短歌連作サークル誌『あみもの 第二号』を読む

まず、短歌連作サークル誌『あみもの』について詳しく知りたい方は上記のブログサイトを見てもらいたい。ざっくり説明すると、参加自由の短歌連作投稿誌。

また、第二号のバックナンバーは上記よりPDFが配布されているので、ぜひ見ていただきたい。
併せて、Twitterも見ていただければ最新号も見ることができるので、ぜひ。

さて、第二号からは全連作から一首選と特に気に入った短歌に感想を書いていこう。
堅っ苦しいのは無しにして、この表現が面白いとか、共感できるとか、好きなように語っていく。
また、短歌を抜粋する際の作者名は敬称については省略する。

母にしか父と連れ添えないだろう 四十一年目の春が来る/ミオナマジコ『ルビー婚』

短歌詠み始めてよかっただってほら大切な人増えたんだもん/シリカ『ありが10』
この短歌だけじゃなく、連作全体的に前向きな感じ
フレッシュというか、自分にもこんな時あったなー、なんて少し思い出してみたりとか

始発には乗れないのなら道端でパグと遊んでおけばよかった/屋上エデン『コンタクトレンジ』
特にちょっと焦って家を出る時に限って、乗りたい電車とかバスって乗り遅れる気がする
そういう時に限って、美味しそうなカフェを見つけたり、自分の好みの服を見つけたり

もしも今鬱でなかったとしたならば そんな仮定は意味のないこと/小澤ほのか『鬱』
僕も病気になって、この短歌を読んで共感できた短歌
多分、この号が出た頃はそこまで共感できてなかったと思うんだけど、「もしも」って仮定した所でどうにもならないと実感してます

宿直はたぶん一生なれないと悟った朝に初雪を踏む/あひるだんさー『フロントライン』

「愛だろ?愛」と言ってみるけど晴天に花の輝く三寒四温/伏屋なお『テレビの向こうでー平静ではいられないー』

現実のどこにもいないそれゆえにはしきやしかなアニメの乙女/笛地静恵『週間少年禁句』

心にはスペースキーを押しまくり君の入ってくる余地を消す/ガイドさん『いつまでも帰れなかった帰り道』
これいいなー、スペースキーの使い方がいい
君が入ってくるよりも空白で埋めた方がちょっと虚しい気もするけど、その気持ちわからなくもないな

誰がために供えられても白百合は地に堕ちてなおきっぱりひらく/松岡拓司『秋のカムチャッカ』

洗濯機でホッキョクグマとヒグマとをまぜて洗うとパンダが生まれる/夏山栞『という嘘』
ヒグマってどちらかと言うと茶色っぽい気がして、ツキノワグマの方がより黒っぽいかな、なんて思ったりした
ただ面白いよね、洗濯機でパンダ生まれるんなら

さみしくて死んだうさぎを知らなくてうさぎみたいに死にそうわたし/幸香『程よい距離がわからない』

バラモンにバカモンというのが流行り坂上忍が喋り始める/社会適合者『はじめてのインド哲学』

一人寝るベットはわたしに広すぎて透明な抜け殻を抱いてる/なぎさらさ『ロンリネスリープ』

人並みに正しく生きていたいのに松屋に入る勇気すらない/大橋春人『黒い錠剤』

歯の一本一本に名前をつけている弟の丁寧すぎる歯みがき/尾崎七遊『私の弟』
名前を付けてしまうほど愛着があるってことが、すごく歯を大事にしてる印象、きっと歳を取っても健康な歯で元気にご飯が食べれそうな感じ

おばけ ってすっぽり被せたシーツから白木蓮の散りゆく匂い/茉城そう『熱のゆくえ、あなたの行方』

とりとめのないかなしみを吐き出していつまでも降りゆく桜だね/宮本背水『無題』

人ひとり車一台ない夜も歩き続ける真緑の人/月丘ナイル『みちしるべ』
これは歩行者用の信号機の事だと思うんだけど、一日中歩き回ってあの人は疲れないんだろうか
ちょっとは人が見てない所でしゃがみ込んだり、壁に寄りかかったりしたりしてないんだろうか

IF文を組み込むときに手を止めて思うあの子が生きてたELSE/中條茜『十週目に於いて』
これも「もしも」についても短歌
どんなに考えても、どんなに思っても、答えは変わらずいつも同じ処理をしてしまう感じが切ない

メガネよりコンタクトがいいと君が言うから眼科に行こう/龍也『過去の事は忘れましょう』
これぐらい軽い感じで眼科に行って、コンタクトレンズの高さにびっくりして、当日は購入できなかった男です

【やってみたい もしもラッパが吹けたならランキング】一位「ハトと少年」/岡村和奈『コンテンポラリー・ラピュタ』
これ僕もそうだ、未だに吹きたいと思ってしまう
ただあれのためだけにラッパを買う気は起こらず、今後も吹けるようになる予定は立っていない

