短歌連作サークル誌『あみもの 第一号』を読む

まず、短歌連作サークル誌『あみもの』について詳しく知りたい方は上記のブログサイトを見てもらいたい。ざっくり説明すると、参加自由の短歌連作投稿誌。

また、第1号のバックナンバーは上記よりPDFが配布されているので、ぜひ見ていただきたい。
併せて、Twitterも見ていただければ最新号も見ることができるので、ぜひ。

正直、僕は短歌が好きなだけの素人なんだけれど、この作品はこういう所が好きだ、こんなふうに感じた、っていう感じで好き勝手に感想を残していこうと思ってる。
短歌を抜粋する際の作者名は敬称については省略します。

ぬいぐるみたちよ裏口から逃げろ閉店をしたゲームセンター/屋上エデン『理科室の魚』
非常灯だけが照らす薄暗い店内で決して動くことはないんだけど、もしかしたら…と、思ってしまう短歌。ぬいぐるみを逃そうと策略する主体の悪戯心みたいなものに思わずクスッとした。何かトイストーリーっぽい感じがして、ワクワク感もある。

少しでも心に残っていればいい 白く老いたる犬がいたこと/小澤ほのか『老犬と甥二人』
成長していく甥二人。多分、成長していく度、記憶は薄れていってしまうのだろうけど、記憶の片隅にそっと残っていて欲しい。主体はこの老犬とずっと過ごしてきたからこそ、尚更そういう気持ちが強いかもしれないとも思った。

会社とはデスザウラーによく似てるどうあがいても逃げられず/あひるだんさー『惑星Ziより愛をこめて』
懐かしすぎ。ゾイドの世代だった自分としては、デスザウラーの強大さというか、絶望感というか、圧倒的存在感がイメージとしてあるデスザウラーが会社と似てる、そりゃ逃げられないわって思わず白旗を上げてしまう。

割と好きなYouTuberの本名が地上波に乗る 2歳サバ読んでた/池田明日香『ざっとした期待』
ああ、マジか、2歳もサバ読んでたのかってなった。本名が地上波で流れるってことはそれなり事情によってだと思うけど、それよりも、サバ読んでたのか。

この街のビルは墓石のようだけど五センチヒールのかかとを鳴らせ/夏山栞『五センチヒールのかかと』
下の句にすごい力強さみたいなものを感じた。連作全体を通して、営業職って大変なんだろうなと思う。その中で、最後の最後「五センチヒールのかかとを鳴らせ」。色んな事がありながらも、前へ進む感じがする。

駅らしきものをくぐればふるさとで何もないけどこれがふるさと/岡村和奈『帰省』
田舎への帰省の風景が伝わってくる。何もないけど確かに存在する自分が過ごした世界はそこにあるわけだ。駅らしきっていう表現が「これ多分駅だよね?」感が出ていていいと思う。

ジェット機を捕らえて喰らう猛獣がいたらどうするこの雲の上/くろだたけし『空の旅』
見たことないだけでいないとは言えない。なんとも言えない不安みたいなものを感じたし、捕らえて喰らうってしまうほどの猛獣がもし本当にいて、空を優雅に飛び回っていたらと思ったら、絶対に乗りたくないよね。

走れ田中 誕生日おめでとうとただ私に言うためだけに走れ/木蓮『パーラー田中』
とりあえず田中には頑張ってもらいたい。この田中はきっといい奴だと思う。絶対走ってるもん、この田中。それも結構必死というか、それなりに本気で、「私」のためだけに。そういう妄想をしてしまうような作品。

「ちがうもん迷子じゃないもん」この店は庭だと言わんばかりの顔で/宮下 倖『それいけシュッフー! 〜お買い物編〜』
小さい頃の自分を思わず思い出した。自分はデパートでだったけど、全く同じことを言った記憶が残ってる。自由すぎる行動力に常に目を光らせとくのって相当体力いるんだろうと思う。大人しくしとけばよかった、あの頃。

今まさに君が「アーン」とくれるのがポッキー史上最もエモい/雨虎俊寛『ホテル イット イン』
エモい。このシュチュエーションポッキーは絶対的にエモい。こんなシュチュエーション体験したい。

ドアノブをひねって引いた瞬間に開かずにすぐに押して入った/白井肌『みつめる』
わかる!そして目に浮かぶ!ドアに押すって書いてあっても、引いちゃう時がある。意外とそういう場面って人に見られてる事も多い気がする。決して顔には出さず、あくまでさり気なく、流れるように引くから押すへの動作に移るべし。

玄関と廊下の照明スイッチを間違えちゃってたのしい帰省/御殿山みなみ『散歩っ』
自分の家だったはずなのに、ついつい自分ちと同じ感覚でうっかりスイッチを押して電気が消えてビックリする。間違えちゃってのちゃってがお茶目っぽく表現されていていいと思う。

以上、感想とも言えないかもしれしれないけど、自分が好きな短歌をあげさせてもらった。
本当ならば、掲載されている連作に全てに対してできればいいんだけど、後々自分の首が締まりそうなので、こんな感じで今後もやって行こうかと思う。

それにしても、あみもの第一号。
初回だというのに、四十三名の参加者がいる。
Twitterでの呼びかけのみでこの人数が集まったのはすごい事なんじゃないかと思っている。

僕自身、短歌を作っている。
ただ、結社には入っていないし、賞にも応募したこともない。多分、これからもないと思う。歌会等に参加することも少ない。
あみものの存在は僕にとってはとてもありがたい場になっている。
自分の作った短歌を発信ができる場であり、たくさんの短歌を読むことができる場であるからだ。
そして、ぜひ短歌を読んだことがない人も読んでみてもらいたい。

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