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その後のカント

カントの『純粋理性批判』を読み終え、頭の整理をするべく『NHK 100de名著ブックス 純粋理性批判 答えの出ない問いはどのように問われるべきか?』を読もうとしたのだがどうも手が伸びず、それならばいっそのこと、ということでNHKオンデマンドで全4回の「純粋理性批判」のプログラムを見る。

これまでの番組の中でも最難関の回、と言う触れ込みであったが、哲学者の西研氏がその要点をうまくまとめてくれており、なかなか勉強になった。ただ、この番組を見ただけでカントを読んだような気になるのは、当然のことではあるが無理がある。この三週間、『純粋理性批判』と格闘してきた傷跡というものは確実に身体に刻まれているわけで、あらゆる読書はそうだと思うのだが、その傷跡というものが、世界に対する眼差しを少しだけ変えてくれる。

カントの入門書ということで言うのであれば、どうやら日本カント協会会長の御子柴義之氏が書いた、岩波ジュニア新書から出ている『自分で考える勇気 - カント入門』の評判が良いらしい。たまたま、以前買っていてキンドルに入っていたので、次はこれを読もうと思う。岩波ジュニア新書ということで、子供向けに書かれた本ではありながら、冒頭に目を通しただけでも深い示唆を感じる。

この本で紹介する一八世紀の哲学者、イマヌエル・カント(Immanuel Kant、一七二四─一八〇四)は、まっとうな大人とは、自分を出発点として自立し、文脈のなかで生きながらも、ものごとのよしあしを自分で判定する人だ、と考えるタイプの一人と言ってよいかもしれません。

御子柴 善之. 自分で考える勇気 カント哲学入門 (岩波ジュニア新書) (p.4). 株式会社岩波書店. Kindle 版.

「100分で名著」によると、『純粋理性批判』後のカントは「最高の生き方」を目指すべく『実践理性批判』において道徳の領域を開拓していったとのこと。結局のところ、現実に生きる人間の人生に救いと希望をもたらす、そのような哲学でない限りは真の哲学とは言えないということだろう。

Il n'y a qu'un problème philosophique vraiment sérieux : c'est le suicide. Juger que la vie vaut ou ne vaut pas la peine d'être vécue, c'est répondre à la question fondamentale de la philosophie.
自殺。これこそが真に深刻な唯一の哲学的問題だ。人生が生きることに伴う苦悩に値するのか否かを判断すること、これこそが哲学の本質的な質問に答えるということだ。

Albert Camus "Le mythe de Sisyphe", 拙訳

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