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暖かな部屋で

いつもより少し遅くスタートしたウォーキングから戻って、落ち葉を掃き集めた。

昨夜は強めの雨が降り、辛うじて枝にくっついていた梅の葉が落ちて、花壇の煉瓦や塀や庭石のきわに溜まっている。
濡れてじっとりと粘り気を持った落ち葉は、地面にへばりついて掃き寄せづらい。

時折り小雨が降るので後にしようと思いながら、聴きかけの朗読小説がいよいよクライマックスで、中断する気になれなかった。

ちょうど梅の木の真下の、松ぼっくりが落ちて勝手に生えた松の根元あたりを掃いている時に朗読が終わった。
終わったけれど、イヤホンを耳から外さずそのまま箒を使い続けた。
枯れ葉を転がしながら、小説の余韻に浸った。この作家の本を聴くと、生きてるっていいなあと思う。こんなふうにごくふつうであることが最大に幸せに思う。

こんな月並みな言葉でしか言い表せない。私の貧しい語彙でなんか言い表したくない。

雨が本格的に降り出す前に引き上げようと思っていると、道を隔て向かいに住むおばさんが現れた。
老人用の押し車の収納ケースから合わせ柿を出して、お裾分けだと言った。
礼を言ってから世間話をした。おばさんは耳が遠いので、一方的に話すばかりでこちらの話は聞いてない。
それが案外気楽で楽しい。

話す間にとうとう本降りになったので、傘をさしておばさんを送った。
おばさんの背中が曲がっているので、お尻が濡れないように傘を差し向けると、押し車の前のところが濡れた。
どちらも濡らさないのは無理だった。
私もすっかり濡れてしまった。

家の中に入り、濡れた服を着替えた。脱いだのは洗濯機に放り込んで、洗剤と柔軟剤を投入して電源を入れた。
朝から庭に出ていて、昨日脱いだ服や夕べ着て寝たパジャマの朝洗濯を始めていなかったのでちょうどよかった。
二度手間にならなくてちょうどよいと思った。

タンスから無印の生成りのトレーナーと白っぽいコールテンのテーパードパンツを出して着た。
全身白っぽくなって気分が上がる。

昨日の昼頃から気温が下がり出して、夫は今朝は暖房を入れていた。
私が庭にでている間に夫は朝食を食べ、さっき仕事に出かけた。
暖房はつけっぱなしにしてあった。
部屋はふんわりと暖かかった。

温かい部屋で作り置いていた朝ごはんを食べた。
白っぽい服にこぼさないように気をつけながら食べた。
コーヒーは冷めていたけれど、美味しかった。


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