うor逃げる
・腹側(フクソク)迷走神経複合体 有軸
新しい神経 コミュニケーションに関係
コミュニケーションに関係する腹側迷走神経が働くと、自分以外の生物と近くに対峙した際に、戦うか逃げるか、凍りつくかなどという、反射的な反応ではなく、どう協働していくかというところから、いわゆる社会性のある行動が出来るようになります。
古い神経系の働きをコントロールしていけるようになるのです。
そして、この新しい腹側神経系を働かせるために、安心安全という感覚が必要だと言われています。
そう考えると、ちょっとあれですが、子を守る親というのが、戦うか逃げるかという交感神経の方の反応を示しがちで、子育て中の母親の気性が、特に家でボカをやらかす父親に時に攻撃的になりがちだという現象にも、生物学的に理由づけすることが出来ます。
このあたりは、私自身も含めて、結婚後の夫婦関係に悩む多くの人に教えてあげたい内容です。
自律神経系の生物学的な現地からの話は、脳への神経伝達の80%は、内臓からきているものだったりということや、それ以外の運動系や、腹側迷走神経との交換的な信号のやりとりの及ぼす影響の大きさについて等、また、脳幹部に神経回路の伝達が集約されていて、交感神経系は脊柱から各内臓系に枝分かれするのに対して、生殖器以外の副交感神経は、脳幹部から直接神経回路が張り巡らされていることなど、興味深い体の構造も見えてきたりするところも、人の成り立ちの不思議を色々妄想するのが大好きな私には、脳汁が溢れ出てくる位面白いと思うところでもあります。
もとい、前段が長くなりましたが、以下は『「いごこち」神経系アプローチ』浅井咲子著からの抜き書きまとめです。
内容が興味深すぎて、書評ブログを書いていた頃のものと比べてもかなり長めの抜き書きですが、カウンセラーやコーチングや人の創造性開発や組織開発などの取り組みをしている人には、是非お勧めしたい内容です。
以下書籍からの抜き書きまとめです。
■種別
「たたかう」
「逃げる」
「凍りつく」
「服従する」
「助けを求める」
■副交感神経
人とつながるという働きをする腹側副交感神経
休息や消化をする背側迷走神経
■危機の時
誰かに親密さを示すことで助けを求めたり、服従したりするのは
さまざま神経系が一緒に稼働している
■アタッチメント(愛着)
危険の際に本能的に近接な一人からの庇護を求める行動
そして、お世話をしてくれる人の乳幼児へのかかわり方が、自律神経のクセやパターンをつくる
■自己調整(self regulation)
神経系が活性化し緊張や興奮をしたのち、落ち着き、リラックスするということを繰り返す
■自己調整力があれば
興奮しても落ちつき、緊張してもリラックスが訪れることを予測できる
誰かといても落ち着けてくつろげる(協働調整)
一人でも安定していられる(自動調整)
■腹側迷走神経
完成した状態では生まれてこない
思春期まで発達が続く
未発達なうちは、自らの調整不全を、他者によって調整してもらう経験を繰り返さなくてはならない
■子育てとは
神経系の観点からいうと、協働調整のプロセス
■不安定型 回避型
本当は求めていながらも、感情的に満たされるもの、温かさを感じるものからあえて距離を取ったりする
■不安型
一日中ずっと考えて待ち続ける。やっと現れると怒って寂しさを爆発させる
■無秩序型
接近と回避の葛藤を抱え、その時その時で気分が変わりやすい
■発達性トラウマ
胎児期も含む、乳幼児期から5歳ぐらいまでの年齢の逆境的な体験
■2つの「神経の基盤」があれば
安心安定が自分の内側から実感でき、自分の内面から癒されるという条件が揃う
単調で地味な繰り返しの中で、神経系の基盤が築かれ自己調整能力が育まれる
■二重の気づきとは
・自分の感情や感覚に圧倒されることなく、内面で何が起きているのかを観察することができる
・「防衛反応/適用」を用いずにいられる、さらに、防衛の状態に入っていることに気づける
■全体での防衛反応
全体を総動員する防衛反応のあり方
「たたかう」「逃げる」「凍りつく」
■部分的な防衛適用
全体ではなく、生きる術として、部分的に防衛反応を表出させる
