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鉄棒

小学校の何年生くらいの頃だったろうか、休み時間と放課後は鉄棒で遊んだ。

逆上がりは当然、えび上がり、足掛け前まわり・後ろまわり、地獄まわりから着地なんて難易度の高い技もできた。

鉄棒仲間というのがいて、休み時間になると高い鉄棒の設置してある砂場に駆けつけた。
それぞれ得意技をやっているだけでチームではないのだが、スゴい技をする子を互いにリスペクトしていた。

男子の中には大車輪をやる子がいたような気もするが、そういう子は休み時間は鉄棒ではなくサッカーやドッジボールをしていたりする。
運動神経の優れた小学生男子はなんでもござれなのである。

ある時鉄棒仲間の森くんが腰掛けていた鉄棒から落ちて骨折した。
それからなんとなく鉄棒をやる子が減った。
もしかしたら禁止されたのかもしれない。鉄棒仲間は自然消滅した。

それからの休み時間をどのように過ごしたかあまりよく覚えていないが、絵を描く事が好きだったので教室で絵を描いていたと思う。
同じように外遊びをせず漫画絵を描いている子と漫画同好会(たった二人だけど)を結成したからだ。

おとなしい目立たない女子だったが絵がすごく上手かった。身体が弱くよく学校を休んだ。たぶん友だちは私一人だったと思う。

家を訪ねて絵を描くこともあった。
漫画雑誌の新人漫画家募集に作品を投稿しようなどと語り合った。

私よりずっとずっと絵もお話も上手かったけど、病気が悪くなりとうとう学校に来なくなってしまった。
中学は別の校区だったので卒業してからのことはわからない。

小学校の卒業間近の放課後に、思い出して鉄棒に乗った。
もう高い鉄棒は怖くなってしまっていたから低いやつだ。

私にはこの低い鉄棒で、かんたんだろうにどうしてもできない技があった。

正しい名称はわからないが、走り込んで両腕で鉄棒を掴み身体を上に引き上げ、下がる勢いで身体を鉄棒の下からできるだけ前方に押し出し、両足で着地するというものである。
授業で習った。
鉄棒の下に身体を潜らせる時に怖くなって足をついてしまうのだ。

前まわりや膝掛けまわりなど、ひとしきり技をおさらいして身体を慣らしから、この技に挑戦してみた。

大失敗だった。
お尻から鉄棒の下の地面に落ちた。
どすんと地面が揺れたような気がした。
腰を強く打って長い時間立ち上がれなかった。

夕暮れの校庭に人影はなかった。


※ヘッダー画像は 稲垣純也さんよりお借りしています。
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