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記憶の中の香り

昨年末、12月30日にフリマアプリで香水(正確にはオードトワレ)を買いました。

音声配信アプリ、stand.fmにて「100の質問」に答えて配信したのがきっかけです。



11番目に「好きな香りはなんですか?」という問いがありました。

読み返したら、香水とは限られてませんね…

つまりはカレーライスでも、梅の花でも、石鹸でも、雨上がりの土の匂いでもよかったわけで。

けれどもこのゲーム、下書きをしたり予め内容を吟味するなど準備をせず、質問を読み上げながら直感的に答えていくのが面白いようにおもいます。

場当たり的に答えるので、後からちょっと違ったな、と思ったり、なぜあのような答えをしたのだろう?と訝ることもしばしば、つくづく自分のことほど自らが知らぬものだと感じます。

それで、その香水(正確にはオードトワレ)にまつわる、配信で伝えなかった記憶について書いておこうと思います。

40年ほど前、都内の某百貨店に勤めていました。

社内でイベントがあり、バイヤーが集めた景品の化粧品のサンプルに、その香水(正確には粉香水)があったのです。

メーカーはハリウッド化粧品、レディーチャタレーの粉香水でした。

レディーチャタレーとは、言わずもがな当時大ヒットした映画「チャタレイ夫人の恋人」にインスパイアされたものに違いないと思われます。


注:初回投稿で後発の映画作品をリンクしていたので修正しました。


けれどもその香りは、その名にふさわしいとは言えず、どちらかというと清楚で慎ましやかな、裏庭の秘密の花園を彷彿させる素朴さもあり、官能的とは思えませんでした。

揮発性のない、粉香水であったせいかもしれません。

私はすごく気に入り、大事に大事にチビチビと、これぞという時にだけ手首にちょびっと付けました。

なくなりかけるといよいよ欲しくなり、店内にあるハリウッド化粧品のカウンターを訪れました。

初任給が八万なにがしの時代に、三万円の値でしたから、とても買えないのでした。

すっかり粉が無くなってからも、サンプルのアルミの小袋は長い間捨てられませんでした。

そっと中を嗅いでみると、いつまでも香りが残っていたからです。

その小袋も無くなり、香りの記憶も途絶えてからふと思い出し再びハリウッド化粧品のカウンターを訪れましたが、すでに廃盤となっていました。

あれから何十年経ったのでしょうか…

好きな香りは?と問われ、咄嗟に思い出したあの香りに、もう一度会いたくなりました。

今はネットになんでもある時代、とは言え

「レディーチャタレー 粉香水」で検索するも、使いかけの中古品がオークションに出品されているだけでした。

丹念に探すと別のフリマに、同じ名前のオードトワレが新品で出品されているのを見つけました。迷わず12月30日に購入しました。

年明け元旦に着くと配送業者より通知がありましたが、実際に着いたのは2日でした。

これが今年初めの買い物です。

けれども、パッケージに同梱の取説をよると、粉香水と同じ名前のオードトワレはどうやら2つのバージョンがあるようで、購入したのは粉香水とは調合が異なるようです。

また、オードトワレには粉香水の持つ切ない儚さがありません。

記憶の中の香りとは似て非なるものなのです。

たとえ同じでも判別できるのかどうか…

記憶は別の思い出で上書きされたかもしれません。

またいつか何かのおりに思い出して「レディーチャタレー 粉香水」を検索するかもしれません。

失われた記憶を探して…





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