その時々で自分を「断片化」させてしまうため、
連続した「自分」という意識が途切れてしまう
■解離モデル
1 愛着パーツが関係がうまくいかなくなって無防備になることを防ごうと粗探しをし始める
2 そうすると、逃げるパーツが、関係から逃れようと回避行動を取り、連絡をしなくなる
3 その結果相手が諦めて離れていくと、今度は愛着パートが触発され見捨てられ不安になる
■神経の基盤がない
安心の経験を少しずつ定着させて基盤を構築
■意識の連続性がない
神経の基盤の構築に取り組みながら同時に、さまざまなパーツについて説明し、その活動を理解していく
■関係に安定性がない
愛着パーツの親密さへの憧れと、防衛パーツたちの稼働である「急に不安になる」「不信感を持ち、相手を疑い出す」などを解明していく
まず自分の中に内的安定型愛着を育むことを練習
内的愛着が自分の中に既にあると、自分の愛着パーツが満たされている状態で人と関わるので、関係性も良好で気楽なものになる
■「調整」と「解決変容」の2つのアプローチ
「調整』
トラウマに働きかける為の心身状態の整え
神経基盤の構築
交感神経活性化後に副交感神経で落ち着ける
自分の反応を観察、俯瞰できるようにする
「解決・変容」
トラウマに働きかけ、反復されてきた過去の反応を変化させる
トリガーに対して今ここに根ざした反応が可能になる
現在、何にどう苦しんでいるかを探る中で過去の名残を見出し、変化させていく
過去の傷ついた子供と今の自分との関係を良好にする
トラウマ療法がうまくいくのは、神経系に自己調整力と柔軟性があることが必要
防衛反応/適応も過去の自分の生存戦略だったことを理解し、今はもっと負担の少ない洗練された対処方法を身につけることを目指す
■再トラウマ化
調整による神経基盤の構築なしに、過去の苦痛の記憶を思い出したり、再体験したりすると、
一層過去の名残りである防衛反応/適応が強化され、余計圧倒されてしまうことが起きる
■優れた療法は
「調整」と「解決」の両方を兼ね備えている
■「全体」防衛反応への対応
たたかう、にげる、凍りつく、虚脱など
過敏性腸症候群、偏頭痛など
目標 神経基盤の構築(防衛反応の完了やエネルギーの再循環を目指す)
アプローチ ソマティックエクスペリエンシング療法、ポリヴェーガルセラピー、センサリーモーター心理療法など
■「部分」防衛適応への対応
葛藤状態を生き延びた結果として、個人が断片化して部分が防衛適応する
個人が活性化されない、抑え込まれている
豹変する、良い時悪い時の差が激しい
洗練されたものなので防衛反応より複雑
目標 心理的解離であるパーツたちを理解する。内的対話、内的協働、協調を目指す
アプローチ 内的家族システム療法、自我状態療法、スキーマセラピー、統合的リソースモデルなどのパーツアプローチ
■TKS 〜癒しに必要な要素
T サーモスタット機能
K カンガルー
S スパークリング
【調整】
ゾーン1 ゾーン3
サーモスタット カンガルーの親
【全体】 【部分】
ゾーン2 ゾーン4
スパークリング カンガルーの親子
【解決 変容】
■ T サーモスタット機能
過覚醒と低覚醒を緩和するよう、他者と安心してつながる腹側迷走神経と、消化休息の背側迷走神経が基盤としてあるようにすること
■K カンガルー
自分の内面に安定的愛着関係が作られていること
自分の中の強化された自己(カンガルーの親)から子供のパーツたちに慰めや励ましが届く状態
■S スパークリング・炭酸水
サバイバルのエネルギーを安全に解放し、閉じ込められている防衛反応を完了させる
過覚醒や低覚醒が神経系に残存していない状態になること
■いごこち
過覚醒 活動可動 不安→動きすぎ→疲弊
↑↓
いごこち 安心安定に戻る→ここで過ごしたい
↓↑
低覚醒 エネルギーが湧かない、動けない
■ゾーン1 の改善ポイントその1「安心のセンサーを洗練させる」
安心のセンサー=ニューロセプション
安全、危険、死の判断を無意識にしている
このニューロセプションに働きかけ、防衛のあり方を解除し、適切な環境への評価ができるように働きかける
