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日米の学生ローンの違いを比較してみる

日本学生支援機構の「貸与型奨学金」は、実質的に子どもが背負う学生ローンです。

そのほか、子どもの教育費を保護者が借りる「教育ローン」もあり、家族主義的価値観の強い日本ではこちらの方が一般的かもしれません。

貸与型奨学金と教育ローンの2つの違いは、単純に借主(返済主)が異なることになります。

海外に目を向けると向けると、奨学金といえば「スカラシップ(Scholarship)」や「グラント(Grant)」と返済不要のものを指します。

それに対して、海外では返済が必要なものをローン(Loan)と呼び、これらは明確に区別されています。

奨学金と呼びながらも返済が必要であるから、日本の貸与型奨学金は、海外ではローンに分類されることになりますね。

そこで、日米の学生(教育)ローンの違いについて考えてみたいと思います。

米国の学生ローンの現状

米国の学生ローン事情を探るために「「米国の奨学金政策をめぐる最近の動向~学生ローンと所得連動型返済プランの問題を中心に~」(国会図書館 調査及び立法考査局 次長寺倉憲一)を参考にしていきます。

先に結論を言うと、米国の学生ローンの状況は日本以上にシビアな状況にあると思われます。

実は、オバマ政権時代から学生ローンは社会問題になっていました。

直近のデータを見ると、全米の全てのローン残高のなかで、学生ローンは住宅ローンに次ぎ2番目のシェアを占めているとのこと。

参考にした論文では、最も利用者の多い連邦政府直轄学生ローンの2015年~16年度の金利は、4.29%~6.84%とのこと。米国の学生ローンの仕組みは複雑で連邦政府のものでも複数ありますが、米国10年もの国債に利率は連動し、保護者や大学院生に対するプラスローンの上限利率は10.5%となっていました。

米国の学生ローン政策についてはこれまでも試行錯誤があり、2008年に上梓された「ルポ・貧困大国アメリカ(堤未香著・岩波新書)」では、民間企業が学生ローン市場に参入した「サリーメイ」問題を指摘しています。

現在ではサリーメイは廃止されましたが、米国に関する近況を伝えている一般書「アメリカの大学の裏側(アキ・ロバーツ・竹内洋著・朝日新書)」では、米国大学の学費の高騰それによる問題、学生ローンの状況について生々しく描かれています。

日本の貸与型奨学金を見てみる

では、国内では批判の多い日本学生支援機構の奨学金はどうなのか。

有利子奨学金の利率について見てみます。

日本学生支援機構の貸与型奨学金の上限利率は3%と制限されています。そのため、どれだけ市場金利が上昇しても3%を超えることはありません。しかも、在学期間中には一銭たりとも利息が発生しません。

さらに実際の利率を見ると、2020年3月貸与終了者では固定(0.070%)、見直し(0.002%)と上限利率よりも遥かに低く推移しているのが実情です。

日本学生支援機構の貸与型奨学金が学生ローンだとして、その利率だけを見ても「日本=0.07%、米国=6.84%」という事実からすれば、日本学生支援機構の貸与型奨学金は世界的にも唯を観ない優しい学生ローンと言えます。

だからと言って、日本学生支援機構の肩を持つつもりはありませんが、冷静にこの事実を知って欲しいとは思います。

日本学生支援機構というよりも、日本の奨学金制度の問題点は、期限による債務の消滅制度がない点と家族主義的価値観による親と親戚による債務保証制度の2点に絞られると思います。

実は、それ以上に個人的に批判的な目を持っているのは大学や専門学校に対してですが、今触れた2つの問題点については、追って書きたいと思います。

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