夜明けとか明日とか未来はもうなくて今を感じるほかには何も/寿々多実果『飛べない羽化を繰り返す』

もう君に通用しなくなっている上辺の笑顔は捨ててしまおう/知己 凛『生』

空港にゆける電車の中でするつまらないつまらない約束/多田なお『オンデマンドせんだい』

真ん中に明るいお日様抱いているかぼちゃアンパン食べてひかるよ/ただよう『ひかる』

欲しいのはダイヤじゃなくて愛なのにそんなことさえ分からない、ばか/ことり『指輪物語』

有線が盗んだバイクで走り出し平日みんな髪を染めてる/池田明日香『カーテンの外』

影響を受けたり受けなかったりを拒まれている阪急電車/水沼朔太郎『くよくよ』

また今日も知らない誰かになってみるアイデンティティは家出している/典子『ログイン』

ゆつくりと落花してゆくひとひらにピントが合ひてぼやける世界/荻野聡『花』

「換気扇、ああ換気扇換気扇」詠んだところで汚れ変わらず/宮下倖『それいけシュッフー! 〜そうじせんたく編~』

赤道を船で揺られて終える夜にアシカと泳ぐ夢を見ていた/大西ひとみ『ゾウガメの島』

歯が当たる痛みに耐える訳ないじゃん君とは縁がなかったことに/ベルデ『痛い』

「私のことが好きならキスして抱いて寝て30分おきにバカって言って」/津隈もるく『エロティカル・セクシャル・ライフ』

目覚ましのアラームを切り横になることが許される金土の夜/諏訪灯『週末』

話すこと特にないから外灯を数えるだけの散歩をします/小泉夜雨『予報』

生チョコにガトーショコラにチョコプリン私が食べたいものだけ作る/めぐまる『本命とは』

しばらくはこのままここにいたらいいどうせ部屋なら空いているんだ/くろだたけし『まぼろし』

あといくつ数えられるか花そして僕らに許されている時間/天田銀河『花乱風 (Side A)』
未来のことはわからないけど、だからこそ生きてるって実感する感じ

好きだっただれかのことを春だから思い出すのはいけないですか/杉谷麻衣『花乱風 (Side B)』
いけなくない、全然有り、思い出すぐらい人の自由だ
むしろ思い出せば楽しかったことだけじゃなく、辛いことも一緒に思い出しそうで、ちょっと辛い

ねぶそくのあたまにわいてくる感じわくらばわくらばユートピアめく/白川黴太『眠れるマリィ』

泣きながらうどんを食べる葬式は悲しいくらい腹が減ります/ハナゾウ『2月10日』
人って悲しくても、辛くても、無条件で腹減るな
喉を通らないって思うのに、腹だけは減るし
泣いてたってうどんは食べれちゃうし
でも、人間味を感じる短歌

涙ならサボテン枯れなかったかな。君もいたかな。今更だけど。/秘色水梨『四畳半ラブ(現状報告も兼ねて。俺のラブなぞこの程度だが。)』
連作全体が切ないというか、情けなさというのか、そういうのが滲んできてる感じがした
ほんと今更なことなんだけど、後悔して、思い返してもあの時って戻ってこないんだなって感じる

誤記なのか造語なのかがわからない辞書に載らざる言の葉ひとつ/村田馨『校正』

授業中寝ている生徒を叱れずにいる 誰よりも私が眠い/九条しょーこ『#明るい不眠症になる2018』

左手にメモがいっぱい書かれてるあの人はきっと右利きだろう/多賀盛剛『感動』
これすっごい好きだ、こういう短歌ってそりゃそうだろうなって思うけど、こうやって言葉にされることで再認識することになる
大事なのは左手にメモがいっぱいだと気付けるかどうか

おやすみとせかいにつげて ツートトト ぼくらはよるのこうしんをする/西淳子『赤い公園』
僕自身は「ツートトト」みたいな表現を短歌で詠むのが苦手なので、こういう短歌を詠んでみたい
言葉のチョイスって難しいって短歌を始めて思うようになった

マンボウはすぐ死ぬわたしは人間ですぐ死なないから学校に行く/海老茶ちよ子『マンボウはすぐ死ぬ』

職場ではマスク越しでもわかるほど別嬪さんで近寄りがたい/雨虎俊寛『とある女史の昼下がり』

飲み残したコーヒーを流す 一日の終わりに今日もやさしくなかった/岡桃代『バリをのける』

交代を告げられしまま立ちすくむ投手のような夕焼けがある/貝澤駿一『いつか、あの橋の上で』
青春の1ページを切り抜いたかのような雰囲気がとても良かった
青春はいいことだけじゃなくて、挫折とかもある中でその時のことって色々大事だった気がしたな

雪だから会えない旨をメールする雪は会えない理由になり得る/西村曜『デッサン』
いろんな理由があるにしろ、雪が降ったから会えないって事で収まるなら、きっと雪が理由でいいんだと思う
やっぱ雪なんか降ったら寒いし、家から出たくもないだろうし

閉まるボタン押し忘れてる雪国の電車に春の風が乗り込む/薄荷。『春浅し』
電車の開閉ボタンはどこにでもあると思っていた自分、東京の電車の開閉の余裕の無さにちょっと切なさを感じたことがあった
いいですね、さり気ない春の面影を感じられる

足音は消して駆け寄るセンサーの音で十分煩いのだが/枯れ井戸『夜の勤務』

何一つ考えるのも億劫で湯船に浸かりふにゃふにゃとける/なな『リセットボタンはどれですか?』

斜め前信号待ちのランナーがいきなりダンスその場でダンス/井筒ふみ『かなもの』
不思議な光景がそこにはあった
それはダンスだったのか、ストレッチだったのかはわかんないけど
ダンスのようだったんだろうって、おかしな風景を思い浮かべた

5000兆円本気で欲しい。棒読みの募金活動を横目にあるく/御殿山みなみ『鬼は卒倒』
何か棒読みの募金活動ってイメージができてしまう
僕自身もボランティアでやった事あったけど、やっぱりそれも棒読みだったに違いない
5000兆円なんてあったら、どんなことができてしまうんだろうか

さて、今回はこんな感じ
次回は第三号と思わせて、始めたばっかなのに特別版をお送りする予定
あくまで予定なので、普通に第三号の感想をやってる可能性もあるので


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