■心身が安全な状態に入ると
人間としての経験の質を向上させられる
安心は、心理的、生理的健康へとつながる
内分泌系、免疫系の機能が良好になり、炎症や痛みも改善
■ニューロセプション「安心のセンサー」
感度も精度も人それぞれ
・内側、特に内臓で何が起こっているかの内受容感覚
・いわゆる五感である外受容感覚
・身体の部位の位置、関係、動きの速さなどを伝える固有受容感覚
・バランスを司る前庭、温度感覚、波動知覚、痛覚など
■内受容感覚
心身の感覚、フェルトセンス(感情のニュアンスも帯びた身体感覚)
危険を取り除くだけでは安心という感覚は得られない
どれだけ内側の身体感覚、生理学的状態が心地よいか、快適かに安心の知覚は左右されている
■外受容感覚=五感
内受容感覚との対比で、意識が相手や環境に向かうことも広義に含む
■自己調整=拡張と収縮がある状態
内受容感覚と外受容感覚を、バランスよく働かせることで、危険信号の判断を適切に働かせることが出来るようになる
■支援者として
1.サバイバル状態に同調しない
2.相手の話に共感を示す
3.ニューロセプションをチェック
(血色、呼吸、緊張具合、表情や声の抑揚、活力、今ここに集中、姿勢が重力に従う、反応が自発的)
4.心地よい内受容感覚を感じてもらう
5.外受容感覚を働かせる
五感を通して外側の環境と繋がってもらう
■ニューロセプションを洗練させていくための成功のコツ
上記の手順を、普通に会話しているように潜在的に行うこと
だんだん自分の中で起こっていることを観察できる時間が増加していくことに気づく
何もしなくても、自然といごこち神経ゾーン内で調整されるようになる
■5分で出来る簡単セルフタッチ
1.腹側迷走神経を整える
1分 5つの動作
顔をぼーっとしてみる
ふーっと息を吐いてみる
顔をギューッとしぼめてみる
手をにぎにぎしてみる
顔と目をキョロキョロしてみる
2.背側迷走神経を整える
交感神経の過覚醒を落ち着かせる
2分 背中のあばら骨の下あたりに左右にある腎臓に手を触れる
1分 首の付け根(脳幹)に手を触れる
1分 下腹部(お腹に手を触れる)
■マイクロムーヴメント
防衛反応が稼働した時に、自然と前後に揺れるような微細な動きが起こり、穏やかさへ導かれること
頸動脈と大動脈にある血圧を調整する圧受容器の反射により、調整に戻れるようになる
■ゾーン1の改善ポイント2 「背側迷走神経(不動状態)に落ち込むパターンを改善する
凍りつき=極度の温存状態に入り込む時間を減らしていく
「育てやすい大人しい子」
慢性疲労、うつ、痛みなどの原因になる可能性
誰かと「がっつり関わっているわけではない」けれども、極度の温存モードで虚脱してもいない状態を神経系に覚えていってもらう
落ち込みや疲労の「背側迷走神経の極度の温存モード」と、安心して落ち着いている「背側迷走神経の休息・消化モード、もしくは腹側迷走神経のつながりモード」の違いを区別できるようになることを目指す
極度の温存モードに入るのは、命の危険にかかわる時のみ
治療的タッチを用いて、極度の温存状態から、休息消化の状態へとゆっくり導いていく等
背中側左右腰の少し上あたりにある腎臓副腎に外側からやさしく触れ、穏やかな内受容感覚に気づいてもらう
■ゾーン1のポイントその3 アタッチメントの4つの要素に働きかける
1 安心の天国
何を話してもいいし、何もしなくてもいい、と気を遣わずにいられる状態
2 安心の基地
外の世界を探究して、お世話してくれる人のもとに安全を求めて戻ってくるという探索と安心のパターン
これを繰り返すことで、自分の中に安心の基地ができる
3 近接性の維持
関係性に何かが起きた時の修復の努力
共感の失敗などがあった時、修正の意図があることが示されることが大切
4 分離不安の解消
離れていても、つながりは維持されているという感覚
■ゾーン1で苦しんでいる人たち
神経系の調整不全が側からも見えやすい
不可抗力的に自分の精神伝達物質の反応に苦しめられていると感じている人が多い
刺激を限定、遮断、または回避し、不快を解消しようと管理する
