短編9憑依(取調編④)

 取り調べから7時間が経過していた。
佐川「翔子、井上巡査を呼んで来てくれ、それと麦茶のおかわり頼む」
翔子「了解です」
 椅子から立ち上がって退室する。すぐに井上が入室する。
井上「佐川巡査部長お呼びですか?」

 続いて翔子が麦茶を準備して入室する。
 佐川はズボンのポケットから錠剤を取ると麦茶で流し込む。
翔子「何の薬ですか?」」
佐川「たいしたことない、井上ちょっと変わってくれ、翔子、俺と一緒に来い」
井上「了解しました」
 と言って井上は佐川と交代して椅子に座る。
翔子「はい」
 と言って翔子も佐川の後に続き退室する。

 佐川と翔子は取調室1の隣にある取調室2に入室する。そこには交通課長と山田巡査が立ったままマジックミラー越しに取調室1を観察している。
交通課長「夕食も食べさせないで取り調べて被疑者の人権問題になるとまずい、それに佐川巡査部長顔色が良くない、どこか体調が悪いのか?」
翔子「そうですよ、さっき薬飲んでいたみたいだし」
佐川「いや、あれは・・・もう少し取り調べさせて下さい、交通課長」
交通課長「取り調べも長時間に及んでいる、今日はこれまでにしよう、それから明日病院で診てもらえ、これは課長命令だ」
翔子「佐川巡査部長、娘さんを亡くされてから少し痩せたようですが」
 
山田「顔色が青いです」

交通課長「今日のここまでの内容の供述調書、被疑者に読み聞かせ署名押印をもらって閉じてくれ、次の取り調べは3日後だ」
佐川「申し訳ありません」

 佐川は自分の体調が何故悪いのか判っていたが佐川には職場では言えない秘密があった。


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