【散文】朝4時に洗濯を始める
朝4時に洗濯を始める。
過去の自分にはこの時間に洗濯することはなかった。休みの日の早起き。キッチンの窓は真っ暗な姿した夜の色。洗濯機の前で洗濯物を洗濯ネットに入れる。
洗濯機には水の音が注がれている。
洗濯物と液体の洗剤を入れて、回り始める音を聞きながらキッチンの木製スツールに座っていると、普段より早く始まった日常というのは、いつもよりも良いことをしているような気になっている。別に良いことではないけれど、いつもより早起きして洗うことに、日常の始まりが洗われているような気になっている。
仕事の日常から脱出した、だらけた休みのはじまりが早く始まって、洗濯をする。朝が洗われている。未明を照らす天井の蛍光灯の明かりが少し新鮮に見えた。
洗濯機の中では洗濯物の服や下着が回る。日常をいつも過ごしている分身の防具が水流にからまりながら過去の汚れを削って丸くなる。あまり必要のないものが薄れていって、強い汚れだけが残される。それはずっと残っていくだろうけれど、ずっと洗っていくと、消えはしないだろうけれど、気にならない小さな傷ぐらいの存在になっていくのだろう。
未明に聞く洗濯機の音は、休みの始まりと過去をちょっときれいにしてくれているような気になって、それでもちょっとはマシな1日になっているんだろうと思いながら天井の蛍光灯を見つめていた朝の4時。
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