過敏、繊細で、他者や環境からの影響をどうにかしようと懸命になっている
統合失調症、双極性障害、発達障害、強迫性障害、社交不安障害、
摂食障害も、協働調整の経験の乏しさによる調整不全への対処という場合もある
過敏性腸症候群、慢性疼痛、線維筋痛症、慢性疲労、偏頭痛、化学物質過敏症などの身体症状に悩む場合もある
↓
これらが、過敏さ、脆弱さという形で表れていることを理解し、自己調整という新しい調整の方法をインストールしていきます。
■ゾーン2「解決・変容」✖️全体
〜未完了の防衛反応に働きかける
■神経系のニーズ
大きく分けると3つ
1 神経が滋養され育まれる ゾーン1の取り組み
2 防衛反応〈たたかう、逃げる、凍りつく〉を完了し、やった!出来た!生き残った!自分はすごい!などの誇らしい感じを味わう
ゾーン2の取り組み
3 未統合の神経ネットワークを統合する ゾーン3・4
■未完了の防衛反応
出来なかった自分の防衛反応
未完了なものとして残っている
神経基盤にいられる経験ができて安心感が増したら、自然と顔を出してくる
ゾーン2ポイント1
完了を必要とする防衛反応〈たたかう、逃げる、凍りつく〉に働きかける
ゾーン2ポイント2
事故などの単回性の出来事への防衛反応を完了させる
ゾーン2ポイント3
日常レベルでの(交感神経の緊張や興奮の)発散を心がける
■ゾーン2ポイント1
完了を必要とする防衛反応〈たたかう、逃げる、凍りつく〉に働きかける
神経の基盤が築かれて来ると、従来ならストレスだと思っていたことに向き合ったり、新しくチャレンジしたりし始めます
防衛反応の予兆や衝動をただ感じて、その完了を待てる
自分の中の衝動が落ち着くのを待って、そのあと起こる感情、感覚、思考などにただ「気づく」だけで、自分の中の生命エネルギーや叡智と出会える
生き延びるための防衛の衝動のすぐそばには神経系の「拡張」という癒しが潜んでいる
衝動に気づけて身体感覚のレベルで鎮静化し完了できると、衝動に気づきながらもすぐに行動に移さなくても良くなる
このように、防衛反応を身体感覚で感じられるようになることで、ストレスへの耐性を高めていける
■注意が必要なのは
家族にまつわるもの(アタッチメント関連)
たたかう、逃げるなどの防衛とアタッチメントによる親密さを求めるのが同時に連動して起こり、相反する気持ちがぶつかり合って葛藤する場合がある
その際は、ゾーン3や4の「部分(パーツ)」の方が葛藤を扱うのに向いている
■その先の成熟した選択肢を使えるようになる
周りの人を尊重しながら適度に自己主張できる
■ゾーン2ポイント2
事故などの単回性の出来事への防衛反応を完了させる
トレーニングを受けている専門家の助けを借りるのが良い
■ゾーン2ポイント3
日常レベルでの(交感神経の緊張や興奮の)発散を心がける
日々自分の強さを少し感じられるようなエクササイズ、筋トレなど
ペットボトルをつぶす、紙を破るなど
ゾーン1.2 圧倒への対処である防衛反応への取り組み
ゾーン3.4 愛着にまつわる葛藤への取り組み
【ゾーン3】「調整」✖️「部分(パーツ)」〜防衛反応と同一化している状態に気づく
自分の反応、感情、思考が、過去からの「自律神経系のクセ」であることを認識できることが目標
■あなたを困らせている「いつものあのパターン」
「自分には価値がない」「大事にされていない」「自分の欲求より他者を優先しなくては」など
今の思考のように見せかけて実は
過去を生き延びた名残り
自分のある一部分が、過去の矛盾の多い状況をなんとか生き延びるためにとった適応策だということに気づき、これらの生存のために自動的な(俯瞰する脳の伝達回路を通らない)稼働の統制を練習
■断片化
言語や記憶がある程度発達してくると
状況や相手に合わせるように自分を部分(パーツ)として分離させて使い、全体で対処しないことで自分の残りの部分を守る
全体(防衛適応)するより複雑な戦略
統合された一人の個人という「連続した意識の状態」が保たれにくくなる
■解離性同一性障害
複数の人格の人が存在する
断片化さらたパーツたちがそれぞれ人格を持ち意識の外で活動
