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【詩】秋と冬のあいだ

無表情のコンクリート壁が
秋の冷たさに反応して
真っ赤になった秋の輝きは
今はなく
いつもの無表情に戻っている
 
血のような
普段は見えないけれど
生命のほとばしるエネルギーで
隠れた日常が非日常の輝きとなる赤
 
緑の服を着ている100年以上の洋館は
秋が終わりを向かえる頃に
赤の服を着て
その後茶色の服を着て
今はモノトーンを楽しんでいる
 
洋館は自分なりの美学と哲学とルールがあって
季節を着ると楽しそうでスマートにも見える
 
300年以上そこにいるイチョウは
冬の気配を感じると
黄色の輝きで街を照らし
わずかに残る秋の日差しのあたたかさといっしょに
黄色を降らせている
 
街の主となったイチョウは
誰よりも早く感じ取り
静かに季節の変化を
輝きに変える
 
季節の終わりは
物語の終わりに似ていて
楽しさと余韻とはかなさが
混ざり合った美しさで
秋と冬のあいだの季節は
いつも輝いている 

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