人格を有しているまでではなくても、内面の分離により、葛藤の多い人間関係にわざわざ足を踏み入れたり、加害者的な人に魅了されて簡単に従ったりして、トラウマ的な生育環境を再現して繰り返してしまうことも
認知の歪み
否定的な思考
自己批判
自己嫌悪
話に連続性やつながりがない場合も、様々なパーツが出たり入ったりしている兆候
■パーツワークまたはパーツアプローチ
自分の思考、感情、感覚、言動などを自分の一部分(パーツ)として、気づきを向けながら、自分のなかに「内面での対話、協働、協調」を成立させていく
■解明
例えば
自己批判を「自己批判をするパーツ」として捉え
いつから、なんのために、この役割をやってきてくれているのか、などを解明
■統合
多くのパーツたちは個人が生き延びるのを助けている、という肯定的な目的に気づき、
自分という全体のなかの大事な一部になるという「統合」へと至る
■治療目的
本来の生命の活力(のバランス)を取り戻すこと
■自動思考(スキーマ)
部分(パーツ)での分散戦
日常のトリガー(引き金)の中でも、
主にアタッチメントがらみの
「自分には価値がない」
「自分は愛されない」
「自分は欠陥品だ」
「存在自体が恥ずかしい」
といった自動思考(スキーマ)が起動
カンガルーの親 「いごこちの自己」
でいられるように練習し
カンガルーの子供たち 「部分(パーツ)」
が触発されていることを俯瞰できることを目指す
■「自分自身のセラピスト」
内的な対話が成立することで
自己内に安定型愛着を確立し
「いごこちの自己」からパーツたちへのなぐさめやおもいやりが届く
【ゾーン3】ポイント1 神経生物学的なアプローチからの「いここちの自己」の強化
【ゾーン3】ポイント2 サバイバル状態の統制を日常で練習する
【ゾーン3】ポイント3 防衛パーツたちを認識する
■【ゾーン3】ポイント1 神経生物学的なアプローチからの「いここちの自己」の強化
自分の中の「カンガルーの親を育てる」
「いごこちの自己」日常を送っているパーツ
↓↑
トラウマ関連のパーツのパーソナリティ
↓↑
戦うパーツ
逃げるパーツ
凍りつくパーツ
服従するパーツ
助けを求めるパーツ
1.パーツたちの活動を観察できるようになる
この段階では、あるパーツのリソース(資源)は他のパーツへの脅威になるかもしれないので
「いごこちの自己」を拡充させていくことに集中する
レスキューレシピ
日常のこと(洗濯、入浴、散歩、布団を干す、など)
ハミング、口笛を吹くなど
観葉植物を見る
音楽を聴く
プチいいことダイアリーをつける(ましだったことでもよい)
今日一日で自他に感謝できることを寝る前に一つ思い出す
カレンダーで日付を確認し声に出す
写メや自撮り
YouTubeの好きなチャンネル、動画を見る
カフェやコンビニの店員さんとひと言多く交わす
【ゾーン3】ポイント2 サバイバル状態の統制を日常で練習する
サバイバル状態を統制するには、想像以上の毎日の反復が必要
サバイバル状態になると、分析したり、情報を総括したりという前頭前皮質の活動は抑制されてしまう
■ゾーン3で苦しむ人の特徴
普段は一見大丈夫そうでも、いったんアタッチメントのシステムが触発されると、とたんに調子を崩してしまう
自分は大事にされない
愛されない
価値がない
欠陥がある
壊れている
劣っている
無能だ
恥ずかしい存在だ
いらない存在だ
「いごこちの自己」でいられる時間を少しでも確保できるように、内受容感覚と外受容感覚のバランスを取る
トリガーされた(触発された)と思ったら
1 「これは自律神経系のクセです」と言ってみる
「これはいつものパターンです」、声に出して言えたら言ってみる
2 外受容感覚(五感)を働かせる
五感のうち何でも良い。周りを見る、音を聞く、何かに触れるなどで良い
3 レスキューレシピを何か試してみる
否定的な自動思考の渦に巻き込まれていない時間を少しでも長く確保したい
もう自分は子供ではないこと、逆境的環境で生きなくてもよいことを自分に認識させてあげる
愛着にまつわることに脆弱なのが「パーツ」の適応
今は選択肢がある!ということを日々、修正を入れていく
■うまくつきあっていく
今まで受け入れられなかった自分の様々な側面を自分のものとしていくプロセス
こうして自分も、周りの人も傷つけなくても済むようになると、人間関係が対等で、適度な距離感のあるものになり、繰り返してきた苦しみの強烈さ、頻度、時間に変化が訪れる
■ 【ゾーン3】ポイント3 防衛パーツたちを認識する
「いごこち神経」でいられるようになると、様々なパーツたちに出会える
ストレスや刺激への耐性が上がるたびに、今まで意識にのぼらなかったパーツたちを知ることになる
■インナーチャイルド
「傷ついた子どもたちのパーツたち」を守るという役割に気づいていく
特に慎重に丁重に取り扱うべきパーツ
1.治療抵抗を示すパーツ
自分に役立つもの、新しいスキル、(セラピストなどとの)関係が深まることで、これまでの恒常性が変化してバランスが崩れてしまうことを怖れている
大人になることから、守ってくれてきた
サバイバル状態の統制を練習させないように邪魔するかもしれない
防衛パーツさんがあなたを守ってくれてきた大事な証拠
治療抵抗も防衛パーツの勇敢な働きとして敬意を示す
2.「いじわる」パーツ、加害エネルギーを持つパーツ
自分が受けた苦しみや不平等だと感じる経験から
他者の幸せや喜びを妨害したり、他者に困ることを喜びとしたりします
誰でも程度の差はあれこのパーツはある
ただ、深刻さが増してくると
意識的にも無意識的にも周りの人を罠にはめたり傷つけたりしてしまう
■ソシオパス(反社会的パーソナリティ)
ひどく傷つけられた経験から幼いパーツを守っている
いったんターゲットが決まると、喜びはその対象が困る顔を見るということなので、容赦なく計画を張り巡らし、実行してしまう
3.自己批判、自己嫌悪パーツ
自分を小さく見せること、相手より低く見せることで生き延びることに貢献してくれた
■ ■【ゾーン4】「解決・変容」✖️「部分(パーツ)」〜未統合の防衛適応に働きかける
【ゾーン4】ポイント1 トリガー(引き金)とトラウマ的アタッチメントとの関係性を理解する
【ゾーン4】ポイント2 防衛パーツたちをねぎらう
【ゾーン4】ポイント3 「内的対話、協働、協調」〜カンガルーの親子の関係をよくする
防衛パーツたちが強固に幼いパーツたちを守っている場合、「いごこちの自己」から防衛パーツたちに慰めや労いを届け、同時に、幼いパーツに共感していく、ということをバランスよくやる必要がある
■一気に解放させてしまうと
幼いパーツに注目しすぎて一気に解放させてしまうと
防衛パーツたちは、子どもが受けた傷つきが再演されると警戒し
幼いパーツたちをより一層守らなくてはと、さらに防衛を強めてしまうことがある
■【ゾーン4】ポイント1 トリガー(引き金)とトラウマ的アタッチメントとの関係性を理解する
自分を守ってくれる人と危険な人物が同一の場合、愛情を求めるととたんに防衛が稼働する
他者からの愛情・優しさが逆にトリガー(引き金)になってしまう
このパターンにはまる前に、強化された「いごこちの自己」が発端となる愛着パーツとの癒やしの関係を築いていうことがいくことが重要
■【ゾーン4】ポイント2 防衛パーツたちをねぎらう
様々な防衛パーツたちに「いごこち自己」から慰めや労いが届くことを目指す
1.治療抵抗を示すパーツ
その懸念を聴いてあげて、共感し、信頼を得る
「何を心配しているのか?」
「セラピーで自分が成長し、真の大人になったら、他者の世話をするのではなく、自分と向き合わなくてはならないから」
「忠誠を尽くしてきた家族とはもう暮らせなくなるから」
「自分を抑え続けてきた関係性を終わらせてしまうことになるから」
2.いじわるパーツ、加害者エネルギーを持つパーツ
幼いパーツを守ろうとしてくれている
今までたくさん人を傷つけてきたから自分は許されないと思っていたりもする
しかし、いったんその存在に気づいてもらえると、純粋に幼いパーツに愛を提供できる庇護者に変容してくれる
神経基盤がある程度できたら、その存在を認識して、「ずっと、いてくれているんだね」と、ただ気づきを向けてあげる
3.自己批判パーツ、自己嫌悪パーツ
自己批判や自分を小さく見せることが役立っているときはいつか
少し緩めても大丈夫な時はいつか
を検討し、交渉していく
必要な時には働いてもらい、他の時にはリラックスして寛いでもらうことを提案
■瞑想の輪
ある程度「いごこちの自己」が強化されたら、瞑想の輪をイメージして、全てのパーツたちを迎えて招き入れる
もしくは、内面にスペースを広げるためにパーツたちに今だけ少し後ろに下がってリラックスしてもらう(「ステップバック」)
どのパーツも排除されたり、消去されたりするわけではない
パーツたちの働きのおかげで生き延びてこられたことに感謝しをし、肯定的な「いごこちの自己」から敬意が示される
■【ゾーン4】ポイント3 「内的対話、協働、協調」〜カンガルーの親子の関係をよくする
過去に取り残されている幼い子どものパーツたちを、現在の「いごこちの自己」がいるところに連れてきてあげる
いごこちの自己(カンガルーの親)が強化されていないと、今に連れてきて、安心を提供させてあげようと思えないかもしれない
だからゾーン3の反復が必要
大人の自分が、過去の安心や癒しの資源の少ないところにいる子供に会って、「現在」に招き、今の環境で大人のあなたから共感、思いやり、受容を向けてあげる
・まずは幼い子どものパーツに、存在を知っていることを伝える
・そのパーツに何か聴いて欲しいことはなちか、尋ねてみる
・共感を伝え、今は大人の自分が一緒にいることを教えてあげる
・そのとき得られなかったことで、何か今、大人の自分が出来ることはないか聞いてみる
(大丈夫だよ、と安心させてあげる、一緒にいるよと声をかけてあげる、温かい抱擁を届けてあげる、など
毎日決まった時間を幼いパーツと相談して、イメージのなかでそのパーツと相談して、イメージのなかでそのパーツと出会い、安心させてあげることを反復)
■必ずしも過去の記憶に働きかけなくても
今の自分と過去の子どもだった自分との間で安定型のアタッチメントが築かれていればそれでよい
それでも触発される過去の防衛策に忍耐強くユーモアを持って向き合っていくことが必要
■「存在そのものを喜べる」「いるだけで心地よい」
「解決・変容」の段階である【ゾーン2】では、サバイバルに浪費していた本来の生命エネルギー(活力)を取り戻し、
【ゾーン4】では自分の様々なパーツたちに共感と思いやりを届け、自己内に調和が広がるということが目標
■human-being ただ在るという人間の本質を実感
ただ在るという人間の本質を実感できる時間が増えて充実
こうなると、神経系のレジリエンスに基づいたエネルギーで、目の前のことに集中したり、休んだりしながら、創造性や解決策が訪れるのをただ待っていればよい状態なので、今までより相当余裕が生まれる
■癒しとは
自分にも他者にも遊ぶように貢献していけることなのかもしれない
生きづらさから癒しへ
■対応できなかったこともあった
「調整」が必要なところに「解決・変容」の要素を取り入れ、余計防衛を強めてしまい再トラウマ化を引き起こしてしまう
他者からの愛情や優しさによって癒されたいという「愛着パーツ」のニーズのみに応えてしまい、トラウマ的アタッチメントを強化し、時間外の対応、おびただしいメール、防衛パーツさんたちからの攻撃や罵倒などに悩まされたこともある
■サバイバル状態に同期しない
セラピスト自身が自分の防衛反応に気づき、肩の力を抜いたり、呼吸を深めたりして自分の防衛から来る緊張を緩めるように努める
呼吸のリズムがセラピストと同期してきたなと思ったら、外受容感覚である周りを見回す、耳に入ってくる鳥の声や空調の音を聞くなどを導入していく
誰かといることで穏やかな感覚になれるという協働調整を目標に
以上抜き書きまとめでした。
長文でして読破いただたら凄いですし、この観点から語り合いたいと思われたら、是非石井までご連絡ください。また宜しくお願いいたします。
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